大質問こーなー
「龍種って、みんな人型になれるの?」
シエラは両手を組んで顎に当てながら、真剣な表情でフィーヴに聞いた。
「さぁ?」
返ってきたのはあっけらかんとした返事のみ。シエラはグッと喉を鳴らすと、ふぅと小さく息を吐いて、もう一度聞いた。
「フィーヴは、元から人型になれたの?」
シエラに聞かれて、フィーヴはうーん、と唸ると、ふるふると頭を横に振った。
「いや?元々、里で暮らしてた時は、人型になる必要なんてなかったし。人型になれるって気づいたのは、里を出て外をいろいろとウロチョロしてた時かな」
里を出た後、人里に降りたこともあったらしいのだが、初めて人里に下りた時に、龍の姿だった為、人から思いきり攻撃を受けたらしく、その時は返り討ちにしたものの、いちいち攻撃をされるのも面倒だ、と思い、人型になれないかと色々試行錯誤していると、ある日、人になることができた、ということだった。
「そ、そんな軽い感じなんだ……」
想像以上に軽い感じで人になれたことに、シエラは少し動揺しつつ、次の質問を投げかけてみた。
「フィーヴは里の仲間のところに戻りたいとか、思わないの?」
わざわざ人里で暮らしたい、なんて言うのは、仲間がいないから。ということなのであれば、もしかして、仲間が見つかれば、里に戻ってくれるんじゃないのか?なんてことを思ったから聞いてみたのだが。
「えぇ?あんなつまんないところに戻ってどうすんのさ」
「…………え?」
思わぬ回答に、シエラは一瞬、フィーヴの言葉の意味が理解できなかった。
「だってさぁ、里の中で何年も見知った顔とだけ生活しててもつまんないじゃん?刺激も何も無いし、代り映えもしないし。でも、里の外にはきっと、もっとこう、なんていうか、俺の知らないドキドキわくわく、ハラハラどっかーん!みたいな?なんかこう、面白いことがいっぱいあると思ったんだよねー」
「はぁ……」
フィーヴに言われたことの半分も全く理解ができず、シエラはただ、呆けたような返事をするしかできなかった。
「でもよー、お前が思うようなそういう面白いことなんて、なかっただろ?」
トーカスに言われて、フィーヴはギラりと目を光らせ、大きく頷いた。
「そう!そうなんだよー!」
フィーヴはずいずいっとトーカスの方へと近寄っていくと、彼の両翼をガシッと掴んで熱弁し始める。
「最初に降りた人里ではいきなり攻撃されるし、ちょっとイラッときて反撃したら、あっさり死んじゃってさぁ?こんなに脆いの⁉︎とか思ったけど、話は全く聞かないし、しかも問答無用で攻撃はしてくるし。いくら効かなくても、ちょろちょろ攻撃されるとそれはそれで目障りだし」
人からしてみたら、竜種が出るだけでも脅威なのに、龍種の方が現れた、なんて事になったら、災害レベルである。
「まぁ、話ができないのはとにかく困ると思って、何とか人型になれたと思ったら、今度は人同士で争いが始まっちゃったんだよなー」
「まさかの戦争⁉︎」
シエラが驚くと、フィーヴはケラケラと笑いながら話を続ける。
「いやぁ、面白いかと思って参戦してみたけど、俺が何発か魔法撃ち込んだらあっさりどっちも全滅しちゃってたし。あれは戦争とか、そんな大層なもんじゃないとおもうけど。あっさりやられてたし」
龍の魔法なんて、人にどうこうできるわけないじゃない、と、シエラは彼の言葉に絶句する。
「でもまぁ、なんかそのあと暫くして、食べ物やら祭りやら、面白いことも時々し始めたからさ、そう言うのを見かけたら参加したりしてたけど、お金っていうんだっけ?何をするにしてもあれが必要になるじゃん?で、綺麗な石ころや金ピカで出来たものがそれの代わりになるってわかったから、色々適当に見かけた迷宮でそれとか手に入れたりしたら、今度はそれを奪いに来る奴らとかも出てきたりするしで、全然うまくいかなかったんだよー」
「苦労してたんだなー、お前も」
「「いやいやいやいや!」」
フィーヴの言葉に、そうかそうか、と相槌を打ちながらポンポンと肩を叩くトーカスに、その一言で済ませられる内容ではないだろう、と思わずシエラとロウが口をはさんだ。
「ちょっと待って、龍の目撃情報なんてここ数百年で文献には何も残ってないぞ!?」
「ていうか、龍が出てきて人側全滅って、まるで建国のお伽噺じゃない!」
思わず口をついて出た一言だったが、シエラとロウははっとする。
「……いやいやいやいや」
「まさか、そんな……いや、ないない。もう千年以上昔の、しかもお伽噺…」
二人はめをキョロキョロさせながら、お互いにまるで言い聞かせるように呟き合う。
「なぁ、その人化って、俺も出来るか?」
トーカスがそんな二人をよそに、目を輝かせながら聞くと、フィーヴはできるんじゃね?と答えた。
「んー、俺は、ちゃんと人の形のイメージができるようになった時、自然とできたから、絶対とは言えないけど。でも、人化は龍種の固有スキルじゃないし、可能性はあると思うな」
「マジか!」
目をさらに輝かせてトーカスが声を上げたところで、コーカスが「お?」と声を上げて頭を上げたので、全員の視線がコーカスに向いた。
「サクラがジェルマを連れて、こっちに向かい始めたようだ」
サクラの気配が人と一緒に猛スピードでこちらに向かい始めたのに気づき、シエラに報告する。
「やっと、ジェルマさんも、コッカトリス急行の餌食になったのね……‼︎」
嬉しそうな顔をするシエラに、ロウは若干頬をひくつかせながらも、これは、触れてはいけないやつだ、と、ふふふ、と笑みを浮かべるシエラから、そっと視線を逸らした。
「とりあえず、フィーヴが出来ることとか、使える魔法を教えてもらってもいいか?」
ロウは、若干意識の飛んだシエラを放置して、ジェルマ達が到着するまで、フィーヴの事をさらに色々と聞いたのだった。




