冷静になって考えると、後悔してしまう行動ってよくあるよね?ってお話で。
今回は同行者のロウ視点のお話。
モルト第4ギルドの職員であるバルディッドさんが無事に見つかり、手助けに来てくれた第1ギルド職員の従魔の希望もあって、彼を連れて、一度、街へ全員で戻ることになった。
彼女が従えているコッカトリスの実力は十分に理解ができていたし、しかもそれを二羽も従えていることを考慮すれば、調査団員から護衛を残さなくても問題はないことは十分に理解できたので、彼女の厚意に甘えて、いったん、街へ戻って体制を整えて戻ってくる、という意見に反対する者は誰もいなかった。
だが、中央ギルドから派遣されてきている身としては、調査は我々主導の下で現在行っている、ということを考えると、はい、わかりました、と戻るわけにはいかない、と思い、シエラ嬢へ同行したい旨を伝えた。彼女はもちろん、快諾してくれ、現在に至るのだが。
「ロウさん?ロウさん?大丈夫ですか??」
「ハッ!?」
「大丈夫ですか?着きましたよ?」
自分とシエラ嬢だけであれば、コッカトリスの背に乗って移動する方が早い、と、トーカス殿が言い出したので、初めての経験に、少し、ドキドキしながらも、背中に乗せてもらった、ところまでは覚えているのだが。
どうやら気を失っていたようで、シエラ嬢に体を揺すられて、意識を取り戻した俺は、大丈夫、と、答えたが、若干、裏返ってしまった。何とか平静を装ってはみたが。シエラ嬢の方をちらりと見て、顔がどんどん熱くなるのを感じた。
……その気持ち、わかります、と顔に書いてあるわ……
「ここにいるのですか?」
先遣隊が街に帰っていったあと、彼女の従魔であるコッカトリスのトーカスから、すぐに竜種に会えると言われ、私たちはすぐにその場へと向かった。
が、場所が少し離れているとかで、自分たちの背中に乗っていった方が早いからと、彼の背に乗ったところで、俺の記憶は止まっており、正直、この場所がどこなのか、正確な位置はわかっていなかった。
「あぁ、もうそろそろで…お、サクラ、ここだ」
トーカスがピュイっと器用に口笛を鳴らすと、ガサガサと森の奥から1匹の鶏と、長い髪をした、可愛らしい男の子が姿を現した。
「サクラ!?ちょ、その子はどうしたの!?」
どうやら、男の子はサクラ、という名のようで、シエラ嬢の知り合いのようだった。勝手に鶏を拾ってきたからか、少し驚いた様子で彼らに近づい………ん?
ちょっと待て、鶏に話しかけてないか?あれ……
目の前で自分を置いてどんどんとやり取りが繰り広げられていくのだが、全くもって理解が追い付かない。
うん、まずは一旦、落ち着こうぜ、俺。
自分の中にある「常識」という概念はここではいったん、追いやっておくことにする。
……でないと、理解ができん!!
シエラ嬢が声をかけたのは、あの少年にではなく、鶏の方だったようだ。もうすでに、その時点で大丈夫なのか、と思ったが、それもつかの間。鶏だと思ってたが、あれ、喋ってるし、トーカス殿も、知ってるとなると、まさかと思うが、あれも、コッカトリスだったりするんだろうか?
というか、たぶんコッカトリスなんだろうな…
でないと喋ってる説明がつかん。他に鶏みたいな魔獣は見たことも聞いたことも無いしな。
ともかく、喋る鶏だとして、そうなるとあの子供は迷子か何か、ということだと思ったし―――あぁ、シエラ嬢が聞いてる、ん、だが…
名前はフィーヴというらしいが、どうも話の内容がおかしくないか?
ブルーバードから話を聞いたってどういうことだ?しかも、コッカトリスの仲間??
……なんとなく、だが、あれ、もしかして……
まさか、と思いながらも、そう考えるといろいろと辻褄があっちゃうんじゃないか?なんてことを思っていたら、シエラ嬢の顔色がどんどん悪くなっていくのが分かった。
助け船でも出してあげられるならよかったんだが、正直なところ、出せる船は一隻もなかったようで、俺は見守ることしかできなかった。
というか、俺、あの会話に入っていける自信全くないわ。
そもそも、何言うんだよ。地雷しかねーし。
はぁ……なんでついてきちゃったんだろうなー、俺。
中央ギルド職員としての矜持が、なんて思ってたけど、今なら確実に言える。
あの時みんなと一緒に帰ればよかったって。
………うん。マジで思うわ。
いや、だってさ、よく考えてみたら、俺、戦闘能力はないし、シエラ嬢みたいに強い従魔を従えてるわけでもないし。というか、よくよく考えたら、ただのお荷物じゃね?よく同行することを許してくれたよな、シエラ嬢。逆の立場だったら絶対、帰らせてるわ……。
彼女が快諾してくれた時は、俺にもきっと何かできることが、なんて思ったりもしてたけど、この状況で一体何ができるんだっつー話だし。
なんてことを思っている時だった。
「龍のやつらはいちいちそんなことを気にする種族ではない」
コーカス殿の一言に、その場がシン、と静まった(気がした)。
…あ、シエラ嬢の顔に、聞きたくないって書いてあるのがわかる気がするぞ。
どうすることもできずにただ突っ立っている俺をよそに、
「どうかしたの?」
フィーヴがそう言って、シエラ嬢の顔を覗き込んだ。
―――あ、いかん。これは。
「り、りゅうって……?」
ギギギギ、とまるでさびた鉄のおもちゃが音を立てながら動こうとしているような感じで、シエラ嬢が顔を動かして、フィーヴの方を向くと、彼はにっこりと笑った。
「そうだよ?」
シエラ嬢がその場に崩れ落ちたので、俺は慌てて、彼女の元へと駆け寄った。
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