本日はお休みです-1
いつもより少し早めに起床したシエラは、身軽な格好に着替えると、財布を片手に宿舎を出た。
まだ、空はうっすらと白んでいるくらいのこの時間帯だが、モルトの街で唯一この時間帯が一番活気づく、広場の朝市にやってきたシエラは、相変わらずの人の多さに圧倒されつつ、食料品がたくさん並んでいる一角へと足を進めた。
「コーカス様に何か食べるものを持って来いって言われたけど…昨日のあの様子だと、たぶん、そもそも、狩りを教えるためにターナー君たちを連れて行ってたってことだよね」
お肉関連については、軒先に並んでいるのはどれもすでに加工されたものばかりで、生きたままの状態で売られているものはまずない。
「…というか、肉でいいのか?肉で。いや、魔物や魔獣を狩って食べてるわけだし、肉食の分類ってことだよね?でも、あの見た目だと、どっちかって言うと、ミミズとか穀物とか食べそうなんだけど…森の中じゃそっちより魔物や魔獣の方が調達しやすいから、とかって可能性もあるよね?」
魔法を使う、凶悪な巨大鶏。正直なところ、それが一般的なコッカトリスに対する認識だ。
「どう頑張っても、あれに勝てる気は一切しないし、機嫌を損ねたら、私の人生がそこで終わりかねない。となると、ここで下手なものは選べない…!」
そうなると、この間ギルドに持ち込まれたジャイアントボアのお肉なんかは、候補として悪くないのだが、候補として悪くない、ということは、分類するなら美味しいものに入るわけで、そういったものはもちろん需要があるので、お値段としても、お手頃価格とはいかなくなってしまう。
「うぅ…正直、給料前だし、貯金は少しはしてるとはいえ、あんまり高額になるとちょっと厳しいし。ていうか、なんでコッカトリスのために私が自腹切って餌を買ってあげないといけないのよ…」
元をただせばターナー達のせいなのだが、さすがに、冒険者になってまだ間もない彼らに、君たちのせいだから、コッカトリスの餌代、出してくれる?といえるほど、シエラも鬼ではない。
「何か、大量に安くていいものがあるととっても助か、る…お?」
シエラは山積みなっているマイスが置いてある出店の前で足を止めた。
(…これ、悪くないかも?ちょいと『鑑定』)
「…すいませーん、このマイス、1本いくらですか?」
マイスの山で人がいるのかどうかが全く分からない状態だったので、とりあえず声をかけてみる。
「1本銅貨5枚だ。10本まとめて買ってくれるなら、銅貨45枚にまけてやる」
返事があったことに、少し驚くも、シエラはその内容に、ふむ、と思案した。
(今がちょうど旬の時期だし、値段も適正な感じ。鑑定の結果でも、おかしな結果は出てなかったし、悪くない。たぶん、まとめ買いすればまけてくれるって言ってる上に、この山積みのマイスの状態からいくと、たぶんこれ、売れ残って困ってる。なら、もうちょっとまとめて買えば、さらにまけてもらうこともできそうかな)
「もうちょっとまとめて買うなら、どう?」
シエラが聞くと、マイスの後ろから、ひょこっとおじさんが顔を出してきた。




