目に見えないとろにも「大変」は潜んでいる
本日、12月1日はコミックス第一巻発売日!
どうぞよろしくお願いします☆
「遅くなってしまい、大変申し訳ございませんでした!!」
エヴァンに教えてもらった学園長室。
中に入ると、すでにそこには(見捨ててきたはずの)エディとトーカスの姿があり、シエラは先に移動していたはずの自分たちの方が到着が遅くなってしまっていたことに気づき、顔を真っ青にしながらぺこぺこと謝っていた。
「すみません、うちの妹が一人で案内をしていたようで……」
シエラの隣に居たエヴァンも、申し訳なさそうに頭を下げる。
「まさか……嘘だろ、この学園に一体どれだけの人数がいると思ってるんだ」
エヴァンのさらに隣にいるノエリアを見て、まさか、とエディは小さく呟くと、信じられない、という表情で、シエラを見た。
「正直なところ……ここまでヒキが強いとか、一種の才能じゃないのか?」
エディはさらに隣に居たノエリアの姿を見ながら、必死で笑いをこらえながら、ぷるぷると肩を震わせながら言った。
「なんだ、まさか学園に到着して早々、何かトラブルにでも巻き込まれたのか?」
エディの様子を見て、トーカスがシエラの元にやってきて、不思議そうに小さな声で聞く。
「失礼ね。そんなわけないでしょ。ただ、ちょっと、運が悪かっただけで」
そう言って、ちらりと二人の方を見ると、エヴァンは本当に申し訳なさそうに頭を下げ、ノエリアは目をキラキラと輝かせながら、トーカスの方を見つめていた。
「ま、まぁちょうどいい。二人とも、今度の討伐訓練の実行委員だし、このまま一緒に話を聞いて行ってくれ。授業まではまだ時間があるし、問題はないな?」
「「はい」」
エディに言われて、二人とも、きりっとした表情になる。
(おぉ、ちゃんと切り替えはできる人なんだ)
シエラは心の中で、パチパチと拍手を送りながら、エディと学園長の方へと向き直った。
「シエラ達が到着するまでに、学園長には今回の討伐訓練のスケジュールについては話をして、内容については問題ない、と合意を得た。この後、シエラが持ってきてくれているギルドとの契約書の内容を最終チェックしてもらい、問題がなければ決裁の魔法印を押してもらう予定だが、それで問題ないか?」
「はい、大丈夫です」
シエラがこくりと頷いた。
「学園長、今のところ、生徒の親たちからは、特になにも意見はきていない、ということで大丈夫ですか?」
エディが聞くと、学園長はニコニコと笑いながら、こくりと頷いた。
「今年は例年になく、平和じゃよ。まぁなにせ、マーカス殿下がおるからの。……ほほ、陛下からとくに意見が出ていないというのに、その下からあれこれ口を出すのは難しいんじゃろう。それに実行委員のとりまとめをしているのがボルトン家の嫡男となると、さらにの。ほほ」
「まぁ……そのせいで、問題も起きてるわけですけど……」
すがすがしいまでの笑顔を浮かべる学園長とは裏腹に、少し複雑そうにため息をつきながらエディが言った。
「まぁ、そのあたりの対処については、今後嫌でも身につけていかなくてはならない立場なわけじゃし、これも勉強だと思って諦めるのじゃな。ほほ」
学園長の言葉に、若干顔を引きつらせるシエラ。
「……わかりました。とりあえず、予定通りこのまま進めていくことにします」
はぁ、と小さくため息をつくと、エディはエヴァンとノエリアの方を向く。
「エヴァン、ノエリア。今日は授業は午前のみだったかと思うから、昼食を取ったら、生徒会室に集合してくれ。討伐訓練の件だと、他の実行委員にも声をかけておいてくれ」
「「わかりました」」
そう言うと、二人はぺこりと頭を下げて、そのまま学園長室を出て行った。
「それでは授業がありますのでこれで。シエラ、契約書の処理が完了したら、とりあえず生徒会室で休んで待っててくれ。授業が終わったら迎えに行く。場所はこの部屋を出て左の階段を二階分上がって、右に進んだ突き当りだ」
「わかりました」
シエラが頷くと、エディはでは、と言って、そのまま部屋を出て行った。
「教師として、少し薄情だと思いますかな?」
学園長に言われて、シエラは思わずびくりと肩を震わせた。
「……まぁ、その、まだ彼らは学生なわけですし……。おっしゃられていた意味は分からなくはないですが、彼らに今回のケースの対処を全面的に任せるというのは、個人的にはいささか度が過ぎているのでは、とは思います」
(学園長にも考えがあってのこと、なんだろうけど。でも正直、もうちょっと大人が対処してあげてもいいんじゃないの?とは思うよね)
今回、この討伐訓練の裏で、マーカス殿下の暗殺を企んでいる者がいるらしい、と言われており、そのことについては、学園長にもエディは伝えている、と言っていた。
正直なところ、命には代えられないのだし、毎年やっている恒例行事とはいえ、過去の実施内容を確認しても、何が何でも実施しなくてはならない!というものではなさそうだし、中止にしたところでなんの問題もないんじゃない?とすらシエラは思っていた。
「ほほ。確かに教師陣からも色々と意見は出たんじゃよ。もちろん、中止を検討することも含めて、な。じゃが、結局、例の噂については、確たる証拠は見つからず、しかも、当事者である殿下本人から直々に、何が何でも決行する、と強い要望があがってきての」
「え、自分の命が狙われていると知ってて、ですか?」
ぎょっとした顔でシエラが聞くと、学園長は苦笑しながら頷いた。
「そうなんじゃよ。本人曰く、幸運の女神が自分にはついているから大丈夫、だとかなんだとか言うておったが、まぁ、命を狙われている、と言われている殿下本人が絶対にやりたいと言ってきたのじゃ。そうなるともう、わしらがとやかく言うことはできんでな」
そう言って、学園長は顎に生えている、綺麗に整えられた髭を撫でながら続ける。
「そういうわけで、エディ君には悪いが、今回は例年通り、実施するということになったわけなんじゃよ。まぁもちろん、彼からギルドに協力要請をして、万全を期す、という案が出てこなければ、こちらでいろいろと手を打つ予定じゃった。彼もこのままいけば公爵家を継ぐことになるわけじゃしの。周りのサポートが受けられる環境で勉強ができるのであれば、しておくにこしたことはないからのぉ。ほほ」
そう言って笑う学園長を見ながら、シエラはエディはエディで大変なんだな、と心の中でそっと合掌した。
「……わかりました。ギルドとしても、討伐訓練が滞りなく開催・完了できるよう、エディ様と連携を取ってことに当たらせていただきたと思います」
そう言って、持ってきていた書類を学園長に渡した。
「こちらが今回の契約書となります。今回の討伐訓練に関する内容が記載されておりますので、ご確認いただき、問題がなければこちらへ押印をお願いいたします」
シエラに言われて、学園長はペラペラと契約書をめくっていく。
「ふむ、特に内容は問題ない。依頼料についても、エディ君から申請をもらっていた金額と相違ない」
そう言って、学園長はごそごそと服の裾から印鑑を取り出すと、印鑑に魔力を込めて、契約書に押印した。
「……はい、確かに」
真贋スキルを使って、押印自体に問題がないことを確認したシエラは、最終確認者として自身のサインを契約書に書き込む。すると、契約書が光り、契約書が2枚に分かれた。
「それでは、こちらが学園側で保管していただく契約書となります。こちらはギルド側の控えとなりますので、このまま持ち帰らせていただきます」
そう言ってシエラは一枚を学園長に渡して、もう一枚をくるくると巻いてマジックバックの中へとしまった。
「ほっほ。お若いのに、真贋のスキルをお持ちとはの」
少し驚いたような表情で笑う学園長に、シエラは、そんなに珍しいスキルでもないですよ、と笑って頭を下げる。
「それでは、本日はお忙しいところ、お時間を頂戴し、ありがとうございました。引き続き、エディ様と連携の上、当日は対応に当たらせていただきたいと思いますので、何卒よろしくお願いいたします」
そう言って頭を上げると、シエラは失礼します、と言って、部屋を出て行った。
「……そういえば、数年前にここを卒業して離れた場所のギルドに就職した子がいたが……その子は元気にやっておるのかのぅ」
学園長は窓から見える外を景色を眺めながら、懐かしい生徒のことを思い出しながら、ほほっと小さく笑った。
今年も残すところわずかとなりましたね。。。
時の流れがはやすぎて、もはやついていけておりません。。。
誤字脱字が多くてすみません。いつも修正いただきありがとうございます!




