お風呂には危険がいっぱい?ー1
5月20日、TOブックス様より、第一巻が発売されました!
皆様、どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m
シエラと別れた俺は、そのままエディに連れられて、入り口をくぐって中に入った。
いらっしゃいませ、と少し年配の男がカウンターから挨拶をしてくるのを見ながら、モルトにはない、サウナに想いを馳せながら、俺はエディの肩に飛び乗った。
「こちらが受付となりますので、どうぞ」
なんか、エディの執事にどことなく似てるなー、なんてことをぼんやり考えている間に、ハルがサクサクと全員の受付を済ませていく。
「それでは、ごゆっくりお寛ぎください」
にっこりと笑って頭を下げる彼に、エディは軽く手をあげて答えると、脱衣所へと移動した。
「じゃ、俺先に行ってるわ」
受付でタオルを受け取ってないな、と思っていたが、このフロアは各エリア毎に脱衣所も分かれているそうで、タオル類も各脱衣所に備え付けで提供されている仕組みになっていて、これは便利じゃん、なんて俺は思いつつ、早く風呂に入りたくて仕方がなかったので、エディを待たずに先に入ることにした。
「うおぉぉぉぉぉ!!すっげぇ!!」
浴場に移動すると、大きな内湯が2つあり、そのうちの1つには打たせ湯まであったことに俺はテンションが一気に上がった俺は、バサッと翼を大きく広げ、自分に洗浄魔法をかけて体を綺麗にする。
ちゃんと湯船につかる前に、体は綺麗にしておかないとな!マナーだぜ!
「ひゃっほーぅ!」
そのまま湯船にダイブしようと勢いよくジャンプ。
が、いきなりガシッと誰かが俺のことを掴んできた。
「な、なんだ!?」
驚いて振り返ると、そこには少し呆れたような表情を浮かべたハルの姿があった。
「ダメですよ、いくら貸し切りとはいえ、マナーは守らないと」
そう言ってハルは、俺を捕まえたまま、洗い場へと移動する。
「え?いやいや、大丈夫だって。ちゃんと洗浄魔法使って、体は綺麗にしたから!」
「洗浄魔法を使っただけでは、体についた虫やなんかは取れてないことがあるからね。きちんと洗わないと」
そう言って備え付けられていた石鹸を俺の体にまんべんなくこすりつけていき、わしゃわしゃと洗い始めた。
「……そう言えば、普段、君達ってお風呂ってどうしてるんだい?」
これはこれで、案外、気持ちいいから有りだな、とハルに体を預けていると、急にそんな質問をされた。
「風呂?風呂は別に適当だな。基本は洗浄魔法で済ませて、たまに川とかで時間があったら水浴びしたりするくらいか?まぁ、今は公爵家にいるから、毎日風呂ちゃんと入ってるぞ?魔法のコントロールの練習も兼ねて」
「「魔法のコントロールの練習?」」
「え?」
突然、ハルとは別の人間の声もしてきたので、なんだ?と思って視線を移すと、そこにはアオの姿があった。
「魔法のコントロールの練習とはどういうことですか?」
興味津々、といった表情で俺を見てくるからちょっと驚いたが、そのまま話を続けた。
「風呂を使わせてもらう条件として、使うのは最後で、風呂上りに風呂場の掃除を俺がすることになってて、その掃除に、魔法を使ってるんだよ」
俺の言葉の意味が分からない、と二人が首を傾げてくるので、一通り、どうやって掃除をしているのかを説明してやる。
「まず、風魔法で石鹸の粉をまんべんなく撒いて、そのままブラシを風魔法で走らせる。あ、この時、強すぎず、弱すぎずでブラシをこするように揺らしながら走らせるのがポイントだ!で、終わったらお湯を魔法で出して一気にこすったところを流すんだが、このお湯の温度が」
「ちょちょ、ちょっと待った!」
「お?なんだ?わかんないとこあったか?」
アオがものすごく驚いた表情を浮かべているので、俺が聞くと、いやいやいや、とアオは思いきり眉を顰めた。
「お湯を魔法で出すってどういうことだい!?」
「え、そこ?」
ブラシをこする時の強さをどうやってコントロールしているのかとか聞かれると思っていた俺は、思わず首を傾げる。
「お湯だすなんて簡単だろ?水魔法で水だして、火魔法で温めりゃお湯になるじゃん」
「いやいやいやいや!簡単じゃないからね!?」
アオに言われて、俺は何言ってんだ、こいつ?と思いつつ、実演してやるのが一番手っ取り早いな、と思って、見せてやることにした。
「簡単だって。こうやって水を魔法で出すだろ?んで、水の中に極小の火球を出してやれば……」
自分の上に大きめの水の球体を魔法で出した後、その中心に小指程度の火球を生み出す。
因みに、この時、火球は通常であれば水で一瞬にして消えてしまうため、数秒間、消えないように魔力を注ぎ続けて維持させなくてはならず、また、火球の大きさ、持続時間によって温度が変わるため、ちょうど出した水が適温になるようにするには思っていたより魔力のコントロールが必要になる。
まぁ、もう俺は完璧に、どのサイズの水でも適温にすぐに変えられるけどな!
そうしてちょうど少し熱めのお湯になった水の球体に注いでいた魔力を止め、バシャン!と自分の体に落とした。
「うわぁ!」
「あ、悪りぃ!」
うっかり俺を洗っていたハルにまでお湯がかかってしまったが、まぁ、そこはドンマイ、ということで、ぺろりと舌を出して、一応謝っておく。
「じゃ、俺、ちょっと露天行ってくるわ!」
しっかり体も洗ってもらったし、これで風呂に入っても問題はないだろう、と、俺は打たせ湯のある湯船へと移動した。




