鳥さん、お仕事の時間です‐4
コーカスに時々出会うゴブリンを石化してもらいつつ、しばらく歩いたところで、ふと、何かの気配を感じ、シエラはコーカスを見た。
「気づいたか?」
「はい。これ…もしかして」
シエラが聞くと、コーカスは頷いた。
「トーカスに追いついたようだな」
ゆっくりと周囲に気を付けながらさらに先に進むと、少しひらけた場所に出た。そしてそこには漆黒のコッカトリス、トーカスと、成人男性と同じくらいの身長のホブゴブリンと思しきゴブリン複数体、後ろから遠距離攻撃を仕掛けているメイジが数体いた。
「トーカス様、大丈夫ですか?」
気づかれないよう、木陰に潜みつつ、小さな声でシエラは少し不安に思い聞いた。
トーカスはコッカトリスとはいえ、まだ生まれて間もない。ゴブリンとは言え、上位種もいて、数も圧倒的に向こうの方が多い。
「我の息子だ。心配はいらん。ほれ」
トーカスの方を見ると、ちょうど、右翼をシュッと横薙ぎすると同時に、前に出ていたホブの首が、胴体から離れたところだった。
「え…まさか、風魔法!?」
驚きのあまり、思わずコーカスを見る。
「厳密には違うな。我らの風切り羽は少々特殊でな。ああやって、真空の刃を飛ばすことができる。まぁ、産まれてまだ間もないトーカスが、あれを使えるようになっているのは才能だな。さすが、我が息子」
満足げに頷くコーカスに、シエラは心の中で親馬鹿炸裂!と突っ込みつつ、トーカスに視線を戻す。
「ほれ、決着がつきそうだ」
前衛であったホブが死に、トーカスはメイジに向かって一鳴きする。メイジはそれに対し、防御結界を展開した。と同時に、ドカドカっと矢がトーカスのいた場所に突き刺ささる。アーチャーもいたのか、とシエラは驚くも、すでにそこにトーカスの姿はない。
「ぎえぇぇぇぇ!!!」
少し離れた場所から、大きな悲鳴が上がる。声のした方を見ると、木の上からゴブリンが落ちていくのが見えた。あれがたぶん、さっき弓で攻撃をしていたアーチャーだろう。
「ケー!!!!」
「げぎゃ!!」
また別の方から、トーカスの鳴き声とゴブリンと思しき叫び声が聞こえる。
視線をそちらに移すと、そこには、石化したゴブリンメイジの姿と、トーカスの足指で頭をぐしゃりと潰されたメイジ、そして、頭が胴体から離れて落ちるメイジの姿があった。
「す、すごい…」
第一ギルドに所属している冒険者たちに、これだけのことができる人はいるだろうか、そんなことを考えていると、トーカスは空を向き、これまでで一番大きく、高く鳴いた。
「っ……!」
思わず耳をふさぐ。
それと同時に稲妻が走り、ドカドカドカ!という轟音がとどろく。
「ほう…!」
「うそ…」
雷の落ちた木がバキバキと音を立てて倒れる。
それと一緒に消し炭になった何かもどさっと地面に落ちていった。
コーカスはトーカスの力に目を輝かせ、シエラは絶対に敵に回してはいけない魔獣が誕生していることに、言葉を失った。




