食糧問題は何よりも重要です
最終保存に失敗していました。。
すみません!汗
「重大なお知らせがあります」
シエラは真剣な表情で、集めたコーカス達に言う。
「どうしたんだよ?俺たち集めて急に。野宿の事なら聞こえてたぞ?」
トーカスが言うと、コーカスが隣でこくりと頷く。
「その野宿なんだけど。ちょっと想定外の状況になってて」
物凄く言いづらそうにしながら、シエラがモジモジしていると、コーカスが、はっきり言え、とせっついた。
「野宿する可能性については、想定してたんだけど、もともと先に出ていた人たちに合流するって予定だったから、私はあんまり用意をしてなかったのよ」
そう。シエラの予定では、サクッと合流し、竜種の痕跡とやらの詳細を確認したあとは、コーカス達にササッも探してもらって、事実確認を終えたらサッサと帰るつもりだった。
「うん?それで?」
何が問題なんだ?と不思議そうに首を傾げるトーカスに、シエラは意を決して、問題を告げる。
「ジェルマさんが合流するまでに、確実にコーカス達のご飯が底を尽きます」
「な、なんだと!?」
「おい、シエラ!?どういう事だよ!」
「いや、本当に申し訳ない…私の考えが甘かった」
調査員を半分でも残していたなら、シエラ達だけで、先に街の近くまで戻って、ジェルマと合流する、という手があった。
逆に、ロウも含めた全員を帰していたなら、後でめちゃくちゃ怒られただろうが、残って戻ってくるのを待たないといけないとは思わなかった(実際、帰ろうとしていたし)と、戻る事ができた。
そう。
「ロウさんは、非戦闘員です。魔物が比較的まだ弱い場所とはいえ、彼一人をここに放置する事はできないし、かと言って、彼の口から、残って調査を続けておかないといけない、という事実を聞いてしまった以上、街に一緒に戻る事はできないのよ」
一日二日分なら、常に持っているマジックバックに入れている。だが、さっき、彼らのご機嫌を取るのに、貴重なそれらをそこそこ使ってしまったので、残りは精々、明日の朝分あるかな?といった程度になっている。
「なら、サクラでも護衛につけといてやったら良いじゃねえか。仕事でシエラの側を離れる事もちょいちょいあるだろ?」
トーカスに言われて、シエラは小さくため息をついた。
「いつもやってもらってるあれは、全部申請通してるからできるの」
「今回はやってないってことなら、別に後からでも」
「事後は死ぬほど怒られるし、手続きも面倒だし、最悪、減給につながるからダメ!」
ギロリと睨みつけるシエラに、トーカスは小さく悲鳴をあげた。
「それに、私だけじゃなくて、この場合、ロウさんにも迷惑かかる可能性が高いのよ」
実際問題、従魔の貸借りについて、一般人ならまだ、知識がないからと、手続きなしでも、借受けていた側は口頭注意程度で済む事がほとんどだ。
だが、それが冒険者や商人になると、最初の講習なんかで勉強するはずなので、知りませんでした、はほぼ通用しないし、ましてや、ギルド職員がそんな事を言おうものなら、強制講習と無能の烙印が、確実に待っている。
「流石に、ロウさんの今後にも関わってくる話になっちゃうから、その選択肢は取れない」
「えぇぇ……マジかよー……」
トーカスの言葉に、シエラはどうしたものかと小さく唸る。
「シエラよ、どこまでなら大丈夫なんだ?」
急にコーカスに聞かれて、シエラは首を傾げる。
「どこまで??とは??」
「そうだ。どこまでなら、離れて大丈夫なんだ?」
コーカスの言葉に、シエラはなるほど、と目を輝かせる。
「コーカス、ナイス!頭いい!!」
シエラ達のやり取りの内容についていけないロウが、隣でずっと困惑した表情を浮かべていたので、シエラはコホン、と咳払いをして、ロウに話しかけた。
「ロウさん、ギルドの規定では、従魔とその主は一緒に行動をすることが義務付けられていますが、状況によっては、離れることもありますよね?私の解釈としては、一緒に行動をする、つまり、お互いの状況がわかる範囲であれば、一緒に行動をしている、とみなす認識なのですが、これはロウさんとしても認識は一緒でしょうか?」
ロウは聞かれて、少し考えた後、そうですね、同じです、と頷いた。
「と、言うことは!」
目を輝かせたシエラは両手をパン、と叩く。それと同時に、そうか!とトーカスも頷いた。
「サクラを護衛に残しても、認識できる範囲なら街に近づけるってことだな!?」
「サクラにジェルマさんを迎えに行かせて、速攻で連れてくることができる!!」
トーカスとシエラは同時に叫んだが、内容が全く違ったため、その場にいた全員が、頭にはてなマークを飛ばした。
「……うん?サクラを護衛で残して、俺たちが街に近づく方が、街にもすぐに戻れるじゃないか
」
その言葉に、シエラはいやいや、と首を横に振った。
「近づいたところで、結局、サクラの代わりに誰かが戻ってこなければ、私たちだってそれ以上は街に戻れないよ?だったら、ジェルマさんをさっさとここまで連れてきて、そのまま交代してもらったら、すぐに街に帰れるじゃない。それに、そもそも、ロウさんはサクラと今日初めて顔を合わせたばっかりなんだよ?しかも、最悪の顔合わせ。そんな状況で、サクラと二人きりにするのは流石にちょっと、躊躇うわ」
シエラに言われて、トーカスは確かに、と視線を少し逸らしながら答えた。
「ね?正直なところ、ここからだったら、気配察知だけに集中すれば、結構門の側くらいまで、追えると思うんだよね。なら、ジェルマさんを攫…連れて、急いでこっちに来てもらった方が、やっぱりいいと思うんだ」
「え!?」
シエラの言葉に、ロウが思わず驚く。
「?どうかしましたか?」
きょとんとした顔でどうかしたのかと聞いてくるシエラに、ロウは若干顔を引きつらせながらも、何でもない、と顔をフルフルと横に振った。
「…まぁ、とりあえず、そう言うことで、んー、サクラ、ジェルマさんのお迎えに行ってもらってもいいかな?」
シエラが言うと、サクラは小さく頭を下げて姿を消した。
「あ!できるだけ最速で連れてきてね!!」
サクラに果たして聞こえたかどうかはわからなかったが、シエラは遠ざかっていく気配に向かって大きく叫んだ。
「本当にすまない、私が一緒に残ったばっかりに」
なんとなくシエラの考えていたことが読めたロウは、申し訳ない、と頭を下げると、シエラは気にしないでください、と笑った。
「いくらギルド職員で滅多に現場に出ることがないとはいえ、もう少し、こういった場合も考えて身を守れる程度には力をつけておくべきだったよ」
項垂れるロウに、シエラは苦笑いする。
「いやー…そこは適材適所でいいんじゃないですか?そもそも、私がコッカトリス達をテイムしたのだって、ほんとにただの偶然ですし。そうじゃなきゃ、私一人でロウさんの護衛までは流石に無理ですよ」
一人なら何とかできても、流石に誰かを守りながら、と言うのは自分でも無理だわ、とシエラは頷きながら答えた。
「それに……ようやく、これでジェルマさんにもコッカトリス急行の恐怖を体験してもらうことができますから、いい機会だったんです」
「………もしかして、そっちが本音?」
「そんなことはないですよぅ?おっと、ジェルマさんが来るまで、とりあえず休憩でもしてましょう。フィーヴのことも、もうちょっと色々と聞いておいた方がいいと思いますし」
ニヤニヤと悪い笑顔を浮かべながら、シエラがのんびりと休憩の準備を始めたので、ロウはこれ以上は聞かないでおこう、と、口を閉ざすことにしたのだった。
すみません、まさかの最後の保存がきちんとできていないままになっていたようでした。
気を付けます><;




