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隠れた才能?

「なぁ、ちょっといいか」


二人のやり取りを見ていたトーカスが、間に入る。


「ん?どうした?」


「いや、ちょっと試してみてほしいことがあるんだが、いいか?」


トーカスに言われて、ジェルマは首を傾げながら、別に構わない、と答えると、トーカスはヘネシーの所へトトトと近づき、いくつか彼女に質問をした。


「え?でも…」


ヘネシーはトーカスに最後に、物は試しにやってみてもらえないか?と言われ、わかりました、と頷く。ジェルマには二人が何を話していたのか全く聞こえず、首を捻ってばかりだった。


「おい、ジェルマ!もう一度、ヘネシーとさっきと同じ条件でやってみてもらえないか?」


「ん?あぁ、それは構わんが…」


当の本人達であるヘネシーとジェルマは、よくわからない、といった表情を浮かべながらも、もう一度お互い向かい合って構える。それを見てトーカスは、その場を離れてエディ達の側へと移動した。


「なぁ、トーカス。一体何を話してたんだ?」


エディがトーカスを抱き上げてこそっと聞いてみる。


「ん?あぁ、大したことじゃないんだが…」


トーカスがそう言うと同時に、ジェルマが開始の合図を叫んだ。


「い、行きます!」


弓を構えて矢を放つヘネシー。ジェルマはそれを避けて距離を詰めようとする。

しかし。


「な!?」


避けた方向へヘネシーの放った火魔法の玉が飛んでくる。とっさにジェルマはそれを後方へと何とか避ける。


「…やるじゃないか」


ジェルマが言うと、そこには、ジェルマ以上に驚いた表情を浮かべたヘネシーの姿があった。


「………ん??」


ヘネシーのその表情に首を傾げつつも、ジェルマはグッと足に力を入れて思いきり地面を蹴って距離を詰めにかかる。


「はっ…!?」


ハッと我に返ったヘネシーは慌てて弓を構えて矢を放つ。


「遅い!」


矢を持っていた木剣で払うと今度は氷魔法をまとった矢がジェルマに向かって飛んでくる。


「ふん!」


ジェルマがその矢を払うと同時に、魔法が展開され、大量の氷柱が現れると、ジェルマへ向かってそれらが一気に飛んでいった。


「な!?」


慌ててバックステップを踏み、そのまま横へ転がり、氷柱を間一髪で避ける。

地面には、先ほど現れた氷柱がドスドスドス!と音を立てて突き刺さっていった。


「マジか」


二人の攻防を見て、思わずエディが呟く。


「うーん、思ってたのとはちょっと違ったが…まぁ、こんなもんか」


「さっき、ヘネシーさんと何を話していたのですか?」


トーカスの言葉に、ハルは彼がヘネシーに話していた何かが関係していると気づき、問いかける。


「ん?あぁ、実は…」


「きゃぁ!」


トーカスが答えようとしたところで、ヘネシーの声が同時にかぶさってきた。

先ほどとはうってかわって、少々苦戦を強いられたものの、やはり元Sランク冒険者であるジェルマに、ヘネシーがさすがに勝てるわけはなかったようで、ちょうどヘネシーが、ジェルマに木剣でぽこんと頭を叩かれて、地面に突っ伏したところだった。


「最初に比べたら随分と魔法が上手くなってるんだが…トーカスの入れ知恵か?」


ヘネシーに手を差し伸べてジェルマが彼女を起こすと、彼女は鼻をさすりながら、はい、と答えた。


「俺の思ってた感じとはちょっと違ってたんだがな」


二人に近づき、トーカスが言うと、ジェルマは不思議そうに、何を言ったんだ?と聞いた。


「ヘネシーに、遅延魔法が使えるかどうかと、弓を使うのと同時に、魔法が使えるかを聞いたんだよ」


「「「遅延魔法?」」」


トーカスに言われて、ジェルマ、エディ、ハルの声がハモった。


「私も、最初は一体何のことを言っているのかと思ったのですが、任意のタイミングで魔法が発動できるようにすることは可能か?ということのようでした」


ヘネシーの答えに、ハルは少し目を丸くする。


「任意のタイミングで魔法を発動させるだって!?ま、まさか、ヘネシーさんはそれができるの!?」


言われてヘネシーは慌てて首を横に振った。


「まさか!できませんよ!ただ、できない、と答えた後、発動させるのに条件を付けることはできるか、と聞かれて、内容によりますが、それならできる、と答えたんです」


ヘネシーが答えると、ハルは「そうか」と声を上げた。


「魔法を罠に使うように、発動条件を付けたってことか」


ハルの言葉に、ヘネシーはこくりと頷いた。


「さっきの場合だと、2発目の矢がそうだな。矢に衝撃が与えられると同時に、氷魔法のアイスランスが発動するよう、魔法を付与させたってとこだと思うんだが、あってるか?」


トーカスに言われて、こくりとヘネシーは頷いた。


「1発目に矢を射った後に魔法で牽制ができたからな。2発目は避けずに叩き落す可能性がその分上がる。そうなれば、そっちには魔法付与させた状態で矢を射れば、高い確率で、付与した魔法を当てられるって寸法だったわけだ。なかなか考えたな!」


トーカスが褒めると、ヘネシーは微妙な表情を浮かべていた。


「どうした?変な顔して」


エディに言われて、ヘネシーは少し言いにくそうにしながら口を開いた。


「そ、その…1発目のあれは、たまたま、でして…」


「え?」


ニュークが聞き返すと、ヘネシーはもじもじしながら答える。


「1発目のあれは、その、矢に魔法を付与するのに失敗して、たまたま矢を射ったと同時に魔法が発動しただけなんです。それがたまたま、ジェルマさんが避けた方向へ飛んでいっただけ、で…」


「「「「………」」」」


ヘネシーの言葉に、思わず全員沈黙した。


「に、2発目は慌てて、ほんとはアイスボールを付与するはずだったんですが、間違ってアイスランスを付与してしまって」


顔を真っ赤にして手で覆うヘネシー。


「だ、だからあの表情だったのか…」


ぽつりとジェルマが呟く。どういうことだ?とエディが聞くと、ジェルマは頭を掻きながら答えた。


「いや、俺以上にびっくりした顔してたんだよ、ヘネシーが」


「い、言わないでくださいぃぃ…」


その言葉に、ヘネシーはその場にしゃがみ込む。


「まぁ、とにかく。思ってたよりもヘネシーが出来る奴だってことは証明できたんじゃねーか?」


トーカスの言葉に、ジェルマは頷いた。


「まぁ、冒険者なりたててでここまでできるなら上出来だな。トーカスに、教官の才能があるってこともわかったし、な」


にやりと笑うジェルマに、トーカスは怪訝そうな顔をする。


「は?何って」


「お前のそのアドバイスで、ヘネシーがここまで一気に成長したってことだろう?その調子で、モルトに戻ってからも、ヘネシーのこと、よろしく頼むぞ?()()


ジェルマの言葉に、トーカスはお断りだよ!と大声で叫んだ。


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