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現地調査ー1

「トーカス、もう体調は大丈夫なのか?」


「あぁ、一晩ぐっすり眠ったからな。しかし、昨日は悪かったな。ちょっとはしゃぎ過ぎた」


現地調査に向かう馬車の中で、トーカスはエディに聞かれて、少し苦笑いしながら答えた。

サウナで突然倒れたトーカスは、公爵邸でコーカスの治療を受けて、現在はぴんぴんしている。


「今日はこれから、討伐訓練の現地調査なんだよな?具体的には何をしたらいいんだ?」


トーカスに聞かれて、今度はシエラが答える。


「現地調査は主に、地図の内容と現在の地形に大きな変更がないかどうかの確認と、周辺で確認できる魔物の情報に相違がないかどうかの確認。それと合わせて、野営の候補場所のチェックと、怪我をする恐れがありそうな場所の確認だね」


これから行う予定の内容に対して、その場所でそれを行っても問題がないかをチェックする、というのが現地調査の目的になる。


「ある程度、魔物なんかは間引いておいたりするのか?」


聞かれて、シエラはうーん、と首を傾ける。


「場合によっては、依頼にそういったことも含まれたりはするんだけど、今回はそもそも討伐をすることが目的だから、間引いちゃうと意味がない気がするんだよね」


そう言ってチラリとエディの方を見ると、彼はこくりと頷いた。


「ああ、今回は魔物の討伐はしなくていい。シエラの言う通り、それじゃ訓練の意味がないからな」


「ま、そりゃそうか。安心安全なところで魔物を狩っても、それじゃ意味がねーもんな」


トーカスに言われて、エディはまた頷いた。


「とはいえ、参加するのは学生になるからな。あまりにも高ランクの魔物が出るような場所では対処ができない」


「なら、君たちにとって高ランクの魔物が出た場合は、討伐しておいてほしい、ってことでいいの?」


フィーヴに聞かれて、シエラはふるふると横に首を振る。


「討伐はお願いしたいかな。ただし、その場合は確実に実施場所を変更することになると思うから、一旦、街に戻って、実施場所を再検討しないといけなくなると思う」


シエラの答えに、そうなの?とフィーヴは首を傾げる。


「高ランクの魔物が出た場所で、流石に実施するのはリスクが高すぎるからね」


「あぁ、念のため、本命がダメだった場合の候補地も他に2か所ほどあるからな。……シエラには申し訳ないが、もしそうなった場合は、両方とも現地調査をしたうえで、どちらにするかを決定することになると思う」


エディの言葉に、シエラは絶望したような表情を浮かべた。


「それ……確実に時間が足らないから強行スケジュールになるやつじゃないですか……」


「ま、まぁ、これから行くシャパーニュの森には、前にハルたちにも一応軽く行ってみてきてもらったが、ヤバそうな魔物はいなかったし、遭遇した中で一番強かったのもブレイクラビットだったし」


「ブレイクラビット?」


エディの言葉に、トーカスが今度は首を傾げてくる。


「あー、モルトの方では目撃情報出たことの無い魔物だから、トーカスは知らないか。ブレイクラビットっていうのはね、見た目はとっても可愛らしいウサギなんだけど、めちゃくちゃ脚力が強くて、蹴り一撃で武器や防具なんかを簡単に破壊してくる、ちょっと厄介な魔物なの」


「おー、まさにブレイクラビット」


感動したように言うトーカスに、少しシエラは笑った。


「ほんのちょっと、普通のウサギより大きいかな?くらいのサイズだし、基本臆病だから、遭遇してもすぐに逃げられる場合がほとんどで、深追いさえしなければ、危険度もそこまで高くないから、単体だと討伐推奨ランクはDランク、集団でいた場合はCランクってギルドでは設定されてるね」


「なら、よっぽどのことがない限りは大丈夫ってことか」


トーカスの言葉に、シエラは頷く。


「……だが、学園でトーカスが聞いたのだろう?()()()()()が出る、と」


「そ、それは……」


コーカスの言葉に、シエラは苦虫を嚙み潰したような表情になる。


「それがもし出てきた場合は、確実に実施場所を変更することになるんじゃないのか?」


そう言って、コーカスがエディの方を見ると、エディも思いきり顔をしかめながらも、頷いた。


「もしも()()()遭遇した場合は、変更せざるをえない。訓練とはいえ、危険すぎるからな」

(正直、今回の現地調査にトラブル呼び込み体質(シエラ)が同行していることを考えると、遭遇する可能性も決して低くは無いしな)


「……ちょっと、なんかものすっごく失礼なこと、考えてましたよね」


シエラが思わずムッとした顔をすると、エディは何のことかな、とふいっと視線をそらした。


「ま、まぁ、とにかく!今までそんな報告はギルドの方へも上がってきたことはないわけだし、それに、シシィ嬢が思っていた場所が、シャパーニュの森のことを本当に指していたのかもわからないんだ。行って、きっちり確かめてみればわかることだ」


「はぁ……まぁ、そうですね」


思いきりやる気のなさそうな表情と声で、シエラは同意する。


「ま、気張っていこうぜ」


一人楽しそうな様子のトーカスをよそに、馬車の中の様子はどんよりとしたお通夜のような空気を漂わせていたのだった。


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