お風呂には危険がいっぱい?ー2
パタパタと走り去っていくトーカス。
「……なぁ、アオ」
「普通ではありえません。というか、彼の言っていたことが事実であれば、そもそも、火魔法と水魔法を同時に発動させることはできないはずです」
俺がアオに声をかけると、最後まで質問を聞く前に、アオは俺の聞きたかったことに対して答えた。
「だよな……」
そもそも、複合魔法というものが存在はするが、それは最初から、二つを混ぜた状態で発動させたもので、先ほどトーカスがやってみせたように、それぞれ単独で二種類の魔法を同時に発動させる、ということはできないといわれていた。
「あれ、複合魔法……ってわけじゃねぇよな?やっぱり」
「はい。あれは間違いなく、それぞれ単独での同時発動です」
俺は、露天風呂にぷかぷかと浮かんでいるトーカスの方を見ながら、再度アオに確認すると、アオは即答した。
「ジェルマからの申請では、あそこまで高度な魔法が使える、とは、報告書にはありませんでした」
アオが真剣な表情になってる。
……ちょっと、このままだとまずい気がするな。
「いや、そもそも同時発動できるなんて、誰も思わないだろ。報告書になくても当然じゃねぇのか?」
とりあえず、トーカスと今後会えなくなるのは絶対に嫌だったので、ジェルマのフォローをする。
「……確かに、一理あると思うわ。もしかしたら、人とかかわったことで、ああいう変わった魔法の使い方を思いついた、って可能性もある気がするな」
「今はシエラ嬢がしっかり手綱を握れてるみたいですし、そこまで問題はないのでは?逆に、下手に監視をつけたりして、警戒しているのがバレてしまった方が危ない気がしますし」
流石は俺の護衛!長いこと一緒にいるから、俺がどうしてほしいかをよく理解してくれてるぜ。
ハル達の方を見ると、ニュークがグッとサムズアップしている。
馬鹿野郎、わかってるから、それは今やるんじゃない。
「少し、サウナに入って落ち着こうと思います」
「あ、待ってくれ、俺も行く!」
バシャバシャ、と顔を洗って、アオがサウナの方へと移動し始めたので、俺も慌てて、後に続いた。
というか、そもそもサウナってやつに入ってみたくて来たのに、なんか話が変な方向にいったせいで、変な雰囲気になってきてるし。
汗でも流して、一旦、この雰囲気をリセットするべきだろ!
サウナ部屋の扉を開けると、物凄い熱波が俺たちを襲った。
「うぉ……これはなかなか……」
中の高温に思わず顔をしかめてしまったが、なるほど、女性人気だというのも頷けた。
入った瞬間、全身の毛穴がぶわっと開いたかのような感覚に陥ったのだ。
部屋に入ってまだ、一分も経過していないはずなのに、すでにじんわりと全身が汗ばんできている。
「これは、どうするのが正解なんだ?」
初めてのサウナ体験の為、勝手がわからなかった俺は、アオに声をかけた。
「サウナに正解なんてないぞ?のぼせないよう気を付けながら、ギリギリまで中で体から発汗させたら、外の水風呂で体を冷やして少しクールダウンして、水分を補給して、また中に入って、を好きなだけ繰り返すだけなんだから」
「と、トーカス⁉」
いつの間にかサウナ室の中にいたらしいトーカスが、俺の問いに答えてきたので、驚いて体がビクッと震えた。
「え、なんでそんなにサウナの入り方に詳しいんですか?」
魔獣であるはずのコッカトリスが、なんで人の施設に詳しいのか、確かに俺も疑問に思った。
だが。
「サウナ室では静かに。それがマナーだぞ」
え、俺、コッカトリスにサウナのマナー違反指摘されたのか?
「す、すみません……」
なんか、思わず謝ったけれども。
ほら、いつもはちゃらちゃらしてるニュークまで、ポカンとした顔になっちまってるじゃないか。
「「「「「………………」」」」」
トーカスに言われてから、俺達は一言も発することなく、じっとサウナの中に入っていた。
……ていうか、ほんとに、どのタイミングで出たらいいんだ?
結構時間が経ったような気がするけど、アオはもちろんのこと、トーカスもまだ出ないんだけど。
え、そろそろ出たいんだけど、これ、出てもいいのか?問題ないのか?
俺がそんなことをあれこれ考えている時だった。
「…………きゅぅ」
「と、トーカス⁉」
突然、トーカスが立ち上がったかと思ったら、そのままふらつき、ばたりと倒れた。
「やばい、のぼせたか!?」
慌ててトーカスを連れて、俺は外に出ると、水風呂の傍にトーカスを寝かせて、自分のタオルを濡らして、トーカスの頭を冷やす。
「おい、トーカス、大丈夫か!?」
目をまわしているのか、トーカスの翼がぴくぴくと動いてはいるが、返事はない。
ハルも手に持っていたタオルを水で濡らしてトーカスにかけ、ニュークもパタパタとトーカスを仰いでやる。
「どうやら、のぼせたようですね。ステータスに状態異常が表示されていて、のぼせ、とありました」
「……トーカスが人間臭いから、うっかり俺らと同じように思ってたけど、よく考えたら、魔獣なんだよな」
俺が言うと、アオも面目ない、と項垂れる。
「私もです。サウナの入り方に詳しいようだったので、てっきり、大丈夫なのだと思ってしまっていました」
アオの言葉に、俺も頷く。ハルとニュークも同じだったようで、もっと注意すべきでした、と反省していた。
「とりあえず、一旦風呂から上がって、トーカスが目を覚ますのを待ちましょう」
アオの言葉に、俺達は賛成した。
そして俺は、サウナに入る時は、魔獣は連れて入らないよう気を付けよう、と心に誓ったのだった。
サウナに入る時は、自分の体調と相談しつつ、しっかり水分補給をしながら、無理なく、休み休み入りましょう!
トーカスのように、のぼせるまで入ってはだめですよ!
(というか、そもそも鶏はサウナに入れないようにしましょう!)




