業務部 解体作業課 3
解体:ものをバラバラにすること。
魔物や魔獣の解体:素材として使用できる最小単位に、部位毎にバラバラにすること。
解体の難易度によって処理後の報酬額が変わってくるので、難易度の高いものは職員からの人気が高い。
植物の解体:魔物等と同じく、素材として使用できる最小単位に、バラバラにすること。
こちらは大物(トレント等)ではない限り、報酬額は植物毎でそう大きく変わることがなく、作業内容も単純なものが多く、難易度も低いものが多いので報酬額は割と低め。しかし、丁寧で細かな作業(根の処理、葉の選別等)が大半のため、職員からの人気は低い。
「……薬草系の処理は人気がないのは、どこもやっぱり、共通なんだなぁ」
昼休憩を終えて戻ってきたシエラは、束になって籠に積まれている薬草たちを取って、持ち場へと戻ってきた。
「さて、と。まずは鑑定っと」
何の薬草が何本、という情報自体は、受付書類に記載がされているのだが、薬草の状態までは記載がされていないので、まずは鑑定で状態を確認する。
「これは良好、こっちは可……あ、採取の時に根っこを傷つけちゃってるのか、こっちは場合によっては可……葉の裏側に虫食いがあるけど、この依頼内容ならこの範囲内なら可だな、それからこっちは……」
鑑定で出てくる状態をもとに、実物を確認しながら、選別をせっせと行っていく。
「次は下処理で、まずは根っこの部分を綺麗に分けて水にさらしておいて、それから……」
魔物と違って植物系については基本的な知識さえあれば、簡単に処理ができるので、シエラはサクサクと進めていく。
だが、1件、2件と処理を進めていくうちに、シエラはふと、あることが気になってきたので、ある程度植物系の処理を終えたところで、サーシェの所へと移動した。
「あの、サーシェさん。ちょっといいですか?」
「あぁ、どうしたの?何か問題でもあった?」
解体していた手を止めて、サーシェがシエラの方へと視線をやると、シエラは少し大したことではないんですが、と前置きして話始める。
「いえ、全然、大したことではないんですけど……。その、今日、午後からいくつか植物系の処理を行ってたんですが、処理してる植物がセリナズ草やハツカ草ばっかりで……、その、いつもこんなに、解毒用の素材の採取依頼ってあるものなんですか?」
セリナズ草もハツカ草も、解毒ポーションを作成するときに必須となる素材なのだが、どちらも平地であれば、割とどこにでも群生している植物なので、小遣い稼ぎに冒険者が一緒に採取してくることがよくある。だが、今回はすべて、依頼に対しての納品物となっていた。
昨日、トーカスから『バジリスク』なんて言葉を聞いたせいか、少し過敏になっているだけかもしれない、と思ったりしたのだが、大抵この手の素材の依頼は、平時であれば、回復ポーション用素材は7割、解毒ポーション用素材が2割、その他用素材が1割、といった割合であることがほとんどなので、今回のように、依頼がほぼ解毒ポーション用の素材、ということは滅多にない。
「あぁ、それ?確か、どこかの貴族が上級の解毒ポーションをいろんな店に注文してるとかで、どこも急遽素材が必要になってるらしいのよ」
サーシェの言葉に、シエラは顔をひきつらせた。
(ちょっと待って、貴族ってことは、まさか昨日トーカスが言ってた、何とかってご令嬢のとこ……?……いや、まぁ確かに、念のためでこっちの方でも上級解毒ポーションを用意してもらえるよう、帰りにでも申請しようかなと思ってはいたけど……え、なに、ほんとにこんなに素材集めるくらい、ポーションが必要だと思ってるってこと?)
シエラが午後処理した素材たちがあれば、上級解毒ポーションがかなりの量作成できる。
すでに作成されているであろう市場にある在庫分も加味すれば、王国騎士団全員が毒状態になっても数回は治すことができるくらいの量だ。
今回の学園の討伐訓練に参加する生徒の数に至ってはその半数以下なので、正直、過剰すぎるといえる。
「まぁおかげさまで、急な需要増で普段よりも報酬が少しだけれど値上がりしてるおかげで、いろんな冒険者たちがこぞって納品してくれてるってわけ」
なるほどね、とシエラは小さく頷いた。
「とりあえず、今日は植物系の処理が終わったら、もう上がってもらってもいいからね」
にっこりと笑ってサーシェが言うと、シエラは大きく目を見開いた後、時計をバッ!と確認する。
(……現在時刻は15時、植物系の処理が残っているのは確か後残り5件ほど。量的にもそこまでかかるものではないし、これなら……!!)
「ありがとうございます!それじゃ解体に戻りますね!」
そう言い残すと、シエラは目にもとまらぬ速さで解体場所へと戻る。
そして、黙々と、一心不乱に作業をこなすこと数時間。
「いよっし!これで全部ー!!」
最後の1本のセリナズ草の処理を終えたところで、シエラは大きくガッツポーズをとる。
「後は~これを~持っていっけば~~」
超絶ご機嫌なシエラは、浮かれてスキップをしながら素材を窓口に提出しに行く。
「お、シエラさん、もしかして終わった?」
明らかに周りが引くレベルで浮かれまくっているシエラを見たサーシェが声をかけると、はい!と元気よく答えるシエラがそこにいた。
時計の針は間もなく定時の17時を指そうとしているところだった。
「ちょうどこれで最後で、提出したらもう上がって大丈夫ですよね?」
キラキラと目を輝かせながら聞いてくるシエラに、サーシェは苦笑しながら大丈夫です、と頷くと、シエラはふぅ~!と歓喜の声を上げる。
「それでは、少し早いですが、お疲れさまでした!!」
元気よくシエラは挨拶をすると、持っていた処理済みの薬草たちを窓口へと提出して、解体場を後にしたのだった。
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