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共有が漏れただけなのに

急な辞令を受けて、再び調査地へと赴いたシエラ達。

出発時に、魔物だからなのか、鳥頭だからなのか、どちらが原因かは定かではないが、前回のことをすっかりと忘れた様子で、シエラを乗せて走りだそうとしたトーカスが、シエラに「毟るわよ」と呟かれて、ひぃ!っと悲鳴を上げたりしていたが、特にトラブルもなく、心身ともに順調に移動ができていた。


だが。


「ワン!!」


調査団員たちの元に、あと少しで到着する、という距離まで来たところで、急にポチが立ち止まって叫んだ。


「アースウォール!」

「ロックバレット!」

「きゃぁ!」


次の瞬間、コーカスが魔法で地面をメリメリと隆起させて盾を作り出し、飛んできた何かを、トーカスがすべて撃ち落とした。


(ま、魔法攻撃!?)


「シエラ、大丈夫か!?」


トーカスはコーカスが出した盾の後ろで立ち止まり、背中に乗せていたシエラに声をかける。


「ゴホゴホ……だ、大丈夫…」


立ち込める土埃に、思わず咽るシエラ。


「次が来るぞ!避けろ!」

「シエラ、しっかり捕まってろ!」

「うわぁぁぁぁ!!」


コーカスとトーカスが立っていた場所に、ドドド、と無数の氷の塊が突き刺さる。

あと少しでも、避けるのが遅ければ、あの氷の塊が自分に刺さっていたかもと思うと、シエラは必死でトーカスにしがみついた。


「ケケ―!!!!!」


魔法が飛んできた方向へ、コーカスが思いきり叫んだ。


「うっ!!」


小さな呻き声が遠くで聞こえる。

一体何があったのかとコーカスの方を見てみると、トサカがまるで熱した鉄のように真っ赤になっており、しゅぅぅと音を立てながら煙を出していた。


「こ、コーカス?」


シエラが声をかけるも、コーカスは完全に聞こえていないのか、そのまま地面を蹴って声のした方へと走り出した。


(あ、なんか嫌な予感がする……!)


「トーカス!コーカスを追って!早く!」

「わかった!」

「んぐっ!」


自分でお願いしたことなのに、急な出発に首が変な方向へ曲がりかけて、思わず変な声が出るシエラ。トーカスに振り落とされないようにとぎゅっとしがみつけていたのは、奇跡だったな、後で振り返って彼女は思っただろう。


「コーカス、お座り!!」

「ぐぉ!!」


コーカスの前に人影が見えたシエラは咄嗟に叫んだ。


「シエラ!貴様、何をする!」


コーカスが思いきりシエラの方を睨みつけてきたので、シエラは一瞬怯むも、ちょっと落ち着いて、と彼をなだめつつ、コーカスの前にいた人の方へと視線を移す。

魔法使いと思われる女性は白目をむいて倒れており、意識はなく、前衛職と思われる男性は、ゲホゲホとせき込みながら、喉をさすっており、明らかに場違いな、冒険者とは思えない風貌の細身の男性は、腰を抜かしているのか、地面にへたり込んで目に涙を浮かべていた。


「先に攻撃を仕掛けてきたのはこ奴らだぞ!」


怒りが収まらない、といった風のコーカスに、ちょっと待って、とシエラはぴしゃりと言って聞かせると、トーカスからおりて、三人に近づいた。


「あの……」


「ひぃ!」


シエラが声をかけると、腰を抜かしていた男性は小さく悲鳴を上げた。

せき込んでいた男性が、ふらふらになりながらも、シエラから男性を庇う様に間に割って入ってくる。


「…もしかして、調査団の方ですか?」


「………あぁ、そうだ」


シエラの問いに、男性は少しだけ戸惑いを見せつつも、肯定した。


「あの…私たち、モルト第一ギルドから派遣されてきたものなんですが」


「え!?」

「なに!?!?」


男性たちが目を丸くし、驚く。


「あの、そちらに連絡って、入ってます、よね…?」


まさか、連絡がされていないのか?と、恐る恐るシエラが聞くと、二人は顔を見合わせる。


「…名前を聞いても?」


「はい、モルト第一ギルド所属職員のシエラと言います」


少し落ち着きを取り戻してきたのか、へたり込んでいた男性が、立ち上がりながら聞いてきたので、シエラが答えると、はぁ、と大きく息を吐いてまた、座り込んだ。


「バーチさん、この方が、少し前に派遣されると連絡があった、モルトの受付嬢の方のようです」


「なんだと!?」


倒れていた女性を介抱していたバーチが、叫ぶ。


「連絡を受けたのはまだ数時間前だろう!?いくら何でも、こんなに早く到着するはずがないだろう!」


(そういうことか……)


彼の言葉で、シエラはすべてを悟った。


「コーカス、とりあえず、この人たちは、私たちだってわかって攻撃してきたわけじゃないから、怒りを鎮めてくれるとありがたいんだけど」


「ふざけるな。攻撃をしてきたのは事実だろうが。あの程度で倒されるような我ではないが、お前はただの人間だ、怪我でもしたらどうする」


コーカスの言葉に、心配してくれているの?とシエラは少しドキッとする。


「別の主を探して、宿や食料を安定して供給させるなど、めんど」

「おい」


続くコーカスの言葉に、シエラの声がワントーン下がる。


おっと、と口を閉じるコーカスに、シエラはため息をつきながら、ちょっと野菜出してあげるから、食べて機嫌直して、と言うと、普段の鶏サイズに戻り、仕方がないな、とコーカスはシエラの側にやってきた。


「…すみません、こっちは私の従魔で、コッカトリスのコーカスとトーカスです。こっちはシルバーウルフのポチとスライムのプルプル」


「コッカトリスが従魔ですって!?」


シエラが紹介したところで、目を覚ました女性が驚いて叫んだ。


「ミサ、この人は、例のギルドから派遣されてきた職員の方だ」

「は!?だって、ロウさんが派遣されてくる職員って、受付嬢だって言って」

「第一ギルドの受付嬢に、コッカトリスをテイムしている方がいるという話は聞いたことがあります。たぶん、彼女がそうかと」


ひそひそと三人は会話した後、ちらりとシエラを見る。

視線が合ったシエラは、少しだけ気まずそうにしながらも、どうも、と頭を下げた。


「ご、ごめんなさい!私、ヤバい気配が猛スピードで近づいてきてたから、てっきり高ランクモンスターが襲撃してきたんだと思って」


想定しているよりも遥かに早い到着だった為、まさかそのヤバい気配がシエラ達だとは思いもよらなかった一行は、先制攻撃を仕掛けてきた、というわけだった。


「いえ、こちらこそ、従魔に乗って移動するので、数時間で合流する予定になる、と、あらかじめ伝えておくべきでした」


コッカトリス急行で移動する人はそうそういない、ということをうっかり失念してしまっていた、とシエラは反省したのだった。


「それより、その…大丈夫ですか?ケガとか、されてませんか?」


シエラが少し心配そうにしながら聞くと、ミサとバーチは顔を見合わせて、申し訳なさそうに、心配いらない、と返事をした。


(よかった…!!)


先に攻撃を受けたとはいえ、従魔が人に危害を加えたとなったら、色々と面倒なことになっていたと、シエラは二人の無事を確認して、ほっと胸をなでおろす。


「とりあえず、こっちで座って話をしませんか?」


ロウに言われて、シエラ達も後についていき、傍にあった簡易拠点へと移動した。

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