やっぱり基本は報連相ですね
更新遅くなってすいません!!
「とりあえず、今後のことなんですが。どうしたらいいと思いますか?」
「……それ、俺に聞く?」
とりあえず、シエラを落ち着かせるためと、飲み物を手渡していたロウは、その動きを止めて、顔を引きつらせながら答えた。
「だって、こんな荒唐無稽な話、誰が信じてくれるって言うんですか!」
竜種の痕跡を見つけたと言われて派遣されて行ってみたら、居たのは龍種で、しかも、人の姿になれて人語も操れる知能を持ち、シエラの従魔になって街で生活することを希望していて、山から下りてきていた。
「……まぁ、誰も信じないよなぁ、流石に」
ロウはシエラの言葉にため息交じりに答えた。
「しかも、すでにテイム済みなんだろう?」
「言わないでください」
シエラは両手で顔を覆う。
「正直なところ、自分の意思でテイムしたのはプルプルだけなんです。ぶっちゃけ、冒険者でもない私にとっては、今のこの状況は過剰戦力なんで、これ以上は困るんです」
シエラの言葉に、ロウは確かにな、と頷いた。
もしこれが、シエラが冒険者だったら。
泣いて喜ぶ状況だっただろうに、とロウは思った。
まだフィーヴの実力を見たわけではないから何とも言えないが、相手は龍種だ。
コッカトリス複数羽にシルバーウルフ(とシエラとジェルマ以外は思っている)。それだけでも、ソロでBランク認定が受けられるくらいの戦力は十分にあるのに、そこへドラゴンなんて追加したら、Aランク、下手したらSランク認定もありえる戦力だと、周囲は思うだろう。
「……もういっそ、冒険者にでも転職したらいいんじゃないか?」
ロウが諦めたように言うと、シエラは信じられないとでもいう目をして、彼を見た。
「本気で言ってます!?私がこの世でなりたくないランキング上位の職業ですよ!?」
「貴女の仕事、その冒険者が相手ですよね!?」
シエラの言葉に、今度はロウが信じられない、という表情を浮かべた。
「相手が冒険者なのは別にいいんですよ、私がやるわけじゃないですから。というか、寧ろ、私は絶対に嫌なので、冒険者の方達には頑張って頂きたいと思いますし、尊敬もしてますから。そもそも、私がギルドで働いてるのは、安定収入が見込めるからです。地元はかなりの田舎で、選択肢なんてほぼ存在してなかったですから…。うち、妹と弟がいたので、なるべく安定した職業につきたかったって言うのもあって。なんで、まぁ、ギルドに就職するっていう選択肢しかそもそもなかった感じですね」
「でも、入るのは簡単ではなかっただろう?」
ギルド職員と言うのは、収入が安定していて、そこまで危険の伴う仕事もない(と思われている)ので、就職を希望する人間は少なくない。
特に、ロウが所属している中央ギルドなんかは最難関と言われるほどで、希望してもなかなか採用されない、と言うのが、現状だ。
「さっきも言いましたけど、私、採用は地元の田舎なので」
そう。採用されるのが難しい、というのは、あくまでも都会や中心部に限った話で、田舎の方は、割と簡単に採用される。
他の職や、都会に出るための資金が集まるまでなどの、足かけで短期間で辞めていく人も多いため、人の入れ替えは激しい。
「基本的には田舎のギルドから他所に異動はほぼ無いんで、私も元々、地元でそのままずっといるつもりでしたけど。モルトで大規模な改変があったせいで、今はモルトで勤めてるってだけですから」
なので、貴方のように最初から中央ギルド所属の職員とは違うんですよ、と、ケラケラと笑いながら答えると、ロウは呆気に取られた様子で、目をパチクリとさせていた。
「まぁとりあえず、それならジェルマにでも相談してみたら良いんじゃねえか?ほれ、社会人の基本は報告、連絡、相談、だろ?」
「そっか、確かにそうだね!連絡してみる!」
トーカスに言われて、シエラがいそいそと通信魔石を取り出していると、ロウが物凄く変な表情を浮かべていたので、どうかしたか?と、トーカスが彼に話かけると、少し悩む素振りを見せた後、遠慮がちに口を開いて、ある疑問を投げかけた。
「いや、気を悪くしないでほしいんだが、その、妙に人間くさい感じだなと、思ったというか……」
ロウに言われて、トーカスは首を傾げる。
「そうか?まぁ、話の相手がそもそも人間なんだから、そう感じただけじゃねーか?」
「はは……そ、そうかもしれない、です」
魔物が社会人の基本なんて普通知らないし、言わないんじゃねーか?と、脳裏を過ったが、ロウはすぐに、これは深く考えたらダメなやつだな、と判断し、その疑問は闇の彼方に葬り去ることに決めた。
「あ、ジェルマさん。シエラです」
『あぁ。シエラか。どうした、また従魔でも増えたか?』
丁度、通信が繋がったようで、シエラが声をかけると、少しだけ冗談めかしたジェルマの声が返ってきた。
「え、なんでわかったんですか!?」
『おい、ちょっと待て』
何かで見ているのか!?と、シエラがキョロキョロしながら驚いた声を上げると、通信魔石からトーンダウンしたジェルマのドスの効いた声が聞こえてきた。
『わかったってなんだ。まさか、本当に増えたのか!?』
どうやらジェルマの他にも人がいるようで、後ろで何やら、ザワザワと小さな声がしている。
「実はちょっと、その件込みで対応方法をご相談したくて連絡したんですが、今、お話できますか?」
人がいることに気づいたシエラは、本題に入る前に、喋っても大丈夫な状況かを聞く。
(今は誰がギルドにいるかわかんないし、下手にこの事が広まったら絶対に嫌だし!)
『―――あぁ、大丈夫だ。問題ない』
ジェルマの後ろでしていた声が聞こえなくなったので、移動したか、出ていってもらったのだろうと判断し、シエラは実は、と話を切り出した。
「龍種に会ったところ、コーカスの仲間になって、街で暮らしたいそうなんですが、どうしたらいいですか?」
『……………………は?』
長い沈黙のあと、何言ってんだコイツ、と言わんばかりの反応が返ってきた。
「えーっと……名前はフィーヴって言うんですが」
『いや、名前とか聞いてねー』
「あー、えっと、意思の疎通は問題なくできて、こちらに対して、敵意は無いようです」
シエラが言うと、通信魔石から、特大のため息が聞こえてきた。その後ろでは何か小さく笑い声が聞こえてきた気がしたが、それはジェルマの声でかき消された。
『竜種はほんとにいたってことでまず間違いないか?』
「はい、いました。嘘だと思いたかったですけど……」
物凄く嫌そうに答えるシエラに、ジェルマはまた、ため息をついた。
『しょうがない。そっちにとりあえず行くから、今日はそこで野営してくれ』
「えぇ!?街に戻ったらダメなんですか!?」
シエラが思いきり嫌そうに言うと、当たり前だろうが!とジェルマが叫んだ。
『竜種なんてもん、街に連れ込んだらモルト中が混乱するだろうが!』
「いや、でも」
『でももくそもあるか!そっちに急ぎで行ってやるから、ちょっと待ってろ』
ジェルマがそう言い終えると、そのまま通信魔石は反応を失った
「え!?ちょ、ジェルマさん?ジェルマさん!?」
「……今日はここで野宿か」
トーカスの言葉に、シエラは特大のため息をつきながら思いきり嫌そうな顔をした。
「せっかく街に戻れたと思ったのにすぐに森に戻されて。また野宿って、嫌がらせ以外の何物でもないよ」
項垂れるシエラに、ロウはまぁまぁ、と肩をポンと叩いてなだめる。
「どっちにしろ、調査もしなくちゃいけないわけだし、気を取り直して」
ロウの言葉に、シエラはきょとんとした表情を浮かべる。
「……調査って、なんのですか?」
そもそも、シエラは竜種がいた際に、対話を試みるための要員として呼び出されただけなのだ。調査については、中央ギルドの管轄に移ったのだから、もうしなくていいはずだ。そう思っていたのだが。
「え?もちろん、この周辺のだよ?だって、他の調査員たちがいったん街に戻ってるってことは、俺たちが交代要員として、戻ってくるまでの間は調査を進めないとだめじゃないか」
今度はロウが、何を言っているんだ?という顔で答える。
「うそ……だって、竜種の件は片付いたのに……」
シエラの呟きを聞いて、ロウはシエラの思っていたことを察して、憐みの表情を浮かべた。
「えぇと、俺以外のメンバーが街に戻ってしまってて、その上、君たちまで街に戻ってしまったら、流石に俺、みんなが戻ってくるまで、一人でこの森でやっていける自信はないんだよね」
「しまったぁー!!!!」
せめて冒険者数名くらい、残ってもらうべきだった、とシエラは頭を抱えて叫んだ。




