第二十七話
昼食を終えた俺たちは凛香の部屋に移動する。相変わらず綺麗な部屋だ。お腹の調子も問題ないので一安心である。
俺たちは他愛もない話で二人の時間を過ごす。ネトゲやアイドルの活動、学校の話について……。
どれほどの時間が経過したのだろう、ふと窓から見える空がオレンジ色に染まっていることに気づいた。自然と話が途切れ、凛香と俺の間に静かな時間が流れ始める。
「…………」
「…………」
肩と肩がぶつかりそうな距離に座っている凛香。とても近い距離感に急にドキドキ感が募っていく。理屈ではなく、今では?と感じた。夕方特有の雰囲気がそう思わせたのか、二人きりの特別感のせいか……。
俺は深呼吸に近い呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着ける。
そして、口を開いた。
「凛香、話がある」
「どうしたの? そんな改まって」
「凛香は俺に素直な好意を向けてくれる……それに応えたいと思っていたんだ」
「ええ…………?」
「でも前にも言った通り、これが本当に好意なのか分からず……。けど最近、ようやくハッキリしたんだ。俺は凛香のことが――――」
「待って」
「え」
まさに言おうとした直前、待ったをかけられた。
「和斗くんの真剣な想いは伝わってきたわ。でも……」
「でも……?」
「ずっと隠すつもりだったけど……よくないわね」
「何の話?」
「ごめんなさい。実は私、秘密にしていることがあるの」
「どんな秘密……?」
「……もしかしたら、和斗くんに嫌われてしまうような秘密よ」
うつむいて喋る凛香に、俺は意識が遠のいていくような気がした。
この俺が凛香を嫌いになる……。それはもう、とんでもない秘密に違いない。
「和斗くんは懸命に私に想いを伝えてくれようとした……。その想いに応えるためにも、私は私の秘密をばらすわ」
「凛香……」
「実際に見てもらった方が早いわね」
そう言うと、凛香は立ち上がりクローゼットに向かう。一度チラッと俺に視線を飛ばしてから、取っ手に手をかけてゆっくり開いた。俺も立ち上がり、クローゼットに向かう。凛香の隣に立ち、中を確認してみた。
「…………?」
何もおかしいところはない。オシャレな私服が並んでいるだけで何もおかしなところは――――ん? 下にフェルト人形が四体どっしりと座っている。サイズは抱きかかえられるほどか。そのフェルト人形は見覚えのある姿をしていた。鏡を覗けば必ず目にする姿――――。
そう、俺だ。
俺を模した可愛らしいフェルト人形が四体、そこで堂々と鎮座していた。