コーカスとトーカス
「トーカス、どのくらいで戻ってくるかなー…」
外で手ごろな大きさの石を見つけたシエラは、そこに腰かけて、じっと鉱山の中の様子を探っていた。トーカスの反応は、鉱山の四分の一にようやく差し掛かったところか、というあたりをちょうど移動しているところのようだった。
「ゴブリンの時と違い、今回は鉱山の中だからな。下手な大技を使ってしまうと、自分たちも生き埋めになる可能性が出てくる。少々、時間はかかるだろう」
コーカスの答えに、シエラはやっぱりかー、と頬杖をつきながら呟く。
「トーカスが中に入ってから、卵の反応がどんどん消えていってるし、順調に進んでるっぽいから、まぁ、大丈夫だとは思ってるんだけど。とりあえず、半分くらい進んだら、私たちも中に入ろうか」
シエラは左右にゆらゆらと揺れながら言う。
本当は、終わって出てくるのを待ちたいところではあるのだが、トーカス達が倒していった魔物たちの処分をしてく必要がある為、中に入らない、という選択肢は、残念ながらシエラにはない。
「あ、そうだ。少し疑問だったんだけど、トーカスって、コッカトリスなんだよね?」
シエラが聞くと、コーカスは頷いた。
「そうだが…なんだ、急にどうした?」
聞かれて、シエラは慌てて首を横に振る。
「え?あ、いや、大したことじゃないんだけどさ。コーカスや他のコッカトリス達はみんな白っぽい色をしてるでしょ?でも、トーカスは真っ黒じゃない?鑑定ではコッカトリスって出てたから、コッカトリスで間違いないとは思ってたんだけど、もしかして、種族が違ったりするのかなーって思って」
シエラが言うと、コーカスはあぁ、と頷いた。
「それは、トーカスが使える魔法に関係していると思うぞ」
「え?そうなの?」
シエラが首を傾げると、コーカスはたぶんな、と続けた。
「トーカスはコッカトリスには珍しく、生まれつき、精神魔法が使えた。精神魔法は闇魔法の一種だからな、それが関係しているんだろう」
へぇ、と驚いたように相槌を打つと、体を起こして、真剣な表情でコーカスの話の続きを聞く。
「基本は白が多い。ただ、生まれた時に、白以外の色だった場合は、総じてその体色に応じた魔法が使えることが多い。トーカスのように黒ならば闇魔法系、我のように白でも特殊な体色の場合は光魔法系、赤ならば火魔法系、といった具合だな」
「あ、だからコーカスは、回復魔法が使えるの?」
昨日、能力査定に出た時に聞いた、コーカスが使える魔法のことを思いだす。
「そうだ。支援魔法系も得意だぞ」
「…ほんと、教会関係者あたりが聞いたら卒倒するね、確実に。いい?この件は私たちだけの秘密ってことで」
「わかっている」
シエラは眉間をもみながら、コーカスに言う。コーカスも、小さく頷いた。
現在、世間一般的に、回復魔法と呼ばれる類のものは、教会で洗礼を受けた司祭やシスターが使える魔法と言われている。それ以外で回復魔法が使えるのは、生まれた時から神の加護を受けた特殊な人物(主に聖人や聖女と呼ばれる類の人間)なのだが、ここ数千年は、現れた、という話は出ていない。
「まぁ、とりあえず。今度時間があるときにでも、ゆっくり検証していこうと思うから、その時(いつになるか知らないけど)は協力よろしくね?」
シエラが言うと、コーカスはわかった、と短く頷いた。




