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業務部 受付課 -2

「それではお気をつけて」


受付処理が終わり、シエラはにっこりと笑って、対応した冒険者をカウンター越しに見送る。


「ふぅ……あ、これで取り合えず、番号札の人分、終わったかな?」


側に置いてあった小型魔法板の数字が0になっていたのを確認したシエラは、大きく伸びをする。


「シエラさん、どう?特に問題はなさそう?」


「あ、シャオさん。はい、業務内容はモルトと同じなので、問題ないと思います。受付方法がちょっと違ってるので、そこだけ少し戸惑いましたけど、慣れるとこれ、便利ですね!」


シエラが目を輝かせながら言うと、シャオはそうでしょう?と少し得意げな表情を浮かべながら答えた。


「ミュシカさんが考えてくれた方法なんだけどね。やっぱり大型のギルドだと、この方法は効率的でいいと思うんだよね」


シャオの言葉に、シエラはうんうん、と頷いて賛同する。


「最初は正直、番号札で順番を明確にすることに何の意味があるんだろうって思ってたんです。来た順番に受付するなら、並んで待つのと大差ないんじゃないかなって。でも、番号札を持って、自分の順番が来るまでに、張り出されている依頼を確認したりとか、本来だと並んで待ってるだけの時間を有効に活用できるようになるし、何より、最初にギルドへ来た目的別に割り振って対応ができるっていうのは、時間短縮にすっごくつながってる気がします」


中央ギルドで使用されている番号札は赤、青、黄、緑(4つの色)があり、依頼の受付や報告関連は赤、依頼を出しに来た場合は青、素材の買取や解体関連は黄色、それ以外の場合は緑、といった具合で、それぞれ目的別で色が振り分けられているので、ギルドにやってきた人はまず最初に、自分の目的の色の番号札を取り、順番が呼ばれるのを待つ、という流れになっている。

同様に、ギルドの受付職員も、朝、始業前にそれぞれ、メイン担当が割り振られるので、基本的には、その日の受付内容は、同じ種類のものがメインになるので、ある程度必要になる書類関連をまとめることができ、また、同じ系統の仕事が主になるので、対応時間の短縮につながっていた。

もちろん、手が空いた際は、番号札の色に関係なく、待っている人たちを順番に対応するようにしているので、メイン担当がどの色になるかによって、個人にかかる負担が偏らないように考慮もされている。


この色別番号札を導入したことにより、例えば、講習の予約に来ただけなのに、依頼の受付待ちの人たちがたくさんいて、数分すぐに終わることなのに、何時間も待つ羽目になった、だとか、当日中に受付完了をしないといけない申請が、締め切り時間に間に合わなかった、等々、これまでギルドで受けてきたクレームが減ってきたことを受け、現在、中央ギルドでは、この受付方式が正式に採用されている、というわけだった。


「じゃ、モルトでもやってみたいって、ジェルマに言ってみたらいいんじゃねーか?」


「そうだね、いいかも!」


トーカスに言われて、シエラが目を輝かせながら言うと、うーん、とシャオは少し眉尻を下げながら言いにくいんだけど、と口を挟んだ。


「正直なところ、課題もまだまだ多いから、難しいかもしれないよ?」


シャオの言葉に、シエラは首を傾げる。


「課題、ですか?」


シエラが聞き返すと、シャオはうん、と頷いた。


「これをするとね、まず、自分の担当冒険者へのケアというか、気配りって言うのかな。それがちょっと難しくなってくるんだよ」


「あ、確かにそうかも…………」


言われて、シエラはそうか、と納得する。


モルトでは、基本的に担当冒険者は担当の受付嬢がいるカウンターへ並んでくるので、ちょっとした些細な変化に気付きやすかったりする。だが、中央ギルドのように、担当であるない関係なく対応することになると、自分が担当している冒険者のその変化に気付くのが遅くなる可能性が出てくる。


「それにね?ギルドによっては、いまだに担当冒険者の依頼達成率や、依頼処理件数を競ってるところもあるみたいだし、そう言うところでこの運用をしちゃうと……」


「足の引っ張り合いが起きちゃいそうですね……」


自分の冒険者にはやりやすくて簡単なものを、逆に自分が担当していない冒険者には面倒で大変なものを、なんてことを受付職員の一存でやりだしたら大変なことになるな、とシエラは顔をひきつらせた。


「まぁ、モルトの受付メンバーだったら、大丈夫なんじゃねーのか?」


トーカスに言われて、シエラもそう思う、と頷きはしたものの、うーん、と小さく唸った。


()()大丈夫でも、今のまま、今後もずっと変わらないってことはないだろうからなぁ……」


シエラが言うと、シャオはそれに、と続ける。


「小型魔法板複数個と番号札の準備、それと、それぞれを繋げる魔法の構築にかかる費用、このくらい掛かるらしくて……」


「…………!?!?そ、そんな予算、ないですよ……」


シャオがこそっと金額を伝えると、思わずシエラはひぇ!っと顔を青ざめさせる。


「予算問題はやっぱりどこも切実だよね」


苦笑するシャオに、シエラはがっくりと肩を落とした。


「そんなに難しいのか?」


トーカスが不思議そうに聞いてきたので、シエラは流石に魔物(トーカス)にはわからないよね、と思いながら頷いた。


「やりたいです!ってだけでお願いしてもどうにもならないくらいのお金がかかるっぽいから、難しいかなぁ。言ってみるのはタダだからいいけど、たぶん、ジェルマさんに鼻で笑われて終わりそう……」


はぁ、とため息をつくシエラに、トーカスがそれなら、と提案する。


「いきなり全部導入が難しいなら、一部からやってみればいいんじゃねーか?」


「「………どういうこと??」」


シャオとシエラが首を傾げながら聞く。


「要は、まずその分類分けすることが効果があるってことを数字で出せばいいんだろ?」


トーカスの言葉に、二人は顔を見合わせながら、そうだね、と頷く。


「でも、ここみたいに札とかの仕組みをいきなり導入は難しい。なら、まずは優先レーンみたいなのを作ればいいんだよ」


「「優先レーン??」」


さらに二人が首を傾げると、トーカスはカウンターの上に飛び乗って、話を続けた。


「モルトのギルドでは、特にここみたいに優先で受付するレーンってのが決まってないんだろ?だから、1つ、依頼関連以外の受付レーンってのを作っておくんだよ、お試しで例えば1週間だけ、とか。んで、そのレーンに人が並んだら、そっちを先に対応する受付嬢を、今日はシエラが、次の日はルーがって具合に決めておいて、持ち回りで対応していってみて、いつもと受付にかかる時間や、残業時間なんかがどう変化したかっていうのを調べるんだよ」


「「!?!?!?」」


トーカスの提案に驚く二人。その表情を見て、トーカスは得意げに両翼を腰(?)に当ててエッヘン!と咳払いして続ける。


「もしそれで効果が少しでも見えるようなら、お試し期間をもっと伸ばしてみて、やっぱりうまくいきそうってことなら仕組みの導入をジェルマに検討してもらえるだろうし、もしそこで効果が見えないなら、きっとモルトにはあってないってことだろうから、元に戻せばいいだけだし、シエラも、仕組みが導入できないことに対して、納得いくだろ?」


トーカスの言葉に、シエラとシャオは目を丸くする。


「…………いや、え?ほんとにトーカスが今喋ってたの?誰か、別の人がトーカスのふりしてたりする?」


シエラがトーカスを持ち上げて、後ろに人がいないかを確認すると、トーカスがケー!っと鳴いて怒る。


「すごく理にかなってて、いい案だと思うんだけど……まって、これをコッカトリスから提案されたとか、信じられない」


「失礼だな!」


思わずシャオが呟くとトーカスがまた、バタバタと暴れるので、思わずシエラが手を放すと、トーカスはシャオの足をゲシゲシと蹴り始めたので、ごめんなさいごめんなさい、とシャオは慌てて謝った。


「……日増しにトーカスがコッカトリス離れしていってる気がするんだけど。あれ、本当にコーカスの息子なの?」


ぼそっと傍にいたコーカスにシエラが聞くと、コーカスはそのはずだ、と頷いた。


「少なくとも、今までこんな風に育つ奴はいなかったんだが……シエラ達人間と一緒に暮らしているから、にしてはトーカスだけが妙に人臭くなっているし、考えられるのは産まれる前に卵が一度盗まれ」

「トーカスってほんとに天才だよね!すっごい!!その案、ぜひともモルトに帰ったらみんなに提案させてもらうよ!トーカスみたいな天才を生むなんて、ほんと、コーカスもすごいね!?」


地雷を踏みぬきかけている!と気づいたシエラは、慌ててトーカスとコーカスを持ち上げる。


「あ、受付に来た人がいるっぽいんで、業務に戻りますね。ほら、トーカスも落ち着いて座ってて!黄色の15番の方、どうぞー」


「おっと、ではまた、お昼のタイミングで声をかけに来ますね」


そう言って、シエラとシャオはそそくさと業務に戻っていった。

いつもお読みいただきありがとうございます。

誤字脱字につきましても、適宜修正いたします。いつもご報告いただきありがとうございます。

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