蟻の駆除も、お仕事です-3
「コケ」
順調に巣の中を進んでいくトーカスだったが、今までの卵があった部屋よりも少し大きい空間につながる通路に差し掛かったところで、後に続いていたコッカトリス達に、止まるよう指示を出した。
(とうとう出てきたか…)
マインアントの成体と思しき反応が5つ、せわしなく部屋の中をウロチョロとしているのを確認した。
「さて…どうするか」
戦闘がばれてしまうと、他の仲間を呼ばれてしまう可能性が非常に高い。マインアントに後れを取ることはまずないが、それでも、下の方にあるマインアントの反応は相当数あり、それをこの閉鎖空間で対処するのは、トーカスには少々荷が重かった。
「コケーココココ、コケ」
幸い、こちら側にはトーカスの他にマインアントと同数の、五匹のコッカトリスがいた。
風切り羽で同時攻撃をさせれば、仲間を呼ばれることなく、部屋にいるマインアントを全滅させられると考え、トーカスは彼らに、各1体、マインアントをトーカスの合図と共に仕留めるよう指示を出した。
「コケ」
小さく鳴くと、コッカトリス達はマインアントに気づかれないよう部屋の入り口まで行き、息をひそめて中の様子を伺う。幸い、マインアントはこちら側に気づいていないようで、それぞれが忙しそうにちょろちょろと動き回っていた。
(指示のタイミングが少しでもズレたら失敗する。あいつらの射程距離に、五匹とも確実に入るのを待たないと)
トーカスは少し離れた場所で中の様子をじっと探り続ける。
(まだだ、まだ少し、奥にいる奴が若干遠い)
そう思っていると、一番奥にいた1匹が、入り口の方へと向かって歩き出した。
(きた!いまだ!!)
「ケケ!」
トーカスが短く鳴く。それと同時に、ビュオっと風が一斉部屋の中を舞い、マインアント達の頭が、胴体からスパッと切り離されていった。
「ふむ、風切り羽での攻撃の精度もやはり申し分ないな」
トーカスは部屋の中へと入り、転がっているマインアントを見ながら呟いた。
(この調子なら、もう少し数が増えても何とかなりそうだな)
「コケコー…」
トーカスはコッカトリス達に、先へ進むぞ、と声をかけ、さらに奥へと進んで行った。