第二話
「よっしゃ! トロピカルフルーツが百個集まった! やっと水着と交換できるぞ!」
モンスターからのドロップアイテムで興奮する俺。
夏休みに突入して二週間目。
俺は…………黒い平原のサマーイベントに励んでいた。
それも、たった一人で――――。
「えーと、夏用の武器と防具も交換したし、あと交換できるのは適当な消費アイテムだけか」
俺はエアコンをきかせた自室でパソコンと向き合う。
夏休みに突入してから、ひたすらネトゲをしていたおかげで、あっという間にサマーイベントを終えてしまった。
睡眠時間も削るという本気の姿勢である。
「…………俺、何してんだろ」
水着姿になったカズ(ウォリアー)を見つめて我に返る。
程よく鍛え抜かれた男の上半身が眩しい……。
これで防御力が初心者装備の鎧よりも高いのだから不思議だ。
「はぁ…………いつもと変わらない夏休みー」
机の端に置いていたスマホからピロンと軽快な音が鳴る。画面を確認。
橘からメッセージが届いていた。
『よう綾小路! 来週プールに行こうぜ!』
お、プールのお誘いか。
せっかくだし行こうかな。
おそらく都内の大きいプールだろう。
『了解』
『あ、言い忘れていた。プールの屋外施設でアイドルのライブをやるらしいぜ。詳しくは調べてねえけど何組か出るらしい』
『へ~』
あんまり興味ないかもしれない。
俺が好きなアイドルは凛香だけだしなぁ。
あと関わりを持った胡桃坂さんと清川を応援してるくらいか。
『スター☆まいんずも出るってよ』
『なんだと⁉︎ それを先に言ってくれ!』
ならもう絶対に行くしかない!
だがスター☆まいんずが出るとなると人混みが凄そうだな。
……いや、そんなことでビビっている暇はない。
何だかんで俺はスター☆まいんずのライブを生で見たことがない。
今回が良い機会だろう。
『じゃあ来るんだな? 斎藤に伝えておくぞ~』
『わかった。よろしく』
プールに行くメンバーは俺、橘、斎藤の三人か。いつもどおりだな。
それでも楽しみに思うの変わらない。まあライブに行っても直接凛香と話せるわけじゃないけど……。それでも一人のファンとして楽しみなのは変わらなかった。