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新人冒険者-4

「お疲れー」


カウンターに戻ると、死んだ魚の目をしたルーがシエラを迎えた。


「はい、これ。シエラの担当の冒険者たちの書類。目、通しといて」


「ありがと。助かる」


書類を受け取り、内容をチェックしていく。


「あんた、学校の先生とか向いてるんじゃない?」


ルーがはぁ、と肩をもみながら首をぽきぽきと鳴らしていると、シエラは遠い目をしながら答えた。


「無理に決まってるでしょ。今日1日、しかもあの短時間だけだから何とかなるのよ。あんなちびっこ猛獣たちを毎日相手にするとか、私には絶対に無理」


「そう?結構素直に聞いてたじゃない」


ルーに言われて、フルフルと頭を振る。


「聞いてるのと、頭に入ってるのとでは全然違うからね?何人かは話してる最中でも他の子とお喋りしてた子もいたし。正直、何人残ることやらって感じ」


正直なところ、成人の儀を迎えて大半の子供たちは冒険者登録をしに来るのだが、そのうちの半数は1年と持たずにギルドに来なくなり、さらにその半数は、2・3年もすると、別の仕事を始めたりする。

そして、毎年数人程度ではあるが、調子に乗り、忠告を聞かず、街の外に繰り出し、命を落とす子供たちがいる。


「ちゃんと外が危ないってこと、毎年、口をすっぱくして伝えてるんだけど…正直なところ、いくら口で言ったところで、気持ちが上の空の子供たちにはどれだけ言ってもなかなか伝わらないんだよね」


「しょうがないわよ。冒険者になるって判断した以上、すべては自己責任なんだから」


カウンターで一人一人を登録対応するときであれば、ちゃんと相手の目を見て、伝わるまで伝えることができるが、今回のように一斉に登録対応を行った場合は、なかなかそれができない。


「今年は、命を落とす子がいなければいいんだけど」


小さく呟きながら、チェックを終えた書類を机に片づける。


「ま、私たちがここでどうこう言ってても、しょうがないんだし。下手なことをしないよう、しばらくは子供たちの依頼受付の時は気を付けてあげればいいんじゃない?」


「ん、そうだね」


ルーの言葉に頷くシエラ。


「ほら、午前中にできなかった仕事、まだあとこれとこれが残ってるんだから、あんたも手伝ってよね」


「え、うそ、こんなにまだあるの!?」


残っている仕事を見て呆然とするシエラ。


「しょうがないでしょう?あんたが抜けた穴はでかかったんだから。もう少ししたら、戻ってくる冒険者もいるだろうし、いそいで片づけちゃおう」


「今日も、残業か…」


シエラが呟くと、ルーが苦笑した。


「あんた、いい加減諦めなって」


「…今日だけは諦めるわ…」


ため息をつきながら、シエラは書類を片手に、仕事を進めていった。


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