再認識-2
「…あれ?」
風が舞った後、マーダーアントの威嚇音が聞こえなくなっていることに気づいたシエラは、そっと顔を上げて、部屋の入り口の方を見た。
すると、そこには首が取れてた状態のマーダーアントの姿があった。
「え?」
状況が理解できず、シエラは呆然と立ちすくむ。
床に目をやると、先ほどまで威嚇してきていたマーダーアントの頭部分がごろりと転がっていて、どうやら、部屋に入ってきたマーダーアントは、退治されたのだ、ということをようやく理解する。
「た、助かった…?」
へなへなとその場に座り込むシエラに、コーカスが大丈夫か?と声をかけてきた。
「我らがいるのだ、あのような三下に、後れを取るはずがないだろう」
コーカスの言葉に、シエラは涙を浮かべる。
「シエラも、索敵が常時展開できるくらいになっておいたほうがいいのではないのか?」
ククっと笑うコーカス。零れ落ちる前にグイっと涙をぬぐい、シエラは鋭い眼光で彼を睨みつけた。
「私はただの受付嬢よ!索敵スキルを常時展開なんて、そんな必要、人生において無いし、いらないし、そんな状況になんてあいたくないのよ!」
ガーガーとシエラがコーカスに食ってかかっていると、通路の方でドン!という強い衝撃音がした。
「え?」
通路の方を見ると、さっきまで部屋にいたと思っていたサクラと、姿を消していたラピが、嘴にマーダーアントを咥えた状態で現れた。
「あ…」
マーダーアントは1匹見つけたら10匹はいると思え。
その言葉を思い出したシエラは、思わず索敵スキルを展開する。
「し、下!」
地面の下に反応が2つ。シエラが叫んだ瞬間。
「ケー!!」
コーカスは叫ぶと同時に、シエラの服をグイっとつまんで、一気に部屋の端っこへと飛んだ。
「「ギギギー!!」」
さっきまでシエラ達がいた場所の地面が激しく揺れ、それと同時に地面から2匹のマーダーアントが姿を現した。
「「ケケ!!」」
サクラとラピが鳴くと同時に、マーダーアントの間で、小さな爆発が起こった。
「うわぁ!」
衝撃に思わず倒れそうになるシエラ。コーカスはそんなシエラを庇う様に、自身の翼でシエラを守る。
「…ふむ、これであらかた片付いたか」
翼をどけて、シエラにかかった土ぼこりをパッパッと払うコーカス。
「あ、ありがとう…これで、もう大丈夫?」
シエラはもう一度索敵スキルで周辺をチェックするが、近くに生物の気配はなかった。
「しかし、下によく気づいたな」
コーカスが言うと、シエラは夢中だったから、と、深いため息をつきながら、立ち上がった。
「ていうか、あのマーダーアントがこんな簡単に倒されるなんて…」
コッカトリス達の風切り羽により、切断されたと思われる、胴体と頭が離れたマーダーアントの死体と、先ほどの爆発で粉々になった無残なマーダーアントを見て呟いた。
(今は一緒にいるし、幸か不幸か、私がテイムしてる状態だからいいものの…これ、敵対行動とることになったら、一瞬で街が消えるね、確実に)
思わず頬が引きつるシエラ。
「さて、ここにある素材を回収したら、戻って先に進むか?」
コーカスに言われて、シエラはそうする、と小さく頷いた。
絶対に、コーカス達を敵に回さないようにしよう、と改めて心に誓いながら。




