臨機応変に
「何から確認すればいいのか、正直なところ、僕もわからなくなってきたよ、ははは」
公爵邸に戻ってきたシエラは、エディ達のいる客間にフィーヴとポチを連れて行った。
流石のアオも少し驚いた様子で、肩を竦めながら笑って言った。
「それに関しては、私も完全に同意です」
フィーヴがここに来た経緯についても突っ込みどころが満載だったが、ここまでの道中、どうやってきたのかを公爵邸に戻るまでに彼から聞いて、シエラは頭を抱えていた。
「とりあえず、今のところ彼らの目撃情報はギルドへ上がってきてはいないようなので、問題はないかと思いますが、引き続き、その手の情報が上がってこないかはきちんとこちらでも随時チェックを入れておきます」
ミュシカの言葉に、シエラは彼女を尊敬の眼差しで見つめながら、ありがとうございます、と頭を下げた。
「とりあえず、今後なんだけど」
アオがにっこりと笑う。
「予定では、来るのはまだ少し先だったけど、折角こんなに早く到着してくれたことだし、少し予定を前倒しにすることにしようと思う」
そう言ってアオは、ミュシカの方を見ると、ミュシカは小さく頭を下げて、問題ありません、と答えた。
「シエラ嬢」
「は、はい」
アオに名前を呼ばれて、シエラに緊張が走る。
「今週は解体部署での研修予定となっていたかと思うんだけど、申し訳ないが、明日からフィーヴくんを連れて、討伐研修で行く予定の森の事前現地調査を行ってきてほしいんだ。頼めるかい?」
「……………………わ、かりまし、た……」
嫌です、と本音では断固拒否をしたいところだが、中央ギルドのトップ(自分の職場のトップ)からの指示など、一介の職員に、拒否権なんてあるわけがないじゃないか、と、シエラは心の中で叫びながら、泣く泣く了承の言葉を口にする。
「なら、俺達の方での現地調査も、前倒しで明日・明後日に一緒に行うことにしよう。ハル、調整を頼む」
「わかりました」
アオの言葉を聞いて、エディがハルに言うと、彼は小さく頭を下げて、答えた。
「学園の行事の話だから、元々こちらでも調査は行う予定だったんだ。一緒にしてしまった方が効率がいいだろうからな。問題ないだろう?」
「ええ、何も問題ありませんよ」
エディに聞かれて、アオが頷く。
「コッカトリスにフィーヴくん、ポチも同行するとなれば、追加の冒険者をギルドから手配する必要はなさそうかな」
「そうだな、問題ない」
「シエラ嬢も、問題ないかな?」
「あ、はい、問題ありません」
どんどん話が進んでいくな、なんて他人事のように思っていると、いきなりアオに確認をされたので、シエラは慌てて頷いた。
(まぁ、調査に関しては、コーカス達の探索に後は目視確認をある程度行えば大丈夫だろうし、下手に知らない人が同行して、フィーヴやポチのことがバレたらその方が大変なことになるしね……)
シエラから肯定での回答をもらい、アオはにっこりとまた笑って頷いた。
「それじゃミュシカ、悪いんだけど、シエラ嬢のスケジュールの調整と関連の書類作成については代行で対応をお願いできるかな?」
「はい、わかりました」
アオとミュシカのやり取りを聞いたシエラは、大きく目を見開いた。
「え、良いんですか!?」
スケジュール調整は別として、現地調査関連の書類については、自分で作成しなくてはいけないのだと思っていたので、シエラは驚いた。
「もちろんだよ。急な変更をお願いしているのはこちらだからね。それに、書類を作成してからとなると、明日、出発前にギルドに寄らなくちゃならないだろう?直接行く方が効率的だろうし、それに、最終決裁者がここに居て状況もわかっているからね。問題ないよ」
「あ、ありがとうございます!」
心の中で大きな声でやったー!と叫びながら、何度も頭を下げるシエラに、アオは苦笑する。
「あぁ、ところでシエラ嬢、現地調査については、特に問題がない、と認識しているんだけど、大丈夫かな?」
聞かれて、シエラは、はい、と頷いた。
「通常のギルドで行っている事前調査と同等程度の内容で大丈夫であれば、問題ありません」
街の外で何かを行う場合、問題がないかどうか事前に調査を行うことが義務付けられていて、調査方法は、Cランク以上の冒険者に依頼するか、もしくは、ギルド職員が直接確認を行うかのどちらかとなっている。どちらを選択するかは、基本的には事前調査を行う場所と内容によって決められることが多い。
場所が遠かったり、危険な魔物が出るようなところの場合は、冒険者への依頼とし、逆に場所が近かったり、危険な魔物の目撃情報がないようなところであれば、ギルド職員が確認する、といった感じでざっくりと線引きされている。
シエラは、以前いたギルドでちょくちょく事前調査に駆り出されていたので、特に特殊なことをする必要がなければ、問題なく調査の仕事も一通りこなせる。
モルトのギルドに移ってからは、受付業務の方で手いっぱいの為、事前調査に出ることはほぼなかったのだが、それでも過去数回ほど、対応したことがあり、そこでも問題なく対応ができていたので、大丈夫だろう、とシエラは思っていた。
「よし、それなら、ギルドメンバーの方にはこちらから明日の朝礼で共有しておくよ。あぁ、ジェルマへも僕の方から連絡しておくから安心して。事前調査の日程は……そうだな、念のため、3日間ほど調査してくれると助かるんだけど、問題ないかな?」
「はい、わかりました」
(と言ったものの、野営用品は一応持ってきてはいるけど、コーカス達の3日間分の食料をどうするかが悩みどころよね)
頷きながらも、シエラは、急なことで一番大事なコッカトリス達の食糧問題に、頭を悩ませる。
「野営に必要なものは、すべて明日朝一でここに届けるよう手配をしておくから安心して。あぁ、従魔達の食料も、もちろんしっかりと用意しておくよ」
「あ、ありがとうございます!」
この人、心の中が読めるのか!?と思いつつも、助かった、とシエラはほっと胸を撫でおろす。
「それじゃ、そろそろ僕たちはこれで失礼するよ。シエラ嬢も、明日に備えて、今日はゆっくりと休むといい」
「はい、お疲れさまでした」
そう言って、シエラはぺこりと頭を下げて、アオとミュシカを見送った。
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