新人冒険者-5
成人の儀の翌日から数日たち、ギルド内はいつもの様子を取り戻しつつあった。
成人したばかりの子供たちの姿もちらほらと見えるが、彼らも一生懸命、草原で薬草採取に励んだり、街の清掃活動などの仕事も、頑張ってこなす様子を見て、先輩冒険者たちも、子供たちに頑張れよ、と声をかける姿をちょくちょく見かけるようになっていた。
「シエラねーちゃん!今日はこれ、受けるよ!」
この間冒険者登録をしたばかりの男の子5人組。そのリーダー格の男の子、ターナーがシエラに1枚の紙を差し出してきた。
差し出してきたのは掲示板に貼ってあった依頼書で、そこには、ラージマウスの討伐依頼が記載されていた。
「んー、ターナー君、ラージマウスのことは知ってるのかな?」
シエラが聞くと、ターナーはこくんと頷いた。
「知ってるよ、少し大きいネズミの魔物だろ?群れで行動するって聞いてるけど、罠を仕掛ければ簡単に倒せるって、冒険者の兄ちゃんが言ってた」
ターナーの言葉に、シエラは少し思案する。
ラージマウスの推奨討伐レベルはFランク。冒険者になりたての初心者たちが、よく最初に討伐する魔物の中の1種だ。ターナーの言う通り、罠を仕掛けて捕獲し、処分する方法が一般的で、これなら比較的安全に、かつ、数をこなしながら討伐することができる。
もちろん、群れで行動する魔物のため、注意は必要で、正直、冒険者になりたての彼らに、群れで行動する魔物の討伐は、リスクがある気がしないでもない。
「ラージマウスは群れで行動をします。推奨ランクはFランクだけど、群れが大きかった場合、君たちだけじゃ討伐が難しい場合もあるから、必ず、深追いはせず、罠にかかったものだけを討伐して、無理だと思ったらすぐに撤退すること。約束できる?」
シエラが聞くと、ターナーは心配しすぎだって、と笑った。
「最初の講習会でも話をしたと思うけど。冒険者は自己責任。わかってる?」
シエラが真剣な顔で聞くと、ターナーはわかってるよ!と少しむっとした顔で答える。
「…わかった。それじゃ、ここにサインしてくれるかな?みんなで一緒に行くなら、代表者だけのサインでもいいよ」
「それじゃ、俺が書くよ!」
ターナーが3枚の受注書にサインを書く。
「はい、確かに。それじゃ、これが君達の控えだから。なくさないように。気を付けて、無理しちゃだめだよ?」
シエラがターナーに控えを渡すと、彼らは行くぞ!と走ってギルドを去っていった。
「大丈夫かなぁ…」
ぽつりとつぶやくシエラに、隣にいたルーが心配性だな、と苦笑する。
「まぁ、わからないでもないけど。でも、あの子たちだっていつかは討伐依頼をこなさなきゃ、上には行けないわけだし。いつかは通る道だよ」
「そう、だね」
ルーの言葉に、シエラは小さく頷き、受付業務を再開した。




