NEWスキル
とりあえず、逃げたと思われる穴をコーカスの土魔法で閉じてもらい、シエラはトーカスの倒したクイーンキメラアントの解体に取り掛かった。
「…大きいなぁ……」
横たわるクイーンの足。まだ、少し小刻みにピクついているその足は硬く、いい素材になりそうだなぁ、なんてことを考えながら、節毎に手早くばらしていくその様子に、コーカスは少し感心したような声を上げる。
周りに散らばっていた、クイーンを守っていた他の蟻達も、トーカス達に運ばれて近くに小さな蟻の山を作っていく。
「…これ、今日中に終われるかな」
思っていた以上に硬く、そして何よりも巨大なクイーンに、ようやくもぎ取れた1本の足を見つめながら、小さくため息をついた。
「まぁ、あっちの兵隊達は、コーカスの方で解体手伝ってくれてるわけだし、とにかく黙って解体していくかぁ」
首をコキコキと鳴らして、シエラは気合を入れなおし、作業を再開した。
***
「や、やっと終わった…」
約1時間ほどかけて解体し終えたシエラは、ちょっとだけ休ませて、と、クイーンの残骸をマジックバッグに入れると、そのままその場に座り込み、取り出した水をごくごくと勢いよく飲んでいった。
「コーカス達もありがとうね?なんか…解体スキルが入手できるほど手伝ってもらうことになるとは思わなかったわ」
今までは硬い顎部分だけをちぎり取ってもらっていたのだが、この部屋にあった兵隊たちはすべて、顎以外の部分も綺麗にばらされて、そして整理整頓しておかれていた。
「ていうか…サクラに至っては、整理整頓とかいうスキルまで入手してるじゃない」
明らかに解体能力が向上していると思ったシエラは、コーカス達を軽く鑑定し、解体のスキルを取得していることに気付いたのだが、サクラに関しては、解体以外のスキルまで入手していることが判明した。
「整理整頓て」
トーカスが、そんなものまでスキルがあるのか、と小さく呟く。
「まぁ、人間とか人型の種族なら、持ってることが多いスキルではある、かな」
乾いた笑いを浮かべるシエラ。
「でも、おかげでマジックバッグに片づけやすいし、助かるよ、サクラ。ありがとう」
シエラがにっこり笑ってお礼を言うと、サクラは小さく、いえ、と頭を下げた。
「さて、と。ここからまずは出ないとなんだけど…戻るの大変だよねー…」
すべての素材をきっちりとマジックバッグに詰め終えたシエラは、小さく唸った。
ここに来るまで、いろいろと作業をしながら進んできたとはいえ、かなりの距離を歩いてきたことは確かだった。しかも、くねくねと入り組んで作られており、まっすぐ最短距離で出口までの道がつながっている、というわけではないので、なおさらだった。
「んー、地上にはすぐに出られそうな距離なんだけどなぁ」
腕を組んで唸るシエラ。
すると、コーカスが何を悩む必要がある?と首を傾げると、ココ!と一鳴きした。
「え…!?」
コーカスの鳴き声と共に、さっきまでなかった通路が現れる。突然のことに驚き、少し固まるシエラに、コーカスはこれで時間をかけることなく出られるだろう?と翼をはばたかせながら言う。
「コーカス、すごい!!ていうか、魔法ってこんなことまでできるんだ!?すごいねー、便利だわ~」
できた穴に駆け寄り、頭を突っ込んで中を見てみる。
程よい大きさのその穴は、壁や天井もしっかりと固められていて、ちょっとやそっとのことでは崩れなさそうに見受けられる。地上へとつながる道も、一定間隔の階段がずっと連なっていて、歩きやすそうだ。
「よし、さっそくここを出よう!」
シエラはコーカス達に声をかけると、階段を勢いよく上っていった。




