受付嬢のお仕事-3
時刻が10時に差し掛かるころになると、朝の受付の波が少し落ち着いてくる。
依頼は基本的に早い者勝ちなので、みんな、少しでも良い依頼にありつこうと、開けてから1時間ちょっとの間が、一番混雑する時間帯なのだ。
「おはようございます。お待ちしてましたよ」
シエラはギルドに入ってきたロイたちの姿を見て、自身の受付カウンターに休憩中の札をたて席を立つと、彼らの所に駆け寄り、声をかけた。
ロイたちは、少しだけ気まずそうな顔をしているが、シエラはもう過ぎたこと、といつも通りに接する。
「昨日の件について、ギルドマスターからお話があります。こちらに一緒に来てくれますか?」
「あ、はい…」
いつもの元気は一体どこへ行ったのか、ロイ達はしゅん、とした顔で、シエラの後に続く。
「ジェルマさん、シエラです。剛腕の稲妻の方たちをお連れしました」
コンコン、とノックした後、シエラが言うと、入れ、と小さく声が聞こえてきた。
「失礼します」
ドアを開け、3人を執務室内に促すと、そこには椅子に座って書類仕事をしているジェルマの姿があった。
「とりあえず、座れ」
ジェルマに言われて、3人は部屋の中央にあるソファに座る。シエラは、3人の前に書類を1枚ずつ置いていった。
「とりあえず、昨日のコッカトリスの件だが、卵は無事に返せた。しばらくお前さんらを森に入れないってことで、事は収まった」
森に入れない、という部分に3人とも反応するが、下手をすれば街を巻き込んでの大戦闘にまで発展したかもしれない事案を、森への侵入禁止程度で済んだことを考えれば、まだ、軽い処分で済んだとみるべきか、と、小さくはい、と彼らは答えた。
「そこで、だ。森に入らないってのは、コッカトリスに対する誠意ってところだ。俺やシエラ、ギルドに対しての誠意はそこに含まれていない」
ジェルマの言葉に、3人はびくっと肩を震わせた。
「しばらくの間、お前らには若手の育成と教育、それと、街の清掃などの奉仕活動をメインとして行ってもらう」
その言葉に、ロイはバッと顔を上げた。
「3人とも、しばらく森に入れないってことですし、かといって、仕事がないのは困ると思いますので、今、人手の足りていない部分を積極的にこなしていただければ、と思いまして。若手の育成と教育に関しては、ギルドからの依頼、ということで少額ではありますが、報酬も出ますよ」
にっこりと笑うシエラに、ミシェーラは安堵の表情を浮かべた。
「ありがとう…正直、収入が途絶えるのは痛かったのよ。多少の貯えを、私はしてきたけど、他の2人は…」
ちらり、とロイとルカを見ると、彼らはそっと視線をそらした。
「ま、こっちとしても、人手が足りてなくて困ってたとこだからな。あ、あと、ロイ。お前から申請が上がってた、ダンジョンの20階層以下への探索申請。あれ、却下だからな」
ジェルマの言葉に、ロイはそんな!と抗議する。
「ロイさん?コッカトリスの習性すらも忘れてた方に、ダンジョンの下層の探索申請の許可なんて、出せるわけないじゃないですか。あ、そうそう。ロイさんはもう一度、魔獣講習、受けてくださいね。もちろん自腹です」
にっこりと冷たい笑顔で答えるシエラに、ロイはがっくりとうなだれた。