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生態調査開始-1

トーカスを説教し終えたあと、シエラは気を取り直して、仕事を始めることにした。


「それじゃ今から仕事するから…そうだなぁ、コーカスはポチと一緒にここで待機。今から私、スキル使って作業するから、私の護衛をお願い。トーカス達は、周囲を見て回ってきてくれる?どんな魔物がいたか、とかどこに何があったか、とか、見かけたり気になったものがあったら報告して。あ、万が一オークを発見した場合は、倒せそうなら倒してすぐに報告、倒すのが難しそうならすぐに戻って報告して。いい?」


「了解した!」


ビシッと綺麗な敬礼をして見せ、サクラたちを連れて、トーカスは姿を消した。

シエラは苦笑しながら、お願いねー、と消えていった方向に向かって小さく叫ぶと、ごそごそとマジックバックから虫よけの香を取り出して準備を始めた。


「香を焚くのか?」


コーカスに聞かれて、シエラは頷いた。


「うん。そこまで虫はいなさそうには見えるけど、気づかないうちに毒虫とかが近くにきてたら困るから。コーカスもさすがに、虫までは気づけないでしょ?」


シエラに言われて、コーカスは確かにな、と頷いた。


「それに、広範囲でスキルを使うときは特に集中力が必要になるんだけど…噛まれるとすっごい痒くなる虫とかもいて、そうなると集中できなくなるから、スキルが使える範囲が狭くなっちゃうんだよね…」


「なるほどな」


過去に何か苦い経験でもあったのだろうな、となんとなく察したコーカスは、小さく頷いた。


「よし、これでしばらくはお香の効果で虫を気にしなくて大丈夫。ちゃちゃっと終わらせちゃいますか」


シエラはそう言うと、今度は何も書かれていない紙を1枚取り出し手に持つと、大きく深呼吸をし、目を閉じて意識を集中させ、マッピングスキルを発動させた。


シエラを中心として徐々に脳裏に周囲のマップ情報が刻まれていく。高低差や障害物などの情報もさらに刻まれ、ドンドンと情報がアップデートされていく。


(…よし、次は……)


脳裏に新たに刻まれたマップ情報を複写スキルを使って、手に持った紙に転写していく。紙の上に徐々に道が記されていき、やがてそれは1枚のしっかりとした地図となった。


「ふぅ、まずはこれでよし。次は、と…」


出来上がった地図をいったんマジックバックの中に戻すと、再度目を閉じて意識を集中させ、今度は索敵スキルを発動させた。


コッカトリス達に周囲の索敵をお願いしているとはいえ、その報告と、自身の索敵で得た情報をすり合わせをする必要があるからだ。それに、彼らの調査で、見落としが発生する可能性がないわけではないので、自身での索敵対応は必須であった。


「…少し離れたところに、ロックバードの巣。あ、ビッグ・ドードーもいる。あの辺りには鳥類系の魔物が多いな…。あっちにはホーンラビット、の…群れ?…え!?」


索敵に引っかかった魔物に、シエラは思わず目を開けた。


「コーカス!ごめん、あっち、あっちにアルミラージいるみたいなんだけど、ちょっと、角を折って取ってきてくれない!?あ、殺しちゃだめだから、殺さずにね!できる!?」


「…ん?」


急に声をかけられたコーカスは、シエラが指さす方へと意識を向ける。

確かに、そちらに魔物の群れの反応が感じられた。


「…あぁ、あれか。殺したらダメなのか?」


なんだか面倒くさそうなことを言い出したぞ、とコーカスが再確認すると、シエラは大きく頷き、ダメ!と答えた。


「アルミラージは、綺麗な黄金色の毛と黒くて立派な角を持ってて、かつ、見た目がとっても可愛いってことで、昔、貴族の人たちの間で流行したことがあったのよ。確かに、すごい獰猛な性格してるから、狩るのは大変なんだけど…でも、我先にって貴族の人たちがどんどん競い合って報酬を高く設定していっちゃって、結果、乱獲されたのよね。そしたら、まぁ、案の定というか…生態系が狂っちゃって。アルミラージとそれに統率されたホーンラビットが狩ってた、ポイズンスネイクやラージマウスの数がどんどん増えていっちゃうわ、統率を失ったホーンラビットが散らばって、村や町の近くまで出てくるようになって、子供達が襲われたり畑が襲われる被害が増えたりで。結果、今は正当な理由による討伐依頼を受けての狩り以外で、アルミラージを討伐することは禁止になったのよ。だから、今は殺しちゃダメなの」


「…あほだな」


コーカスの言葉に、シエラは私もそう思う、と頷いた。


「ただね、このアルミラージの角なんだけど…薬の材料になるのよ。珍しい病気だし、1本あれば、ある程度の薬が作れるから、常に必要とされているわけじゃない。ないんだけど、アルミラージの角を取ってくるってことは、周り引き連れてるホーンラビットを大量に相手しないといけないし、アルミラージは殺しちゃダメだし、でも角を折るためにはアルミラージを捕まえないといけないし、それはそこそこ難しいしで、割が合わないって言われる依頼の一つなのよね、これが。結果、依頼を出してもなかなか受けてもらえない、そのせいで薬が作れないし、なんとかできた薬もすごく高額になってしまって、手に入れられない人も出てきてしまってるっていう状況なんだよね」


はぁ、と小さくため息を漏らすシエラ。


「だけど、コーカスなら、アルミラージを殺さずに、角だけ折って帰ってこれないかなって思ったんだけど…やっぱり()()かな?」


ちらりとコーカスを見ながらシエラが言う。

するとコーカスは、誰にものを言っている、と小さくシエラを睨みつけた。


「我がアルミラージごときに後れを取るとでも言いたいのか?あ奴を殺さずに角だけを取ってくることなど、朝飯前だ。そこで待っておれ!」


言うや否や、コーカスはひゅっとその場から走り去っていった。


「……よし!」


狙い通り、とシエラはガッツボーズした後、索敵を再開した。


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