鳥さん、お仕事の時間です‐6
「と、言うわけで、現在、私はゴブリンの集落にきています」
コーカスとトーカスの後ろについて歩きながら、シエラはすっかり忘れていたジェルマへ連絡をしていた。
『と、言うわけで、じゃないだろうが!とにかく、そんなのんきな報告ができるってことは、無事なんだな?』
先行するトーカスがケー!と鳴くと、ゴトゴト、と音を立てて石化したゴブリン達が地面に落ちていく。
「…そうですね、コーカス様とトーカス様のおかげで、生きてます」
体は無事だが、周りのゴブリンの死体や、この強行軍のせいで、ストレスは半端ないのだが。
「コーカス様、この後はどうするんですか?」
トーカスの体も一回り以上成長しているところを見ると、レベルアップされているのだろうと推測するシエラ。正直なところ、先ほどの戦いっぷりを見た後となると、このまま、ゴブリンの集落をつぶしきってもらいたい、というところが本音だ。
「マイス次第だな」
トーカスが言う。
「…すぐにご用意ができなくてもいいですか?手持ちにある以外となると、時間をいただかないと…」
シエラが答えると、少し思案したのち、かまわない、とトーカスは頷く。
「とりあえず、集められるだけのマイスを、朝一で用意しておいてもらえますか?」
休憩中の、コーカス達とのやり取りを思い出しながら、シエラはジェルマにお願いする。
『マイスだと?』
怪訝そうに答えるジェルマに、シエラは、はい、と答える。
「このまま、トーカス様に討伐していただけることになっているので。ゴブリンの死体の片付けもありますから、すでに受付が完了している冒険者の派遣はそのまま行ってください。新規の募集については、もうストップしてもらっていいと思います。マイスは、討伐の報酬として、トーカス様たちにお渡しするので、できるだけたくさんかき集めておいてくださいね」
『わかった。その代わり、報告ができるようになったら、忘れずに連絡しろ。いいな?』
「はい。あ、それと、これ、危険手当って」
『時間だ、切るわ』
「あ、ちょっと!もしもし!?もしもーし!!…もう、手当の一つくらい出してくれたっていいじゃない!」
何の声も聞こえなくなった通信魔石を、バッグの中に放り込むシエラ。
「ほんとに、まったくもう!これだから、ギルドはブラックだって、職員の数も増えないのよ!」
ぷりぷりと怒りながら文句を言うシエラ。
すると、急にふっと体が浮遊感に襲われる。
「え!?ちょ、なにー!!!!」
次の瞬間、視界が急上昇する。シエラの服をつまみ持ち上げたコーカスが、そのまま上に飛んだのだ。
そしてそれと同時に、周囲にあった木々がバキバキ、と音を立てて倒れていく。
「ぎゃー!!!」
数秒、空中にとどまっていたかと思うと、今度は急速落下が始まり、涙目になって叫ぶシエラ。
「ふむ、この辺りはもう、あらかた片付いたようだな」
地面に再び降り立ったコーカスは、あたりを見回して呟いた。
襲撃に気づき、集まってきていたゴブリン達をちまちまと倒すのが面倒になったトーカスが、風切り羽で真空の刃を360度全方向へと飛ばしたのだ。
木々もろとも、絶命し、真っ二つになったゴブリン達の死体が、そこら中に転がっていた。




