新人冒険者‐8
報酬を用意して、スミレに確認をしてもらい受領書にサインをもらったところで、そういえば、とスミレがシエラに話しかけてきた。
「今日、薬草の採取をしてたら、何人かの男の子が、森に入っていくのを見たんです」
スミレの言葉に、提出用書類をまとめていたシエラの手が止まった。
「…もしかして、スミレちゃんと同い年くらいだった?」
シエラの言葉に、たぶん、とこくんと頷くスミレ。
「同い年くらいなのに、もう森に入れるなんて、すごいなって思って。私もいつか、討伐依頼もこなせるようになれたらって思ってるから、少し羨ましくて」
「スミレちゃん、それ、見かけたのどのくらい前だった?」
「え?」
スミレの声を遮るように聞いてくるシエラに、少し驚いた顔をするスミレ。
「え、と。スズナ草を見つけて採取してる時だから…たぶん、1・2時間くらい前だったと」
「わかった、ありがとう!」
そういうと、シエラは席を立って、職員専用の更衣室へと走っていき、しまってあった作業着に急いで着替えた。
「あれ?シエラ、どうしたの?」
すれ違ったルーに聞かれて、外出するから、仕事、置いておいて、と伝えると、駆け足で2階へと続く階段を昇って行った。
「ギルドマスター、すみません。ちょっと緊急の要件なので、失礼します」
コンコン、とドアを叩くと、相手の返事を待たずに、ガチャッと扉を開け、シエラは中に入った。
「急に入られて困ることはないんだが、せめて返事くらいはまってくれよ」
ため息をつくジェルマに、シエラは緊急事態なので、とだけ答え、部屋にあるゲートに魔力を注ぐ。
「おいおい、どこ行くんだ?」
いきなりゲートを起動させるシエラに、ジェルマは思わず立ち上がる。
「…まだ、戻ってきていない子供の冒険者が5名いるんですが、森に入っていった、という情報を受けたんです」
シエラの言葉に、ジェルマは眉を顰める。
「とりあえず、一度森に行って確認をしてきます。申し訳ありませんが、ゲートを使用させていただきたいのですが、いいですか?」
ギルドから歩いて森まで行こうと思うと少なく見積もっても30分以上はかかってしまう。そうなると、日が完全に沈んでしまい、子供たちにも危険が及ぶ可能性が高くなってしまう。
「はぁ、お前、そういうのは起動させる前に言うもんだろうが。まぁいい。行ってこい」
ジェルマの言葉に、シエラは頭を下げた。
「行ってまいります」
シエラは白く光るゲートをくぐり、森に向かった。




