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廃病院の悲鳴  作者: 安
1/2

第一話 肝試し

1996年9月12日。

s市、加来山。

時刻は午後九時を回っている。

九月の夜とはいえ気温はまだ高い。じりじりとじわむような蒸し暑さがある。

そこに、派手なエンジン音が鳴り響いた。

乗っているのはステテコに半袖という軽装の男だ。暑い向かい風がステテコをたなびかせる。

大河は乗ってきた原付を雑に止めると、山道の入り口で待っていた二人に声をかけた。

「わり、遅れたわ」

「別に、五分くらいだし」

三人は何となく山を見上げた。

山の頂上には、今はもう使われていない廃病院がある。

廃病院といっても、”病院”と呼ぶのは少し語弊がある。

この病院が現役で使われていた当時――もう二十年は前の話なのだが――この市では異常な指導が行われていたという。教師の言いつけを守らなかった小学生を精神病と決めつけ、この病院に監禁し、「教育」をしていた、というものだ。

そのためこの病院の窓にはすべて鉄格子がつけられ、扉は一つしかなく重い鉄でできていた。全て「精神病患者」の脱走を防ぐためだ。

しかしある時、事件が起こる。度重なる「教育」に耐えかねた一人の女の子が、病院で首吊り自殺をした。だが細い縄で首を吊ったため、女の子の体重によって、首が切断されてしまったのだ。その際苦しんで暴れたことで髪が縄に絡まり、頭は空中に浮かんだままという悲惨なことになった。

この小さな女の子のあまりに惨い最期が全国で報道されたことで、S市の教育方針は問題視され、この病院は使われなくなったと同時に、この話はS市内でタブー視されるようになっていった。

しかし不謹慎なことに、この廃病院には亡くなった女の子の霊が出るとか、酷い体験をした子供たちの怨念が今もまだ漂っているとか、大学生を中心に噂が出るようになっていき、病院が人里離れたところにある、普段はだれも近寄らない、というところから格好の肝試し会場となってしまった。

大河たちが集まったのも、このためである。


山道は意外と登りやすかった。

喧しく蝉が鳴き、懐中電灯の光には小さな虫が集まってくる。

もうとっくに日は沈んでいるというのに三人は大粒の汗をかいていた。

とても肝試しなんて雰囲気ではない。

だがそれも、次第に勾配が緩くなり、目の前に開けた駐車場が現れると、暑さを気にしている余裕もなくなった。

駐車場には車は一台も止まっていない。それにあまり人が来ないためごみが散らかされたりということも無い。実際ほとんどの大学生たちは、この廃病院の話を持ち出すことはあっても、実際にここに来るほどの勇気は持ち合わせていなかった。

肝試しに来たのはこの三人が初めてだ。

荒らされているところもない。

「なあんか、期待外れって感じだな……」

翔が、ペッ、と唾を吐きながら言った。

「いや、まだだぜ。メインディッシュはこの奥にある」

懐中電灯を持って先頭を歩いていた竜也が振り返って言った。

「駐車場なんかを見に来たわけじゃねえよ。そもそもここは最初から作りも雑だし」

竜也は黄色と黒のロープが張られただけの地面を電灯で照らした。

「まあそうだけどよ……。前菜がこんなんじゃあな。病院はどこだ?」

「あ、見えたな。あれか」

大河が指さした先に、アパートほどの大きさの二階建ての建物があった。

廃病院だ。

暗いので全体像はさすがに見えない。が、その苔むした壁と、狂気を発散し続ける鉄格子は、三人を威圧するのに十分な迫力を持っていた。

「……入ってみるか」

「すげえ迫力だな……思わず黙っちまった」

竜也は無造作に鉄扉に近づき、取っ手をつかむと手前に引いた。

「結構重いな」

「カギかかってねえのか?」

「そうみたいだ」

二人がかりで扉がようやく開くと、中からひんやりとした風が漏れてきた。しかし決して気持ちのいい冷風ではない。かびたような饐えたような、毛を逆立てさせるような冷気だ。まるで何百年も前から空気の入れ替えをしていないような雰囲気があった。

三人は無言で中に入った。

最後尾の大河が扉を静かに閉めた。

その時だった。

安易に廃病院へやってきた三人を脅かすかのように、破裂音とともに、一瞬振動が起こった。

このシリーズはまだオチしか決まってないのでいつ終わるかホント分からないです。

勢いだけで書きました。

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