再会は突然に
今後の方針についてもある程度見えてきたということで、シエラ達もジェルマの持ってきた野菜や携帯食料などを食べて一息ついている時だった。急にコーカスが森の方を向いて小さく唸りだす。また、魔物の襲撃かと思い、ジェルマが武器を構え、シエラが慌てて索敵をかけた瞬間だった。
「ケェェェーーーーー!!!!」
思いきり雄叫びを上げるコーカス。思わずその声量に、人間トリオは耳を塞いだ。
「行け、トーカス」
「はぁ!!!」
コーカスの指示でトーカスが思いきり飛びあがると、そのままシエラが何かを感知したあたりへと急降下していった。
「ぎゃぁ!!」
すると、蛙がひき殺されたような小さな悲鳴のような声が聞こえてきた。そのままシンと何の音もしなくなったので、ジェルマはロウとシエラに待機を命じ、警戒したまま、トーカスの飛んでいった方へとそろそろと歩いて行く。
「……嘘だろ、おい」
構えていた武器を下げると、特大のため息をつきながら、何かを担いでシエラ達の元へと戻ってきた。
「「ば、バルディッドさん!?」」
街に強制連行されたはずの彼の姿に、シエラとロウは驚いて目を丸くする。コーカスは彼がきちんとのびている姿を見て、トーカスに、よくやった、と労いの言葉をかける。
「な、なんでここにいるの!?ていうか、どうやってここまで戻ってきたの!?」
「他の、他の冒険者の人たちは!?え?いや、まだだって、街に戻ってるところなはずですよね?しかも、別れた場所から移動した俺たちのところに、一体どうやって…?」
うろたえるシエラとロウに、ジェルマはどうするか少し悩んだ後、彼の頬をぺちぺちと叩いて起こす。
「ちょ、ジェルマさん、何を!?」
そんなことして起きてしまったら面倒なことになるじゃないかとシエラが慌てて止めようとしたが、すでに遅く、小さく唸った後、バルディッドは目を開けて、目の前にいるジェルマに驚いて小さく悲鳴を上げた。
「おい、人の顔見て悲鳴上げるとか、お前、失礼だろ」
「……すいません、目を覚まして最初に見る顔がジェルマさんみたいな凶あ…強面の顔だなんて、流石に私も予想できません。人間の生理現象だと思って、許してください」
今、絶対に凶悪面って最初に言おうとした、と、その場にいた全員が思ったが、あえてそこは口にしない。
「で?お前、なんでここにいるんだ?」
ジェルマに聞かれて、バルディッドはきょとんとした表情になる。
「なんでって……魔物の生態調査してるからに決まってるじゃないですか」
何を当たり前のことを、と肩を竦めながら答える彼に、ジェルマは少し頭痛を感じながら、そうじゃなくて、ともう一度聞き直した。
「お前、気を失ってるのを幸いと、冒険者たちに街に連れ戻されてる途中だったんだろ?なのに、なんでお前だけここにいるんだ?他の奴らは?」
事実ではあるものの、全くオブラートに包むことなく直球で聞くジェルマに、シエラとロウは思わずヒェッと小さく声を漏らす。
「他の?あぁ、一緒にいた冒険者たちのことですか?彼らには先に帰っていいと言って、私だけで戻ってきたんですよ」
「「いやいやいやいや!!」」
バルディッドの答えに、思わずシエラとロウが口を挟む。
「バルディッドさん、彼らの仕事は調査をメインで行うあなたの護衛も含まれてるんですよ!?その護衛対象をほったらかしにして、街に戻れるわけないじゃないですか」
「冒険者の人たちに止められませんでした!?」
言われてバルディッドはあぁ、と笑いながら答える。
「止められたとも。だが、止められたところで、止まる私ではない!」
ははは、と胸を張って答えるバルディッドに、シエラはうわぁ、と残念な人を見るような顔をし、ロウは思いきり天を仰いだ。
「おま…それ、絶対に護衛に出てたやつら、お前のこと必死で探してるだろ」
ジェルマに言われて、バルディッドは何故?と首を傾げた。
「私が先に戻っていいと言ったんだ。問題はないだろう?」
「あんた……それでもギルドの職員ですか!?」
「バルディッドさんがそれで良いと言っても、依頼の契約上、ダメなんですよ!それではいそうですか、わかりました。なんて戻りでもしようものなら、依頼失敗が彼らには待ってるんですよ!?」
シエラに言われて、きょとんとした顔をするバルディッド。
「そうなのか?ならば悪いことをしたな、ハハハ」
「信じられない……嘘でしょ、こんなのがギルドの職員だなんて」
「……研究職の職員なんて、こんなのが多いですよ」
愕然とするシエラに、ぼそりとロウが答える。その言葉に、シエラはさらに小さく悲鳴を上げた。
「……離れたところに、いくつか人の反応がある。こいつらの護衛の可能性が高そうだし、ここまで連れてきてやろうか?」
トーカスの言葉に、ジェルマが頼めるか?と聞くと、問題ない、と言って、サクラたちを連れてその場から消えた。
「あぁ!!コッカトリス達が!」
「そんなこと言ってる場合か!お前のせいだぞ、ちっとは反省しないか!このことは、お前のボスのジェシーにもきっちりと報告させてもらうからな!」
ジェシカの名前を出されて、思わずびくりと肩を震わせるバルディッド。
「そそ、それだけはご勘弁を!」
「なら、ここに護衛の奴らが来たらまずはきちんと謝れ!」
「わかりました!!」
ぴしりと背筋を伸ばして、敬礼をしながら答えるバルディッド。あれだけ何を言っても聞かなかった彼が、思わず言うことを聞くなんて、ジェシカさんは一体何者なんだろうか、とシエラがそんなことを思っていると、突然、空から何かがドサドサっと落ちてきた。
「な、何!?」
山積みになっている、空から降ってきたそれは、バルディッドを連れて街へ向かっていたはずの冒険者達だった。
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