鳥さん、お仕事の時間です‐5
「トーカス」
周囲にいたアーチャーも一掃したことを確認したコーカスは、木陰から出て、トーカスに声をかけた。
「父上」
声の方に向き、小さく頭を下げ、トーカスがコーカスに返事をする。
「え!?トーカス様…喋れるの!?」
今までずっと、コケコケ鳴いていたところしか見ていなかったシエラは、驚いて思わず思っていたことが声に出た。
「む?シエラか。今、猛烈に腹が減っている、マイスを寄越せ」
ととと、っとシエラの方に駆け寄ってくると、すりすりと体をシエラにすりつけてくる。
「わ、わかりました。ちょっと待ってくださいね」
慌ててシエラはバッグからマイスを取り出し、トーカスに渡す。
「1本では足らぬ。もっと寄越せ」
目にもとまらぬ速さでマイスをついばんでいくトーカス。シエラは慌てて、マイスを追加で取り出す。
「む、我にも寄越すがいい」
それを見たコーカスも、シエラにマイスを要求してくる。はいはい、とシエラは2匹の前にマイスをドン、と5・6本ほど置いた。
「それにしても…トーカス様、喋れるんですね」
小さく呟くシエラに、コーカスはいや、と首を振った。
「森で別れる前までは、喋れなかったぞ?」
「え?」
まさか、と思い、トーカスを見る。トーカスは、マイスをある程度食べて少し満足したからなのか、シエラの視線に気づくと、せわしなく動かしていた嘴を止め、シエラに答えた。
「ゴブリン共を大量に倒したからか、意思疎通のスキルが上がったようだ」
「え、意思疎通?」
聞いたことのないスキルに、シエラが首をかしげると、コーカスが今度は割って入ってきた。
「知らないのか?このスキルは少しレベルが上がると、他種族とも意思疎通ができるもので、中々に便利だぞ?ちなみに、シエラが我らと会話ができているのも、我らのスキルレベルが、人種族と会話ができるレベルに達しているからだろう」
「し、知らなかった…」
魔物や魔獣が連携をとることができたり、時々人の言葉を話すものがいるのか等については、何かしら理由があるといわれてきていたが、研究者たちの間でもはっきりとしたことはわかっておらず、長い間、大きな謎の一つとなっていた。
「もしかして、私たちも意思疎通のスキルを手に入れれば、他の魔獣たちとも会話ができるようになるんですか?」
もしそうなら、これはすごい発見じゃないか!と思わず興奮して聞く。
「知らん」
「え?」
「我らはレベルが上がれば他種族とも会話ができるようにはなるが、人間どもがそのスキルを持ち、レベルが上がったところでどうなるかなぞ、知るわけがないだろう。そもそも、自分達以外でスキルがどう発現するのかなんぞ、興味ないわ」
「…デスヨネー」
コーカスにバッサリと切って捨てられた。




