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解体のお仕事

「はい、確かにアイスマウスの毛皮と、討伐証明部位のしっぽを確認いたしました。こちらが討伐完了報告書の控えになりますので、内容に間違いがないかどうか確認をお願いいたします。毛皮はこのままこちらで買取希望とのことなので、査定後の料金お渡し時に、こちらの控えが必要になりますので、無くさないようにご注意ください」


シエラは報告書に内容を記入し、買取査定ありにチェックを忘れずに入れてある事を確認して、自分の判子を押したものを目の前の男女の冒険者ペアに渡す。


「査定はどのくらいで終わるんだっけ?」


女性冒険者が持っているナイフの状態をチェックしながら聞いてきたので、シエラは査定窓口に掛けられている現在の目安時間を確認し、たぶん2・3時間ほどで終わると思います、と答えた。


「そっか、わかった。それじゃまたそのくらいに戻ってくるわ」


「かしこまりました。戻られたら、直接買い取りカウンターの方へお越しください」


シエラがそう言うと、彼女はそれじゃ、と言って相方と一緒に外に出て行った。


「お疲れ様。少し波がひいてるし、今のうちに少し休憩してきてください」


ふぅ、と息を吐きながら書類を片付けていると、後ろからシャオに声をかけられたので、ありがとうございます、とシエラは頭を下げて、休憩がてら、買取素材と書類を一緒に今日の査定担当者のところへ持って行くことにした。


「モルトとこちらとでは、随分と勝手が違うのだな」


シエラの肩に乗っていたコーカスが小さく呟く。


「そうだねー。まぁ、そもそも中央(こっち)モルト(あっち)じゃ職員の数も一日に対応する冒険者の数も違うから、全く同じ運用はできないからね」


今日のシエラの担当札の色は『赤』なので、依頼の受付・報告対応になるのだが、この報告対応の際、買取が発生する場合がしばしばあり、中央ギルドでは、赤札で買取が発生した場合は、受付者ではなく、その日の査定担当者にお願いする仕組みになっていた。


「モルトの場合は、報告と一緒に買取が発生する場合がほとんどだから、分ける方が面倒なんだけど、こっちの場合は買取素材と遭遇しない依頼も多いし、なにより、黄札(買取窓口)が別で設けられてるから」


状況によっては分業したほうが効率がいい場合も出てくるので、これはこれでありだな、とシエラは、こっちの受付課で仕事をしてみて感じていた。


「そう言えば、明日から暫く、解体業務の方になるんだったか?」


コーカスに聞かれて、うん、そうだよ、とシエラは頷いた。


「ふむ……ならば、暫く我等はエディの屋敷で大人しくしておくことにしよう」


確かに、解体場に来てもコーカス達ができることはない(正確には、解体はしてもらおうと思えばしてもらえるのだが、流石に従魔が解体した、なんて相手に知れたら、絶対に問題がない状態で解体がされていたとしても、文句を言われる可能性が非常に高いので、その選択肢はシエラにとっては『なし』であった)ので、留守番してもらうのは問題ないか、と思い、了解し、大人しくしててね、と合わせて釘を刺しておく。


「しかし、シャオは何故あんなに驚いていたんだ?」


コーカスに聞かれて、シエラはあぁ、と今朝のシャオとのやり取りを思い出して、思わず苦笑した。


「受付担当者で解体スキル保有してて、しかも3までいってるの、珍しいからだと思うよ」


今日で受付課の方の各業務が一通り終わったので、明日からの数日は、解体場の方で実務をする旨をシャオに伝えたところ、実務?と頭の周りに?を飛ばしていたので、解体ができるから、と伝えたところ、シャオの、普段は開いているのかがわからない細い瞳が、しっかりはっきりと見えるくらいに見開き、モルトでは受付でも解体作業を対応するのか?と驚かれたのだ。


「まぁ、解体に関しては、元々私は解体のスキル持ってたから、モルトでも解体に駆り出されたりしてただけだから、普通は受付担当者で解体することってないからね」


解体はそもそも、できるできない以前に苦手だという人が多い。ギルドで働きたいが、解体は無理なので受付が希望、という人も少なくない。

実際、シャオ本人も解体はするのも見るのも苦手の為、ギルドの採用試験は受付、事務のみで応募したのだと言っていた。


「常にどこのギルドでも人手不足だから、基本給は高めだし、スキル持ってたら、採用確率は結構高めなんだけど」


体力仕事で大変、しんどい、血が苦手、生き物を捌くのは怖い、臭い、汚い、etc...


「残念なことに、解体は人気がないんだよねー。慣れちゃえばなんの問題もないと思うんだけどなぁ。捌いたら捌いただけお給料に直結するし」


解体担当者の給与体系は少し特殊で、基本給の他に、解体手数料として、買取した素材で出た利益から少し、解体担当者に還元される仕組みになっている。


「解体が難しい素材だと、還元される割合が上がってくるのと、綺麗に解体して高額買取してもらえればもちろんその分も還元額が増えるし。さらに数こなせたら、そこそこ良い額になるんだよね」


基本給+歩合の為、残業手当が出ないが、その代わり、解体に使用する道具の購入費用の補助など、受付担当者とは給与形態が全く異なっている。


「まぁ、そうなんだけど、お金だけじゃどうにもならないことってあるからねぇ」


「うわぁ!!!」


急に背後から声がして、思わずシエラは叫んだ。


「あはは、ごめんごめん。解体の話してたから、つい、口を挟んじゃった」


そこには綺麗な赤髪のショートヘアの女性が立っていた。


「私は解体担当のサーシェ。あなた、モルトから研修に来てるシエラさん、でしょ?」


「あ、はい、そうです。初めまして」


シエラは慌てて頭を下げる。


「こちらこそ初めまして。よろしくね?」


にっこりと笑ってサーシェが手を差し出してきたので、シエラもその手を取って握手をする。


「明日からはこっちで一緒に解体作業するんでしょ?スキルレベルは今……」


「3になってます」


解体作業場に到着したところで、シエラは持っていた買取素材と引き換え確認用の依頼書の控えをサーシェに渡しながら答える。


「すごいね、あれ、元冒険者とかだっけ?」


解体レベルが3になれば、ある程度のランクの魔物まで問題なくさばくことができる、と言われている。


「いえ、ずっと受付やってました」


「え、それでそのレベルになってるの?どうやったらそんなことになるの?」


解体のレベルは、数をこなさないことには上がらないと言われているので、サーシェはシエラのレベルに少し驚く。


「いやぁ……解体も手伝うことがあるのと、この間かなりの数のマインアントの解体したので」


「あー、そう言えば、前にモルトでかなり大量にマインアントの素材、売りに出てたっけ。あれかぁ」


そう、それです、とシエラは少し顔を引きつらせつつも笑って答えた。

(そのマインアントの素材の解体が、私とサクラ達だけでされたものだってことは伏せておこう)


「それなら、明日からの解体は問題なさそうだね。あ、解体用の道具とかは流石に持ってないよね?」


聞かれてシエラは、はい、と頷く。


「うちの人間はほとんど自前のヤツ使ってるから、解体用の道具は明日こっちで用意しておくね」


「ありがとうございます」


サーシェは依頼書に素材解体の受け取りサインをする。


「それじゃ、対応よろしくお願いします。あと、明日からもよろしくお願いします」


シエラがぺこりと頭を下げると、サーシェはにっこりと笑って、よろしくね、と言って、自分の作業場所へと移動して行った。

いつもお読みいただきありがとうございます。

誤字脱字につきましても、適宜修正いたします。いつもご報告いただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
戦闘以外ポンコツの受付嬢がいればその逆もしかりやなぁ
スーパー受付嬢?器用貧乏ともいう?
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