備品チェックー2
「……なんで数が合わないの(涙)」
シエラは途方に暮れていた。
討伐訓練で必要になるであろう備品のチェックを始めたばかりの頃はまだ順調だった。
たとえテントが色別でなぜか別のそれぞれ離れたところに保管されていたとしても、マジックバックが容量・性能毎で別れて保管されてしまっているせいで、備品倉庫内をあちこち移動しなくてはいけなかったとしても、解毒のポーションが、上級、中級ポーションが別に分けられていたとしても。
棚に書かれていた場所をすべてチェックしたら、帳簿上の在庫と実在庫は、ちゃんと一致していた。
なのに。
「なんでポーションの数はこんなに合わないのよ……!」
討伐訓練で一番使用される量が多いと想定されるポーション。
そのポーションの数が、どうしても帳簿に書かれている数と、棚に置かれていた数が一致しないのだ。
「普通のポーションはなんでか帳簿上の数より多い。けど、中級と上級のポーションの数がぜんっぜん足りない……!」
帳簿上の数が、ポーションが368本、中級ポーションが252本、上級ポーションは154本となっている。
だが、実際に棚を確認したところ、ポーションが468本、中級ポーションは186本、上級ポーションに至っては98本と、全く数が一致していない。
「ちょっとの誤差なら、中級と上級を別のポーションと誤って使ってしまったって可能性も考えられるけど、流石にこの誤差はいくら何でもありえない……」
実際、中級ポーションのところに、普通のポーションが25本入った箱が、置かれていたりしたので、誰かが置き間違えてしまい、さらに棚に書かれた内容をそのまま信じて、ポーションの中身をチェックせずに使用してしまったのだとしたら、誤差が発生してしまっていることについても納得がいく。
「とはいえ、3箱分くらい在庫が足らないっていうのは、いくら何でも流石におかしすぎるでしょ……」
備品チェックを定期的に行っていることはロウもさっき話していたので間違いないだろう。
だが、そこでこんなにも誤差が発生していたら、おかしいと報告が入るだろうし、再チェックも入るはずだ。
「てことは、考えられることとして、この棚のどこかに、ポーションが3箱くらい間違った場所に保管されてるってことよね……?」
そう呟いて備品倉庫を再度見渡す。
「……この中からポーションを探し出せっていうの?一人で?」
呆然となるシエラ。
「はぁ……ポーションだけ、ピンポイントで探す方法ってなんかないのかな……」
シエラがそう呟いた時だった。
「探索を使えば済むことだろう?」
「え?……探索」
コーカスに言われて、シエラが首を傾げると、コーカスは知らないのか?と首を傾げてきた。
「探索は特定の物や魔獣なんかを探すことに特化させて索敵のスキルを発動させればいい。索敵は対象を固定せずに全体の状況を把握するために使われるが、こっちは探すものを絞ることができる。シエラが卵を持って森に来た時、すぐに見つけられたのは探索で探していたからだぞ」
「え、索敵のスキルって、特定の対象だけ探すこととかできるの!?」
初耳なんですが、とシエラが驚いた顔をする。
「なんだ、知らなかったのか?」
そんなの普通だろ?と言わんばかりの表情のコーカスに、シエラは開いた口がふさがらない。
「まぁ、対象を指定して探すってことだから、何も考えずに全体の状況を確認するよりは難しいからな。やろうと思わないとできないことではあると思うが、シエラなら問題なくできると思うがな」
「マジかー……」
「とりあえず、やったことがないならやってみたらどうだ?」
コーカスに言われて、シエラは確かに、と頷く。
「でも、やってみるにしても、どうすればいいんだろ」
「まずは探したい対象をしっかりと思い浮かべるんだ。それから、それと同じようなものがないかを索敵で探す。この、探したい対象をしっかりと思い浮かべられているかどうかが重要だ」
コーカスに言われて、シエラは唸る。
「ポーションを探したいけど、思い浮かべるっていっても……あ、そうだ」
シエラは棚に置かれていたポーションを手に取り、それに意識を集中させる。
そして、それを持ったまま、目を閉じてさらに集中し、索敵のスキルを展開させる。
「…………あ!」
索敵で動物や魔物なんかを見つけた時に少し近い感覚を、何か所かで感じ取る。
その中で、ポーションの保管場所になっていないところへ行って、ポーションが置かれていないかを探してみる。
「あ、あった!中級ポーションが1本あった!」
置かれていたのは実習で使う用に分けられている魔石を置く棚のところだった。
「誰かが必要な魔石を探してるときにでも持ってたポーションを置いて、それをそのまま忘れたとか、そんな感じかな……」
はぁ、とシエラは中級ポーションを持って戻ってくる。
因みに、このポーションを鑑定してみたところ、すでに劣化しており、効能が限りなく低くなっている、という結果が出た。
「嘘でしょ……今そんな結果が出るものがここに存在してるだなんて……」
帳簿を見つめながら、絶望的な顔をするシエラ。
「とりあえず……さっきのでなんとなく探索の感覚は分かったから、ポーションをまずは一旦、かき集めて、それから数を確認して、一気に鑑定してしまおう」
こうなったら、所属外ギルドだろうが何だろうが関係ない。
備品の整理が乱雑なまま、放置・運用している方が悪いんだ。
それに、ちゃんと一か所にまとめて保管したら、その方がわかりやすいし、文句は言われないはず。
そう自分に言い聞かせて、シエラは各棚に置かれていたポーションを、一旦机まで全部持ってきて、集めることにしたのだった。
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