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大きなお風呂は正義です-2

一般入り口の方へと移動したシエラは、受付で銀貨1枚を支払ってタオルを受け取ると、それを持って脱衣所へと移動した。

一般的な浴場に比べると利用料金は割高になっているものの、やはり人気があるようで、利用者も多く、空いているロッカーを探すのに手間取りつつも、なんとか発見し、その中に荷物を置いて、着ていた服を脱ぎ始めた。


「シエラさん、準備はできましたか?」


ちょうどロック盤に魔力を込めて、ロッカーにカギをかけ終えたところで、後ろから声をかけられたシエラは、振り返る。目の前の声の主の美ボディに、目を奪われるも、すぐさま正気に戻って、はい、と答えた。


「……一体、何をどうすれば、あんな風になるのか」


隣を歩くミュシカの大きな果実をちらりと見た後、自分の方を見てみると、残念なことに、しっかりと床まで問題なく視界を遮るものがないため、少し泣きそうになった。


「おぉぉ…………!!」


中に入ると、湯気で視界が一瞬遮られるも、そのまま進んで行くと、横に大きな洗い場が設けられていて、奥には複数の大きな浴槽が並んでいた。

子供から老人まで、人間から獣人まで、様々な人がそれぞれ楽しそうにお風呂を満喫している姿に、シエラは小さく感動する。


「ちょうどあそこの辺りの洗い場があいているようですよ」


「あ、ほんとですね!ササっと洗って、お風呂につかりに行きましょう!」


シエラとミュシカは洗い場へと移動した。


持っていた小袋から親指くらいの小さな石鹸を取り出すと、それを濡らしてタオルで泡立てる。


「シエラさん、それは……?」


小さい浴場の場合は、石鹸などは持参するのが基本だが、ここのように大型の施設の場合、石鹸がサービスで設置されており、それを使う人がほとんどなので、ミュシカは少し不思議に思ってシエラに聞いた。


「あぁ、これですか?これ、モルトの解体担当者に教えてもらった石鹸で、消臭に特化した石鹸なんです」


「消臭に特化……あぁ、なるほど、今日は解体作業をしていたから、ということですね」


ミュシカが言うと、シエラはこくんと頷いた。


「解体作業後の臭い問題に関しては、作業後にどれだけ対策しておくかで、結果がかなり変わりますので」


シエラはいそいそと石鹸を泡立てると、頭から足の指先まで、しっかりと泡で全身を包んでいく。

爪の間、指の間、ありとあらゆる場所を洗うのを忘れない。


「よし、こんなもんかな……」


入念に洗いきった後は、しっかりと泡を落として流し残しがないかをチェックする。


「ちょうど、あそこの香り湯が少しあいているようですよ」


洗い終わった髪の毛をタオルで巻き上げながら、ミュシカがほんのりオレンジ色をしたお湯の方を見ながら言う。


「ほんとですね、さっそく浸かりに行きましょう!」


シエラは使い終わった台と桶を軽くお湯で流して片付けると、柑橘系の香りがするオレンジのお湯へとミュシカと共に移動した。


「ふあぁぁ……生き返るー……」


スライムのように溶けてしまいそうな声を出すシエラに、ミュシカはくすくすと笑った。


「あ……す、すいません」


恥ずかしそうにシエラが言うと、謝ることはないわ、とミュシカは笑って答えた。


「どう?中央ギルドで働いてみた感想は?」


首のあたりをしっかりと揉みながらぐるぐると頭を回していると、ミュシカがそう問いかけてきたので、シエラはうーん、と少し考えてから口を開いた。


「そうですね、モルトとは色々と違っていて、勉強になります。全く同じように、とはいかないですけど、それでも、いくつか取り入れたら残業削減につながるんじゃないかなって思ったものはあったので、是非、戻ったらみんなに伝えて、一緒に考えていうこかなって思ってます」


「そう、それはよかったわ。今回のこの交換研修に関しては、色々と反発もあったから少し心配していたの」


ミュシカの言葉に、シエラはそうなんですか?と首を傾げた。


「そんなことをしなくても、十分できています。研修の必要性を感じません。行く余裕ありません。研修中にたまった仕事は誰がするんですか、ってね」


「わぁー…………」


乗り気ではない研修に対して、そういった不満を持つ気持ちはわからなくはないのだが、今回のこの研修に関しては、これまで前例がない研修なので、ぶっちゃけ、やってみなくちゃわからないんじゃないかな?ともシエラは思っていた。


「まぁ、私は正直なところ、色々な要因が絡んだ関係で、今回の交換研修の一発目に選ばれた、という状況なので、そもそも研修に対してどうこうというのはあまり何も思ってなかったんですよね。交換で向こう(モルト)にこちらから人が行ってくれてるので、正直、仕事がたまることはないと思ってますし」


ただただ研修受けに行くだけとなると、その間業務が滞るわけで、他の人が分担してやってくれていても、たまるものはたまる。だが、今回は中央からも研修として人が派遣されているので、その不満はあまり関係ないのでは?とシエラは思った。


「前例にないことをやるの、嫌がる人ってやっぱり多いから」


「そうなんですねぇ……」


確かに、仕事の仕方一つとっても、ちょっとやり方が違うだけで嫌がる人、というのは存在する。特に、年配貴族の方々は、仕事を受ける時の手続きなんかが新しくなると、必ずといっていいほど文句を言われる。


「まぁ、慣れたやり方を変えるのは、嫌がる人多いですからね」


「そうなのよね。……でも、いつまでも同じやり方じゃやっていけないのも事実だから、納得はできなくても、対応はしてもらわないとダメなんだから、その辺り、さっさと切り替えてくれたらありがたいんだけどね」


国内外の情勢に応じて、変えざるをえないことも多々ある。

それこそ、小さな迷宮の様子が少し変わるだけでも、大きくやり方を変えなくてはいけなくなる場合だって出てくるのだ。


「ってごめんなさいね、なんだか愚痴っちゃったわ。お風呂で気が緩んだのかしら」


ミュシカさんも苦労してるんだなぁ、なんてことを思ったシエラは、気を取り直して次はサウナに行きましょう!とミュシカを誘う。


「モヤモヤもイライラも全部汗と一緒に流しだしちゃいましょう!」


「そうね、そうするわ!」


シエラの言葉に、ミュシカはにっこりと笑って頷くと、二人はお風呂から出て、上の階にあるサウナへと向かった。


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― 新着の感想 ―
やり方が変わるのを嫌がる人には、進歩が無いように思います。
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