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現地調査ー3

周辺の探索をコーカス達にお願いしたシエラは、ポチと一緒にのんびりと手に持っているマップと、現地に違いがないかなどを細かく書き込みながら歩いていた。


「植生なんかも特にギルドの情報と特に相違は無し。出てくる動物や魔物も小型のものばっかりで、学生さんでも十分対応が可能と思われる、と」


確認すべき項目それぞれについて記載し、確認をした旨のチェックを入れていく。


「大体この辺りまで調べておけば大丈夫そうかな。後はこっちの方を調べながら、一旦ベースに戻ろうかな。ね?ポチ」


「わん(うん)!」


「はぁ、癒される……!!」


思わず目じりが下がるシエラ。

ポチが一緒に居るだけで、あんなに嫌だった現地調査の仕事がこんなに楽しくなるなんて、と感動していると、ガサガサという音と一緒に茂みから小さなネズミが顔を覗かせてきた。


「お、ラージマウスかな?」

「わん(まかせて)!!」


シエラがそう呟いたと同時に、ポチは一吠えすると、出てきたラージマウスに向かって駆け寄り、あっという間にプチリと踏みつぶした。


「え」

「わんわん(倒したよ)!」


シエラの方を向いて、目をキラキラと輝かせながら、ポチがしっぽをブンブンと振って見つめてくる。

これは褒めてほしい、ということでいいのだろうか?と一瞬悩んだが、いまにも飛んでいきそうな勢いで揺れているしっぽを見て、たぶんそうだろうと判断したシエラは、ポチの傍に駆け寄って、頭を撫でた。


「すごいね、ポチ!自分で狩りができるんだねー」

「わん(えっへん)!!」


シエラに褒められて、ポチは踏みつぶしたラージマウスをシエラに見せながら、嬉しそうにまた吠えた。


「せっかくポチが倒したし、討伐証明のしっぽの部分、持って帰るかな」


シエラはポーチから解体用のナイフを取り出すと、しっぽを切り取って、残りは土を掘ってそのままラージマウスを埋めた。


「そうだ、ポチ。あのね、今度ここで狩りをする練習をする人がいるから、できるだけ、魔物や動物がいても、倒さずにおいていてくれるとありがたいんだけど、できるかな?」

「わふわふん(いいよー)」


ポチがそう返事をしながら頭を下げてきたので、シエラはありがとう、と言って、ポチの頭を撫でる。


「シエラ―、暇ぁー」


ポチの頭を撫でていると、フィーヴがずいっと顔を覗き込んできたので、シエラは小さくため息をついた。


「暇()いいんですよ。現地調査で忙しくなるようなことがあるほうが困るんです」


そう言って、昔モルトで新人研修を行うための現地調査を行ったときにあった出来事を思い出して、思わずへっと小さくシエラは乾いた笑いを漏らした。


「それにしても、ほんとにすごいですね、魔力操作」


フィーヴの方を見つめながらシエラが言うと、そうでしょ?と得意げな顔をして、フィーヴは胸を張る。


「昔はさ、ここまで魔力をうまく隠せなかったから、人に紛れ込んでても、色々と厄介事が起こってたからさぁ。別に放っておいてもいいんだけど、そしたらなんか、ぶんぶんぶんぶん小虫が周りを飛んでるみたいにわらわらと来るから、いい加減鬱陶しくなってきて。ま、なんだかんだあって、魔力操作で外部に漏らさないようにするのが一番楽だなっていきついたんだよね」


「そ、そうですか……」

(なんだかんだについては、詳しく聞くのはやめておこう)


顔をひくつかせながらシエラが答えていると、シエラ達のところに、コーカスが戻ってきた。


「シエラ、こっちは特に異常はなさそうだ」

「あ、コーカスお帰り」


お疲れ様、と言って、マイスを取り出し、コーカス達に1本ずつ渡す。


「何匹か魔物に遭遇はしたが、特に気になるようなのは何もいなかった」

「こちらも同じです。それに、バジリスクの痕跡も、特に見当たりませんでした」


コーカスとサクラの言葉に、わかった、と頷き、シエラは書類に報告内容を記入していく。


「それ食べ終わったら、一緒にいったんベースに戻ろ……」


書類を書き終えてシエラが顔を上げてコーカス達の方を見ながらそう言ったのだが、すでにコーカス達は、ぺろりとマイスを平らげ終えているところだった。


「あ、ごめん。もう終わってましたか……」


相変わらず食欲すごいな、と思いながら、シエラは周囲をチェックしながら、ベースへと戻っていった。


*****


「よっと!おーい、そっちは片付いたか?」


ニュークが声をかけると、ハルが終わったよ、と返事をする。


「特に倒す必要がないんだけど、こうも襲い掛かってこられると、対処せざるを得ないのが辛いね」


はぁ、とため息をつきながら、ハルは剣についた魔物の血を払って軽く拭う。


「対処すんのも面倒だが、その後、死骸(これ)を片付けるのがもっと面倒なんだよなぁ……」


近くに転がっている数体のゴブリンを見て、ニュークが今度はため息をついた。


「これが、もうちょっと売れば金になる素材を持った奴ならまだマシだけど、ゴブリンじゃ処理する以外ないしな」


「しかも、ゴブリンは小型の魔物とかと違って、埋めるだけじゃだめだからね」


そう言って、二人は特大のため息をつきながら、大きめの穴を掘り、そこにゴブリンの死骸を放り込んでいき、火を放った。


「……臭い」

「この臭いだけは、ほんと、慣れないよね」


そう言いつつ、この臭いにつられて魔物が寄ってくることもあるので、二人は周囲を警戒する。


「とりあえず、この感じなら、学園の生徒たちだけでも、討伐訓練はこなせそうかな」


「そうだな、シエラちゃんからもらった地図とも相違はなさそうだし、特に危なそうな箇所もなかったし。出てくるのもゴブリンくらいだったからな」


ゴブリンを焼いていた火が小さくなってきたので、二人はそのまま穴に土をかけて埋めていく。


「そう言えば、バジリスクの話が出てたけどよ、そんな痕跡、今のところなかったよな?」


穴を埋め終えて一息つきながらニュークが言うと、ハルはそうだね、と頷いた。


「……ほんとに、バジリスクなんて出てくるのかな?」


半信半疑、といった様子でハルが言うと、ニュークはさぁ、と肩を竦めた。


「出るって言ってんのは例のあのお嬢様だったんだろ?調べてみたけど、あのお嬢様、街から一歩も出てなかったんだよ」


「え?」


ニュークの言葉に、ハルが驚く。


「だから、あのお嬢様がバジリスクと遭遇した、ってことはまずないんだよ。じゃぁ、他に誰かが遭遇して、そんな話が出回ってた、って思ったんだが、そっちも空振り」


「えぇぇ?」


ニュークの言葉に、ハルが思いきり顔を顰めた。


「それじゃ、一体どこからそんな話を?」


解毒ポーションをかき集めさせているのは事実のようで、王都内では現在、解毒関係のポーションが軒並み品薄状態になっていることは、ハルも知っていた。

だが、その解毒ポーションをかき集める事態となっているバジリスクについては、全くそんな話題がどこにも出ていないとなると、彼女はどこからそんな話を仕入れてきたのか?ということになる。


「ま、とにかく、まだ全部を見てまわったわけじゃねーし、一旦戻ろうぜ?それなりに時間が経過したから、もう一度確認しながら帰るにはちょうどいい頃合いだろ」


「そうだね、そうしよう」


ニュークの言葉にハルが頷くと、二人はまた、来た道の傍を通りながら、ベースへと戻っていった。

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