少年冒険者の相談-その後
ひとしきり泣いて落ち着いた少年たちを連れて、シエラは森を出ると、運よく街へと戻る乗合馬車が通りがかったので、そのままのせてもらい、街まで戻ってきた。
体を石化させた男たちはもちろんそのまま森に放置してある。子供たちを連れた状態で、石化状態を解除するわけにもいかず、かといって、彼らを割らずに街まで戻る方法が、今のシエラにはなかったからだ。あとで衛兵に事情を説明し、回収をしてもらう予定にしていた。
「シエラ姉ちゃん、本当にありがとう」
乗合馬車を降りて門をくぐり、街に入ったところで、ニックがペコリと頭を下げて言った。
「「「ありがとうございました」」」
それに倣って、他の子達もお礼を言う。
「んー、お礼なら、ターナー君に言ってあげてくれるかな?彼が私に話してくれたから、今回、助けることができたし」
シエラが言うと、ニックは少し気まずそうな顔をする。
「俺、あいつのこと避けちゃったんだ…」
ニックの言葉に、シエラは、どうして避けたの?聞き返す。
「…あいつはあの場にいなかったから。このことを知ったら、きっと、あいつも巻き込むと思って」
ニックの言葉に、シエラはすこし目を見開いた。
「人の従魔を殺しちゃったのは俺たちなのに、あいつは関係ないのに、もし巻き込まれたら、って思って。だから、あいつのこと、避けてて」
ニックの告白に、シエラは優しく微笑んだ。
「そっか。ターナー君のことを思ってだったんだね?なら、大丈夫。ちゃんと、仲直りできるよ。ね?ターナー君」
「え?」
シエラの視線の先には、ポチを抱いたターナーの姿があった。
「ポチ!迎えに来てくれたの?」
シエラが言うと、ワン!鳴いて、ターナーの腕から抜け出し、シエラの元へと駆けよってきたので、シエラはよしよし、とポチを撫でてやる。
「ターナー…」
ニックが俯くと、ターナーはニックのところに駆け寄り、ゴスっと肩を殴った。
「言えよ!そういうことはちゃんと!」
ターナーはぽろぽろと涙をこぼしながら叫んだ。
「俺、俺だって、お前らがあいつらに怒鳴られてるとき、何もしてやれなくて悪かったよ!
勇気がなくて悪かった!でも、巻き込むとか、そんなのかんけーねーだろ!俺たち仲間だろう!言えよ、困ってるなら!ちゃんと、相談しろよ!俺、お前らが怒ってると思って、だから…!」
ターナーの言葉に、ニックも目に涙を浮かべる。
「う、うるせーよ!だって、お前は関係ないだろ!関係ないのに、巻き込めるかよ!仲間だから、巻き込みたくなかったんだよ!!」
わぁわぁと泣きながら喧嘩を始める2人。他の3人はオロオロとその様子を見守っている。
「青春だなぁ」
シエラは微笑ましいその様子を見て、ほんわかとした気持ちになる。
「とりあえず、明日にでもまた、ギルドにみんなで来て。今回のこと、詳しい話を全員から聞きたいから。私はこれから、衛兵さんにさっきの男たちのことを報告してくるから。ちゃんと仲直りしとくんだよー」
そういって、シエラはその場を後にする。
「シエラ姉ちゃん!ありがとう!!」
「「「「ありがとー!!」」」」
衛兵の詰め所へ行き、状況を報告したシエラは、ルーの根回しのおかげでスムーズに後始末をお願いすることができた。
もちろん、今回の出来事によって、1日のほとんどが潰れてしまったシエラは、例のごとく、残業となった。
ギルドからは、日付が変わる時間まで、しくしくと女の泣き声が聞こえてきていたという。




