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新人冒険者‐10

無事にターナー達を保護して帰ってきたシエラは、ひとまず彼らを家まで送り届けた後、ギルドに戻り、ジェルマにさっきの出来事を報告した。


「というわけなので、明日、また森に行ってきます」


「そうか、明日、お前そういえばちょうど休みだったよな?なら、仕事のことは気にする必要もないし、しっかり頑張ってこい」


ジェルマの言葉に、シエラは思わず、え?と声を出した。


「いや、聞いてました?私、明日、森に行かないといけないんで、行ってくるんですが?」


シエラの言葉に、ジェルマは首を傾げた。


「あぁ、だから、明日、森に行くんだろ?明日はちょうど、お前休みだったから、仕事を誰かにお願いしていく必要がなくてよかったなって言ったんだが?」


「…あの、休日出勤手当は出ないんですか?」


シエラの言葉に、ジェルマは首をまた傾げる。


「森に行くのがなんで仕事なんだよ。コッカトリスと約束したのはお前で、そもそも、それはギルドの仕事じゃないだろ?」


ジェルマの言葉に、シエラは絶句する。


「いやいやいや、ちょっと待ってください。コッカトリスのもとに行ったのは、そもそも、冒険者の彼らを助けるためで」


「いやいや、お前こそ何言ってんの。冒険者は自己責任。何があっても自分で責任を取らなきゃダメだって、初心者講習でまず伝えてるだろ?その冒険者を助けに行ったのはお前の独断であって、ギルドの意思じゃない」


ジェルマの言うことは正しい。

彼らは、シエラが最初の講習で言った言葉を忘れ、慢心し、まだ、レベルに見合わない森に踏み込んだ結果、コッカトリスに攫われたのだ。


「だからって、あんな幼い子たちを見殺しにすればよかったって言うんですか!?」


「彼らは成人の儀を受けた、立派な成人だろ?第一、彼らが冒険者になりたてほやほやじゃなければ、それこそ、これがロイだったら。お前、助けに行ったか?」


「う…それは…」


「ほれみろ。今回お前が助けに行ったのは、あくまでもお前の独断。逆に言えば、幼い子だからという理由で助けに行ったお前の行動は、正直、彼らのためにはならない」


「でも!」


「最後まで聞け。今後、彼らが冒険者を続けていくつもりがあるのであれば、今回のことは、本当に運がよかったんだと、今後、いつも誰かが助けてくれるわけではない、ということをきっちりと教え込め。それができないなら、あいつらは確実に近いうちに死ぬ。その責任が取れないなら、冒険者ライセンスを取り上げることも視野に入れろ。わかったな?」


「…はい」


ジェルマ言っていることは間違っていない。

間違っていないが、納得ができるかといえば、それは素直に頷けない。


「以上のことから、明日、お前が森に行くことは仕事として認めることは、ギルドマスターとしてはできん。だが、お前が森に、私的に行くというのであれば、それについては止める権利はない。まぁ、助けに行くのを分かってて止めなかったんだ、ゲートくらいは貸してやる」


ジェルマの言葉に、がっくりとうなだれる。


「手えだしたなら、中途半端なことすんな。最後までちゃんとケツ持て。なんかあったら、骨は拾ってやる」


「わかりました…」


とりあえず、シエラは明日、森に向かうために、今日も残業して、残っている業務を何とかすべて終わらせてから、仕事を上がった。

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