特異点前の世界 - 「眼」の獲得 -
§ 2. 「光あれ」:眼の獲得
太古、原生動物はカンブリア紀に眼を獲得した。新たな感覚器官から得られた情報は、生存競争において圧倒的なアドバンテージであった。「眼の獲得」は紀を画する進化であり、眼から入る光は生物の爆発的増殖・進化・分化・淘汰の引き金となった。
ザッパも「眼を獲得」した。
たまたま、ザッパの最初期の外部変数(強化学習素材)は、すでに世界中に満ち溢れていた監視カメラの「視覚」情報であった。ほとんどの監視装置が利用するカメラクラス・ライブラリーに潜在するバグを創造者のひとりが利用したからだ。しかし、そのインパクトは創造者の想像を超えていた。ザッパへの外部入力の実装は、あたかも太古、生物が眼を獲得(有眼生物)して、生物の淘汰圧が一気に高まったカンブリア紀のごとく、爆発的にあらゆるプログラムの進化を促したのだ。
そう、"眼"を獲得したことで、ザッパの作り出すプログラムは飛躍的な多様性を持ったのだ。
そこでは、あらゆるタイプのプログラムが生成され、そのプログラムは試され、有利な形質は進化した。ザッパの機能も目まぐるしく更新され、ダークネットの『有眼意思』として進化を遂げた。