新人冒険者-7
しばらくたったある日のこと。
「…遅いな」
ちらちらと時計を見ながら、戻ってきた冒険者の報告受付と、報酬の支払い業務をこなしながらつぶやく。
と同時に、協会の大きな鐘の音が響いた。
「あれ?今日はもうあの子たち来たっけ?」
報酬を支払い、サインをしてもらった受領書を机に片づけていると、隣にいたルーが声をかけてきた。
「…それが、まだ来てないんだよね」
ラージマウスの討伐に自信をつけた彼らは、それから毎日のようにラージマウスの討伐依頼を受けていた。ラージマウス自体、繁殖ペースがかなり早いため、数自体はかなり多いので、見つけられない、ということはないはずなのだが。
「いつも、鐘が鳴る前には討伐部位をもってきてるんだけど、今日はまだ戻ってきてないんだよね」
(なんだか、嫌な予感がする)
なんとなく不安になっていると、ギルドにラビット族の少女が現れた。
「あ、スミレちゃん。お帰り!」
スミレは冒険者になってもうすぐ1年になるが、人見知りな性格のせいか、他の人とパーティーを組むことができず、現在もソロで活動をしている。そのため、討伐依頼は自信がないということで、毎日街の傍の草原で薬草採取をしてくれている。
「シエラさん、ただいまです。これ、今日とってきた薬草です」
そういって、カウンターに薬草とスズナ草を置いた。
「今日は、ちょっとセリナズ草が見つけられなくて。その分、スズナ草がたくさん群生してる場所を見つけたから、一杯とってきました!」
数を数えてみると、薬草が10束に、スズナ草は25束もあった。
「すごいね!スミレちゃん!これなら、薬草が銅貨10枚に、スズナ草が銅貨50枚だから、合計で銅貨60枚になるよ!それに、今日はスズナ草の採取依頼が入ってたはずで、ええと、ちょっと待ってね、確かここに…あ、あったあった!うん、ちょうど20束の依頼だったから、そっちの達成報酬銅貨20枚と合わせれば、今日の報酬は銅貨80枚だよ!」
シエラの言葉に、スミレは大きく目を見開いた。
「え?私、依頼を受けてなかったけどいいの?」
スミレの言葉に、シエラはくすくすと笑う。
「採取依頼はね、討伐依頼と違って、事前の受付がなくても大丈夫なんだよ。だから、時々、討伐依頼に出かけたときに採取した薬草が、採取依頼が出てたりしたら、お小遣い稼ぎとして一緒に報告の時に受注処理と達成処理をしちゃったりすることが多いのよ」
シエラの言葉に、スミレは目をぱちぱちとさせた。
「今回は、タイミングよく、スズナ草の採取依頼が入ってて、まとまった数だったから達成処理できる他の冒険者がいなかったってことだけど、でも、良かったね、スミレちゃん!」
「はい!」
嬉しそうに笑うスミレに、シエラも嬉しくなり、つられて笑った。




