緊急クエスト‐2
「というわけで、みんなも知ってると思うが、これから緊急クエストを出す」
会議室に招集された受付嬢たちは、ギルドマスターのジェルマの言葉に、ごくりと唾を飲み込んだ。
「あのクソどもが先走ったせいで、悠長なことが言ってられなくなった。街にいつ被害が出てもおかしくない状況になっちまった。スケジュールとしては、今日、緊急クエストとして高ランクパーティーへの参加依頼と、低ランクパーティーへの森への侵入禁止の通達。その他、必要になると思われる物資の調達と、偵察に行ってたやつらからの情報のとりまとめと報告。んで、明日、討伐に向けて出発し、そのフォローを行うってな流れだ。今のところまでで質問は?」
聞かれるが、誰も特に質問はないため、声は上がらない。
「じゃ、続けるぞ。高ランクパーティへの依頼と、進入禁止通達に関しては、ルーとオーリ、それからアミットとキリルで対応してくれ」
『はい』
「物資の調達に関しては、アヤが指揮をして、解体部隊の奴らを使って対応」
「わかりました」
「偵察に行ってたやつらからの情報のとりまとめはシエラ、お前だ」
「…わかりました」
「それじゃ、各自よろしく頼む。俺は他のギルドに話つけに行ってくるから、出かける。では、解散」
ジェルマの言葉に、受付嬢たちは部屋を出て、それぞれ指示された仕事に取り掛かった。
「ダエルさん、エマさん。昨日の偵察内容について、報告をお願いします」
「おう。まず、俺らの担当は森の西の方だったが…」
偵察依頼が出ていたパーティーは全部で4つ。そのうち、腹ペコ冒険者のパーティーに関しては、昨日、負傷者も出ているとのことだったため、最後に回すことにし、まずは他の3組から、1組ずつ話を聞くことにした。
「では、小川のあたりから、少しずつ痕跡が確認できた、ということでいいですか?」
「そうね。あと、この辺りに、以前はなかったはずの、洞穴ができてたわ」
「洞穴、ですか」
地図に新しい情報を書き込んでいきながら、二人の内容をメモにも書き残していく。
「…わかりました。ありがとうございます。あとでまた、少しご意見を伺いたいので、外で待っていていただいてもいいですか?」
シエラが言うと、わかった、と頷き、二人は部屋を出て行った。
明けの明星が出ていくと、次の冒険者パーティーの5人が部屋に入ってくる。
「お忙しいところ、すみません。早速ですが、昨日の偵察内容について…」
明けの明星と同じく話を聞き、地図とメモに書き込んでいく。3つのパーティーの話を聞き終えたところで、時刻はすでに13時をまわっていた。
シエラは地図とメモを手に取ると、外にいる3組に、昼休憩をとって、14時に戻ってくるよう指示したのち、隣接する病院へと移動した。




