最強の人物は誰だ
「でーたーぞー!!!」
地上に出てきたシエラは、完全に外に出きったところで、大きな声で両腕をガッと上げて叫んだ。
(案の定、外は暗いけど。でもそんなことはどうでもいい!だって、仕事が終わったんだもの!!)
うぅ、と感激しているシエラをよそに、トーカスがシエラの首根っこをつかみ上げる。突然の浮遊感に既視感を覚えるシエラ。嫌な予感しかしない。
「さ、とっとと街に戻ろう!」
ぶらん、とシエラの体が動く。
「いやぁぁぁぁぁぁー!!!」
シエラ自身の身に起こっていることを認識した次の瞬間には、シエラはトーカスと共に風になっていた。そして、シエラの悲鳴は、暗闇に溶けて消えていった。
***
「お、覚えてなさいよ…」
商業ギルドの建物の前で地面にへたり込むシエラ。理由は言わずもがな、いつものコッカトリス運送便酔いである。
(いつもいつも、ゆっくり走ってくれってお願いしてるのに、なんであんな猛スピードで、人をブラブラさせながら移動するかな…!!)
シエラはマジックバッグからポーションを取り出して口に含む。
「あぁ、もう…念のためと思って持ってきてたけど。全部飲み切ることになるなんて思わなかった…」
ポーションにはいろいろと種類があり、体力を回復してくれるものの他にも、二日酔いを治すポーションや、今回のように乗り物酔いを治すポーションなんかも市販されている。
常に、何かあったときの為、と乗り物酔いを治すポーションを2・3個持っているのだが、今回はその念のためで持っていたポーションがとうとう底をつきた。
「何度も何度も言ってるけど、ブラブラさせながら移動しないで!せめて背中に乗せて!あと、スピードをもうちょっと落として!」
シエラが叫ぶと、トーカスはしれっとした様子で、早く着いたんだから良いじゃないか、と答えた。
「あぁ、そう。へぇ?そんなこと言うのね…」
「あ…」
シエラの表情に、地雷を踏んだことに気付いたトーカスは、慌てて悪かった、と謝る。
だが。
「なら、乗り物酔いを治すために飲んだポーション代、トーカスに払ってもらおうかな。だって、トーカスが早く到着することを優先した結果、私は乗り物酔いになったんだもの。いいわよね?」
にっこりと笑うシエラ。しかし、その眼は笑っていない。
「そうねー…トーカスはまだお給料をもらっていないわけだから、その分、食糧支給を減らせばいいわね?乗り物酔いを治すポーションの相場は、大体マイス100本分かしら?だから、暫くトーカスにはマイスの支給、無しでいいわね?」
「そ、そんな!」
シエラの足に縋りつくトーカス。しかし、シエラはしれっとした表情で続ける。
「あら、それでいいんでしょう?私のお願いを聞いてくれなかったし、そういうことになってもいいって、思ってたってことでしょう?」
シエラの言葉に、今度はトーカスが地面に手をついた。
「ふふふ、忘れているようだけど、私は今、あなたの飼い主なのよ?主人の言うことを聞かない悪い子には、お仕置きが待っているってこと、忘れないように」
そう言ってシエラは、次にコーカス達の方を向く。
「ね?」
暗に、同じ目にあいたくなければ気をつけなさい、という意味を込めて、にっこりと笑って言う。
「「「「「コケ!!!」」」」」
本能で、ここに逆らってはいけない人物がいる、ということを悟り、コーカス達はびしっと敬礼をして答えた。




