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ギルマス定例会議-1

サントーリオの首都であり、国内最大級の街、トーリッシュ。

街を入ってすぐのあたりは、木造建築が多く見受けられるが、王城のある中心部に向かうにつれてレンガ造りの建物が徐々に増えていき、王城周辺ともなると、二階建て以上の建物もちらほらと見受けられ、街の発展具合をしっかりと現していた。街中の道も綺麗に舗装されており、街路樹と街路灯が綺麗に等間隔に設置され、そこを歩く人たちの表情も活気であふれており、楽し気な雰囲気がひしひしと伝わってくる。


街の中心部には大きな噴水が設置されており、街の憩いの場であるとともに、トーリッシュのシンボルでもあるそれは、他の街から来た人たちは必ず見に寄ると言われているくらい美しい。


「で、この噴水の前のどデカい建物が、中央ギルドなのか?」


噴水と向かい合って建っている3階建ての巨大建築物を前に、トーカスが隣にいたジェルマに聞くと、そうだ、と答えた。モルトのギルドもそこそこデカい建物だと思っていたのだが、その3倍は軽くあるのではないか、と思われる大きさに、トーカスはへぇ、と感心したような声を漏らした。


「でも、ヘネシーの冒険者登録をしたギルドと違うぞ?」


「中央ギルドはギルドのとりまとめをしているところだから、基本的な冒険者やらの対応を行っているギルドとは別で作られてるんだよ。ちなみに、中央ギルドは冒険者ギルドの他に商業ギルドなんかの他のギルドのとりまとめもやってんだ。中央ギルドが各種ギルドのトップってことだな」


「おー、なるほど」


本当に分かってんのか?と疑いたくなるような軽い返事が返ってきたので、ジェルマは苦笑する。


「しっかし…今日は会議なんだろ?なんで俺も一緒に来ないとだめだったんだよ?」


ジェルマの肩に飛び乗ると、そのまま片足でゲシゲシと彼の頬を軽く突く。


「おい、止めろ。地味に痛い」


顔を背けてあからさまに嫌そうな表情を浮かべるジェルマに、トーカスはプイっと横を向いた。


「せっかく今日は、エディの奴が学園に用があるって言ってたから、あいつの学園生活をこの目で見てやろうと思ってたってのに。その邪魔をされたんだ、ちょっとぐらい、ストレス発散させろよ」


その言葉に、ジェルマは呆れた顔になる。


「お前…前から思ってたんだが、なんでそんなに人の私生活が気になるんだよ?」


トーカスは、何がおかしいのかわからない、と言った風に首を傾げる。


「え?普通気になるだろ?だって、相手は王族だろ?王位継承権も持ってる年頃の男子が学園に通ってるってなれば、男女問わず、周囲は放っておかねーだろうし、そうなれば自然と、イベントが目白押しになるじゃねーか。こんな面白そうなシチュエーション、見逃すなんて選択肢は俺にはない」


「…いろいろ言っている意味がよくわからんが、取り合えず、お前が妙に人間くさいことだけはわかった。なんだ?テイムした魔獣は普通みんなこんなんなるのか?」


ズキズキと痛む頭を押さえながらジェルマがブツブツと呟いていると、後ろからジェルマ!と声をかけられた。振り向くとそこには、ジェルマとは対照的なすらりとした細身の男性の姿があった。


「久しぶりだな、相変わらず元気そうで何よりだ」


にこにこと笑って男性が続けると、ジェルマは久しぶりだな、と返した。


「こんなところで何してんだよ。もうそろそろ会議も始まるし、早く入れよ」


「あぁ」


男性に促されて、ジェルマは一緒にギルドの中へと入る。

中は外装に負けず劣らずの作りで、中は白壁で綺麗に統一されており、ギルドとは思えない清潔感あふれる様子となっていた。トーカスは思わず、おぉ、と感嘆の声を漏らす。


「すげーのな、中央ギルドって」


ぽつりとつぶやくトーカスに、ジェルマはククっと小さく笑った。


「まぁ、一応この国のギルドを束ねてるところだからな。そりゃそれなりの豪華さはあるさ」


ジェルマの言葉に、トーカスはふぅん?と呟くと、前を歩いている男性に視線を移す。


「…知り合いか?」


トーカスが小さな声で聞くと、ジェルマも小さく頷いた。


「まぁ、腐れ縁てとこだな」


ジェルマが答えると、前を歩いていた男性の足が止まった。


「遅くなってすみません」


男性が扉を開けて中に入ったので、ジェルマもそれに続いた。

中の広い部屋には机と椅子が向かい合う様に並べられており、すでにほとんどの席には人が座っていて空席は残りわずかとなっていた。ジェルマは自分の名前が書かれたプレートの場所を探し、席についた。


「来ていない人は…あぁ、今回欠席連絡が入っている人たちのようなので、これで全員集まったかな?それじゃちょうどいい時間だし、定例会議をはじめたいと思います」


男性は【アオ・ハルライド】と書かれた議長席に座って話を始めた。


「それではまずはいつも通り、各ギルドの収支報告等々、こちらでまとめたものを報告したいと思います。ミュシカ」


アオに声をかけられて、隣に座っていた美女がはい、と立ち上がると、机で囲まれた中央の空いているスペースに、突如グラフや表が表示された。彼女は始めます、と小さく頭を下げると、報告とそこに表示された内容について淡々と説明をしていく。


「…マジか。すげーな、この世界」


トーカスはそう呟くと、ジェルマの肩からおりて机の上にでん、と座り込み、ミュシカの説明をじっと聞き入っていた。


(まぁ、魔物にしてみれば、こんな魔法の使い方をすることはねーだろうから、驚くのは当たり前か)


まるで初めておもちゃを与えられた子供のように、キラキラとした瞳で目の前に表示されたミュシカの魔法を見つめているトーカスに、ジェルマは小さく笑った。

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[一言] トーカス転生してる?
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