大盤振る舞い-1
鉱山の中で、ナイトアントやメイジアントといった、上位種と遭遇し始め、配下のコッカトリス達を指揮しながら、壮絶な戦闘を繰り広げているトーカスをよそに、シエラはコーカスと一緒に、のんびりとお茶を飲んでいた。
「んー、そろそろ中に入ろうかな」
持っていたカップの中のお茶がなくなったところで、シエラは鉱山の方を見つめながら言った。
「そうだな。何やら面白い反応も増えてきているようだしな」
コーカスの言葉に、シエラは片付けをしていた手を止める。
「…面白い反応?」
コーカスの言う面白い反応なんて、自分にとって絶対に面白いはずがない。
直感でそう悟ったシエラは思わずコーカスに聞き返した。
「まぁ、入ってみればわかる」
コケ、とコーカスは一鳴きすると、咥えていたマイスを一気に啄んで綺麗に食べきると、そのままシエラの首根っこをつかみ上げ、自分の背中にシエラをのせ、大きく翼を広げて、地面をドン!と蹴り上げ、一飛びで入口へと移動する。
この間、わずか10秒。
「…なんだ。また文句でもあるのか?」
入り口に入ってすぐのところで、力なくコーカスから降りて地面にへたり込むシエラに、コーカスは呆れ口調で言う。
「せ、せめて、動く前になにか一言くらい言って…」
(こいつらは、私が人間だってことを忘れてるのかしら…)
自分と魔獣が違う種族だということを忘れているんじゃないのか。シエラにはそう思えてならなかった。
「面倒な種族だな、人間とは」
小さな声で呟くコーカスは、行くぞ、とそのまますたすたと中へと歩いていく。
「あ、ちょっと待ってよ!」
シエラは、マジックバックからポーションの入った小瓶を取り出して一気に口に流し込むと、慌ててコーカスの後を追った。
***
トーカス達が倒していったと思われるマインアントを手早く解体処理して持ってきていたマジックバックに詰め込みながら進んで行くこと約30分。
「あ…解体スキルのレベルが上がった」
手際が少し良くなってきたな、と思って自分を鑑定してみたところ、解体スキルのレベルが2から3に上がっていた。
「わー…もうこれ以上はあがらないと思ってたのに、上がっちゃったー…」
ちなみに、世間一般的な受付嬢は、元冒険者でもない限り、解体のスキルを持っていることはまずない。
「マインアントの解体とか、もう飽きたよー…とかって言ったところで、止めるという選択肢がないこの現実」
魔獣や魔物の死体を放置してしまうと、もれなくゾンビなどのアンデッド系モンスターとして復活を遂げてしまう。1日2日で復活することは滅多にないが、絶対にない、とは言い切れない。
場所が場所なだけに、外に出る前にアンデッド化されてしまったら、それは退路を断たれることを意味する。
「それにしても、トーカス達、この数を倒しながらまだ進んでるとか、すごいね」
シエラがボキボキとマインアントの足を胴体から外していると、顎を嘴で器用に外していくコーカスが、この程度はどうってことない、と翼をバサバサと動かした。
「まぁ、今はもうかなり深いところまで進んだようだからな。そろそろ、いい練習相手が出てくる頃だとは思うが」
(きっと今、めっちゃ悪い顔してるんだろうなー。)
楽しそうに答えるコーカスに、シエラはそっかー、と生返事を返した。
「ん…?」
マジックバックにマインアントの死体を片付けていると、奥から桜の花びらのような、綺麗な薄桃色をした鶏の姿が現れた。
「え?あれ、って…?」
鉱山の中にいる鶏と言えば、コーカス達の仲間のはず、とシエラは思ったのだが、記憶が確かであれば、あんな体色をしたコッカトリスは、確かいなかったはず。
「ふむ、どうやら何かを取得したようだな」
コーカスが言うと、薄桃色の鶏は、トトト、とコーカスに近づいていき、そのまま跪いた。




