所属変更-4
翌日、シエラはいつもより早めに支度をし終えると、朝食は包んでもらい、ギルドへと急いだ。
「今日はいつもより早いな。昨日言っていた件で何か調べ物でもするのか?」
コーカスがシエラの隣をトトトっとついて歩きながら聞くと、シエラはうん、と頷いた。
「まだ何にもわからないからね。だから、まずは現状について、現時点でのギルド内での登録内容を確認しようと思う」
ギルドに到着すると、シエラはそのまま準備と掃除を一気に片付けて、さっそく記録の確認を始めた。
「何から調べるつもりなんだ?」
魔道具をカチャカチャといじっているシエラの横で、コーカスが聞くと、シエラは肩をすくめながら答える。
「んー、とりあえず、まずは元グレルギルドに所属していた冒険者たちをリストアップするでしょー?」
魔道具に映し出された内容をチェックし、よし、とシエラは頷くと、次の作業に取り掛かる。
「次は、このリストアップした冒険者たちの賞罰内容を情報に追加してー…」
シエラは映し出されている項目の中に、該当項目を追加させ、表示を確認する。
「最後に現在の所属ギルド情報と、状態に関する項目を追加してやればー…できた!」
表示内容を再確認すると、そのままその内容を紙へと情報を複写する。
「んー……ん、んー?……んんん??」
「どうかしたのですか?」
シエラが複写した情報とにらめっこをしながらずっと唸っているため、サクラが気になって聞いてみると、シエラは思いきりしかめっ面でコーカスとサクラを見つめた。
「いやー…思ったより、ちょっと……面倒なもんを掘り起こしちゃったかもしんない」
口をへの字に曲げて思いきり嫌そうな顔をするシエラ。コーカスとサクラは、互いに顔を見合わせて首を傾げる。
「どうしたというのだ?」
コーカスに聞かれて、シエラは首の後ろをさすりながら、暫く唸った後、勘違いかもしれないんだけどね?と前置きをして、出した内容とそれに対するシエラの意見を話し始めた。
「まず、グレルギルド所属だった冒険者っていうのを条件に、冒険者を最初に選択したのね?で、次に、その冒険者たちの賞罰情報をさらに表示内容に追加させたの。ざっと見て、大体6割くらいかな?冒険者登録してる人たちの中でそのくらいの割合の人が、ステータスボード上に犯罪歴の記載があるみたいなの。で、ここまでは特に掲示板の方で確認した内容に一致したりしている部分だから、特に問題はないんだけど」
「けど?」
もごもごと口ごもるシエラに、サクラが早く教えてください、と促してきた。
「…現在の所属ギルドがクリュグギルドになってる人が一人もいないみたいなんだよね。というよりも、グレルギルドから所属変更が完了してる人が一人もいないって状態になってるんだよね」
「それは…いくらなんでもおかしくないか?グレルギルドが閉鎖して、もう1か月以上が経過しているのだろう?」
コーカスに言われて、シエラはこくんと頷いた。
「そうなんだよねぇ。全員が終わってるってことはまぁ、正直稀なことだから、それはないにしても、過去に犯罪を犯したことがない人たちの中で、誰も所属変更が終わってる人がいないってのはどう考えてもおかしいと思うんだよね」
シエラは仕方がない、といったん手に持っていた紙を折りたたみ、制服のポケットの中へとしまい、準備忘れがないかを再チェックするために、ギルドの中を見て回ることにした。
*****
「おはようございます。ちょうど朝の受付ラッシュが終わったところですので、こちらへどうぞ」
いつもより少し多かった受付対応業務をこなしたところで、昨日の冒険者パーティーにいた男性に声をかけると、そのまま2階にある会議室へと向かって歩き出した。
「どうぞ、おかけください」
机をはさんで向かい合ってソファに座ると、シエラはさっそく本題に入りましょう、と言ってメモの準備をし、男性に話しかけ始めた。
「まずはお名前を教えていただけますか?」
「俺の名前はヘイロウ。グレルギルドに所属して大体3年ってとこだったと思う」
「ヘイロウさん、ですね?わかりました、ありがとうございます。あ…そういえば自己紹介がまだでしたね。私は受付嬢のシエラと言います。よろしくお願いしますね?では続けさせていただきます。ええと…次は質問をしていきますので、答えてくださいね?」
「わかりました」
シエラの言葉に、ヘイロウは真剣なまなざしでこくんと頷いた。
「ではまず、グレルギルドで登録対応をしてくれた受付嬢のお名前は憶えていらっしゃいますか?」
「いいえ、すみません。忘れてしまいました…」
「かしこまりました。では次に、クリュグギルドで受付対応をしてくれた…」
どういう風に言われたのか、断られた理由はなんと言っていたか、他に同様に所属変更を断られた冒険者をみたか、所属変更にはパーティーメンバー全員で行ったのか、等々、20分ほどかけて当時の出来事をできるだけ詳細に、シエラは確認を行っていった。




