緊急クエスト-5
「シエラ、ジェルマさん、戻ってきたよ。部屋まで来いって」
冒険者たちの今日の依頼分の報告の受付と、明日から開始される緊急依頼の受付業務に、死んだ魚のような眼をして対応をしていたシエラに、アヤが声をかける。
「…わかった、とりあえず、この流れが切れたらすぐに行く」
つい2時間くらい前から、同じことをずっと続けているような気がしてならないが、それはきっと気のせいだろうと何とか自分を洗脳して、仕事を続ける。
半ばBOT状態になっているシエラだったが、何とか残っていた数人も捌ききり、ジェルマの執務室へと急いだ。
「すみません、遅くなりました」
ノックはするが、返事を待たずに部屋に入る。普段なら確実に咎められるところだが、今日に限っては、ジェルマも何も言わず、小さく頷くだけだった。
「…他のギルドの方はどうでしたか?」
もちろん、協力を取り付けてきてくれてますよね?という無言の圧力をかけつつ聞くと、ジェルマは小さく頭を振った。
「う、嘘でしょ…」
ジェルマの回答に、言葉を失う。
「第2ギルドの方は、例のごとく、迷宮のことで手いっぱいで、余裕がないし、担当パーティーもみんな迷宮に潜っていて居ないらしい。第3ギルドの方は、鉱山の調査に数日前に多数の冒険者を派遣していて、こっちも余裕がない」
「じゃ、第4ギルドは」
シエラが言うと、ジェルマは小さく舌打ちをして答えた。
「…王族の関係者が今、こっちに向かってきてるらしくてな。高ランカーは途中で警護を交代する関係で、そっちに出払ってるらしい」
「は?」
「ちなみに、ただのプライベートだそうだ」
シエラも思わずチッと舌打ちをする。
「途中でどこかで腹でも壊せばいいんですよ。寝込めばいい」
「とにかく、第2ギルドの方は、ダンジョンの方に規制をかけて、調整はかけてくれるそうだ。第3ギルドの方も、調査に出してる冒険者に、早めに戻ってくるよう、連絡はしてくれるらしいし。…どっちにしても、時間がかかると思うがな」
天井を仰ぎながら、ジェルマは目を手で覆う。
「とりあえず、うちのギルドの現在の状況です。正直、何とかなるとは全く思えませんが、でも、このメンバーで何とか対応をするしかないですね」
「せめて、Sランクとは言わないから、Aランクの冒険者がいてくれれば助かったんだが…」
「ないものねだりしても仕方ないですよ。猫の手も借りたい状況ではありますが」
「そうだな、この際、魔獣でも魔物でも、潰しあって…あ」
ジェルマがふと、何かを思いついた顔をする。
シエラも、ジェルマの言葉に、あ、と小さく顔を上げた。




