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騒ぎ-3

「あとちょっとで交代だな」


いつもと変わらない毎日、とは今日は言えなかったな、とルーカスは呟きながらそう思った。


「そうだなー。しかし…あいつ、ようやくまた、依頼を受けるようになってきと思ったら、急にオークが現れたとか、どうしたってんだ?ったく」


隣で盛大にあくびをしているテックもどうやら同じことを思い出しているようで、さらに話を続けた。


「オークのことは知ってるが、そもそも特定のダンジョン以外にはいないって話だろ?確か」


テックに聞かれて、ルーカスはそうだな、と頷いた。


「ああ。オークの奴らは縄張り意識が強いこともあって、弱い魔獣なんかは駆逐されちまうらしい。だから、外で発見された場合はすぐにギルドで討伐に当たってる。少なくとも、うちのダンジョンではオークの出現の話は聞いたことがねーし、街の周辺でも出現情報は出てないはずだ。出てたら、俺らに情報が絶対に回ってくるはずだからな」


ルーカスが言うと、テックはうんうん、と頷いた。

魔獣や魔物たちは、ギルドで討伐推奨ランクと呼ばれるランク付けをされる。これは、冒険者たちが対峙している魔物たちを討伐できるかどうかを判断する目安として設けられている、と一般的には思われているが、人にとって、その魔物がどれだけ脅威か、ということの一種のバロメーターにもなっている。

その為、もしも街などの近くで高ランクの魔物たちの目撃情報が出た場合、街の治安維持部隊には必ずその情報が伝えられ、特に、門を守る門番は、真っ先に情報が届くようになっている。これは、門が外と接しているため、一番遭遇する可能性が高いということ、街の外に出る人間に、注意を促す役目があることからとされている。


「こないだ、ゴブリンの集落が見つかった時に、ある程度周辺の調査はしてたはずだろ?オークがいたんなら、その時に見つかっててもおかしくねーはずだろ?」


「そうなんだよな。あいつがこんな嘘つくような奴じゃねーし…。ま、大方、何かを見間違ったってとこじゃ…ん…?え、あれ?シエラちゃん?こんな遅い時間にどうしたの?」


二人がははは、と談笑していると、暗い表情で街の方からのろのろと現れた女性が、シエラだということに気付き、ルーカスは驚いて駆け寄った。


「今からちょっと、迎えに行かないといけないのがいるので、外に出てきます…はぁ…」


特大のため息に、二人は顔を見合わせる。


「迎えって…もう日も落ちるし、そろそろ門も閉じるよ?一人じゃ危ないし、明日にしたら?」


ルーカスが心配そうな顔で言うと、シエラはあはは、と乾いた笑いを浮かべて、大丈夫です、と答えて、書類を彼に手渡した。


「そうそう、オークの目撃情報がギルドに入りました。目撃されたのは単体とのことですが、念のため、ギルドの方で調査対応を行います。目撃されたオークについては、正式な回答は明日にでもできると思います」


「「え!?」」


ルーカスとテックの声がハモる。


「そういうわけなので、私はこれで。行くよ、サクラ」


シエラはそう言うと、軽く頭を下げて、そのまま門を出て行った。シエラの後ろには、薄い桃色をした鶏が、トトトと後をついて行く。


「オークの目撃情報って…まさか、あいつが言ってたことが、本当だったってことなのか?」


ルーカスが言うと、テックはんー、と首を捻る。


「いや…シエラちゃんのあの表情を見るに、目撃情報が入っちまった以上、ギルドとしては放置できねーから、動かざるをえないってとこじゃねーか?ほら、毎年周辺調査の時期は、ギルドの奴らみんな、死んだような顔してるじゃねーか」


テックの言葉に、ルーカスはあぁ、と、何人かの知り合いが、目の下に大きなクマを作って、まるでゾンビのように外から戻ってきたのを思い出した。


「シエラちゃん、残業嫌いだもんなぁ…」


二人はふらふらと門を出て行ったシエラの後ろ姿を見つめながら、ご苦労様、と手を合わせた。

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