ギルマス定例会議-3
更新、かなり期間があいてしました。。。
申し訳ないです。
各ギルドの熱意溢れる報告が終わると、アオが「他に何か議題がある人はいるかな?」と声をかけ、ちらりとジェルマを見た。視線が合ったジェルマは、まるで君は何かあるんだろう?と言わんばかりのアオの表情に、小さく舌打ちをしつつ、手を挙げた。
「おや、ジェルマが何かあるなんて珍しいね。どうぞ?」
にっこりと笑ってジェルマに振ると、小さなため息をつきながら、ジェルマは立ち上がった。
「…少し前に、うちの受付嬢から、少し気になる報告が上がってきたので、ここで確認をさせてもらいたいと思う」
ジェルマの言葉に、一体なんなんだ?と集まっていたギルドマスターたちがざわつく。それをすっとアオが手を挙げて制し、続けて、と話を促した。
「先日、うちのギルドに所属変更をしたいと依頼をしてきた冒険者がいたんだが、その冒険者たちとひと悶着あってな」
もしかして、災害級の魔獣の目撃情報が上がったのか、と、構えていた数名のギルドマスターたちは、なんだ、と胸をなでおろした。
「まぁ、その時揉めた内容ってのが、所属変更手続きが即時対応ができないってことが納得できない、って話だったんだが」
そこまで聞いて、ほとんどのギルドマスターたちが、いつものやつか、と苦笑する。
「いろいろと話を聞いててわかったんだが、その冒険者共の元所属ギルドがグレルギルドだったらしいんだが、あの件でギルドが統合された時、引継ぎ先のクリュグギルドで対応ができない、と断られたと言っていたんだ」
その言葉に、ギルドマスターたちの視線が一斉にクリュグギルドのギルドマスターへと集まる。
「うちの鑑定持ちの受付嬢の話によると、リーダーの冒険者に過去、犯罪歴はステータス上見受けられず、しかも、聞き取りした話では、門前払いに近い状態で、なんの対応もしてもらえなかった、ということなんだが…これは一体どういうことか、説明してもらえるだろうか、ドクリーさんよ?」
そういってじっとクリュグギルドのギルドマスター、ドクリーの方を見ると、さも不快そうな表情を浮かべながら、彼は口を開いた。
「どうもこうもない。どうせうちの査定基準を満たすことができなかったから、断られたってだけの話だろう?元グレルギルド所属だった冒険者と揉めてるからって、うちに文句を言うのはお門違いだろう」
ドクリーの言葉に、何人かのギルドマスターたちが小さく笑った。
ジェルマは一瞬眉を顰めるも、ふぅ、と気持ちを静めるように深呼吸をし、再度問いかけた。
「クリュグギルドへの所属を断るってのは別に今はどうでもいいんだよ。問題は、なんで所属変更のための必要手続きを、取ってやらなかったのかってことだ」
その言葉に、トーカスがうん?と首を傾げた。
「どういうことだ?クリュグギルドへの変更を受け入れできないから所属変更のための手続きをしなった、ってことじゃないのか?」
トーカスに言われて、ジェルマは小さく頷いた。
「ああ、そうだ。元々ギルドは、冒険者が所属変更をする場合、所属元となるギルドで所属変更のための書類を発行してやる必要があるんだ。自分とこの所属を抜けますっていう、一種の証明書みたいなもんだな。それがないと、冒険者は別のギルドに所属を移すことができないようになっている」
ジェルマの言葉に、トーカスはなんて面倒な、と思わず呟く。ジェルマはその言葉に、思わずククっと笑った。
「そう言うな。これはこれで大事なことなんだよ」
ジェルマはドクリーの方へと向き直って続ける。
「細かいことをまぁ、態々あんたに説明する必要はねーだろうから省くが…少なくとも、そういう規則がある以上、統合元になってるあんたんところで書類を発行してやるのは義務だろうが。なんでそれをやってやらなかったんだ?」
言われてドクリーは小さく馬鹿にしたように笑った。
「なぜって…本気で聞いてるのか?全く…これだから経営の何たるかを分かっていない奴は困るんだよ」
ドクリーの言葉に、ざわついていた他のギルドマスターたちが口を閉じた。
「グレルギルドが潰れた理由は知っているだろうが。そこに所属してた冒険者なんて碌な奴じゃないに決まっている。どうせうちで確認した時に過去に犯罪歴があったから、所属変更の書類を出さなかったってだけだろう。さっき、鑑定持ちの受付嬢と言っていたが…どうせスキルレベルも大したことないんだろう?賞罰がきちんと見抜けなかっただけじゃないのか?」
やれやれ、といった風に首を振りながら答えるドクリー。トーカスが蹴りかかろうとしているのに気づいたジェルマが慌ててトーカスの体をガシッと捕まえると、あはははは!と大きな笑い声が上がった。
一体誰だ?と皆がキョロキョロしていると、目に涙を浮かべながら、お腹を抱えて笑っているアオの姿がそこにはあった。
「ドクリー…もしかして君、ジェルマのところの鑑定持ちの子のこと、知らないの?」
言われて、ドクリーはどういう意味だ?と眉を顰める。
「ねぇジェルマ。君が言ってる鑑定持ちの受付嬢って…シエラ嬢のことであってるかい?」
聞かれて彼は、そうだ、と頷いた。
「あははは!やっぱりね!ならドクリー、君のその言い分は通用しないよ」
「な、どういう」
「だって、彼女のスキルレベルは最大値の10だよ」
「な!?」
思わず目を見開くドクリーに、アオはまた、あはは、と楽しそうに笑う。
「…あんまり本人のいないところで、そうやって勝手にスキル内容をペラペラ喋るな。マナー違反だ」
ため息交じりにジェルマがアオにチクリと文句を言うと、悪びれる様子もなく、ただ小さく、肩をすくめた。
「まぁ…そういうわけで、あいつが見抜けなかったって可能性はかなり低い。そうなってくると、そっちのギルドでそもそも罰則があったって事実自体がおかしいことになる。さて…どう説明つけてくれるんだ?」
「ぐ……!」
唇を噛みしめ、顔を真っ赤にするドクリー。みんながどうなるのかと話の行方を見守っていると、僭越ながら、とミュシカが手と声を上げた。
「グレルギルド所属冒険者たちについて、所属変更に際して問題が発生する可能性があると認識しておりましたので、念のため、その後誰がどこに変更されたのかを後追いしていたのですが…現時点で所属変更がなされている方がいらっしゃらないようですね?」
その言葉に、え!?とそこかしこで声が上がった。
「そもそも、元グレルギルド所属冒険者の方で所属変更申請が上がってきたのが…そこのモルト第一ギルドから、所属変更元の手続き書類無しでの変更手続き依頼が初めてでした。これは一体、どういうことでしょうか?少なくとも、グレルギルドには千数百名の冒険者の方が所属されていたはずです」
その言葉に、今度はドクリーの顔色がどんどんと悪くなっていく。
「さらに付け加えると…元グレルギルド所属の職員の方が数名、クリュグギルドの方へ入られてますね?しかも、他人の名前で」
真顔で詰め寄るでもなく、淡々と質問をしてくるミュシカに、ドクリーは真っ青な顔で膝をつき、そのまま床に座り込んだ。
「ふむ。どうやらドクリーとクリュグギルドには一度、内部調査を受けてもらう必要がありそうだね。ジェルマ。この件に関しては、後はこちらで対応ということでもいいかい?」
言われてジェルマは手をひらひらさせながら、問題ない、と答えた。
「よし、では他にはないようなら…うん、今回の定例会議はこれで終了とする。解散」
アオの言葉に、ギルドマスターたちはひそひそと話をしながら、会議室を出て行く。
「あ、ジェルマ。申し訳ないけど、明日ちょっと僕のところに顔を出してくれるかな?」
言われてジェルマは、物凄く嫌そうな顔をしながら、了解した、と答えて、トーカスと一緒に会議室を出て行った。




