ご褒美
結局、商業ギルドについた時には、すでに日付が変わっている時間だった為、シエラ達は商業ギルドの長椅子で休み、ゲートが開くのを待った。
朝になり、準備に来た職員が、今回は特別に、と、少し早めにゲートを開けてくれたので、街には日の出とともに戻ることができた。
一度寮に戻り、軽く湯あみをした後、着替えて食堂で朝食を軽く取った後、いつもの時間にギルドへと出勤した。
「おはよう」
シエラがギルドに入ると、他の受付嬢たちが驚いた顔でシエラ達を見てきた。
「え?シエラ??」
「あれ?鉱山の調査は?」
みんなが口々に疑問を投げかけてくる。
「とりあえず、調査と討伐は無事に終わったよー。ジェルマさん、もう出勤してる?」
大きなあくびをするシエラに、ルーは相変わらずねぇ、苦笑しながら、もう出てるよ、と教えてくれた。
「ジェルマさん、シエラです」
コンコン、と部屋をノックする。中から入れ、と声が聞こえたので、失礼します、と中に入ると、そこにはジェルマともう一人、白髪の少し歳を召したダンディな男性の姿があった。
「あ…すいません、来客中でしたか?」
出直したほうがいいかと思い聞くと、大丈夫、と言ってジェルマは執務室内の長椅子に座るように言う。
「…鉱山の調査、もう終わったのか?」
ジェルマに言われて、シエラははい、と短く答える。
この話を始めるということは、もう一人の男性については、聞かれても問題ないということか、とシエラは判断し、報告を始めた。
「鉱山内ですが、かなり大規模なマインアントの巣ができていました。一応、トーカス他コッカトリス達のおかげで、巣内に関しては、殲滅が完了しました。ただ」
「ただ?」
逃がしてしまった次代のクイーンのことを報告すると、ジェルマは小さく、仕方がない、と呟いた。
「クッティ・サークの方へ逃げてしまったということならどうしようもない。それに、まさかクイーンの腹の中で孵化するとは、な。さすがにそれは、予想の範囲外だ。仕方がない」
ジェルマの言葉に、シエラは少し、やりきれない表情を浮かべながら、すみません、と答えた。
「クイーンが生まれている、とわかっているわけだし、向こうにもその情報を伝えておけば、お互い、対策も立てられる。お前が気にすることはない。むしろ、生きてその情報を持ち帰ってくれただけでも助かる」
シエラの話の内容を聞いていると、元々調査依頼を出そうかと考えていた冒険者たちが対応していた場合、調査途中で命を落としていた可能性が非常に高い。それを思えば、クイーン以外を殲滅し、かつ、情報を持ち帰ってきたことは、評価に値する。
「申し訳ないが、クロードにこのことを伝えてもらえるか?」
「はい、もちろんでございます」
ジェルマの隣にいた男性は、そう言って小さく頭を下げた。
「主人が詳細を伺うために、またお呼びたてするかと思いますので、その時はお手数ですが」
「わかった」
「では、私はこれで」
言葉を交わした後、男性はそのままお辞儀をして、部屋を出て行った。
「…今の人って」
会話の内容から、もしかしてと思いジェルマに聞くと、小さく頷き、領主様の執事だよ、と答えが返ってきた。
「てなわけだから、たぶん、午後にでも使いが来るだろう。そうだな…あんまり休めてないようだし、使いが来たら、そのままクロードの所に言って、そのまま帰っていい。賞金的なものが出せない代わりの褒美だ」
ジェルマの言葉に、シエラは耳を疑った。
「…今、なん、て?」
キラキラと目を輝かせながら聞くシエラに、ジェルマは苦笑しながら言う。
「そのまま直帰していいっつったんだよ」
「ぃやったーぁぁぁぁぁ!!!」
シエラは涙を流しながら、喜び、叫んだ。




