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Utopia Endless Online~音ゲーマニアがいくVRMMORPG  作者: 赤井レッド
欲を使役し欲に呑まれた英傑よ
8/138

音ゲーマニアがフレンドと徹夜でプレイするようですよ


俺は現在物凄く後悔している。それは遡ること数時間前のことだ。


~~~~~~~~~~

数時間前


テンションの上がっていた俺は麟と共にオールでUEOをすることを約束した後、風呂と夕飯を手早く済ませALIENを三本冷蔵庫から確保し部屋に戻った。


その時の時刻は約7時、ダイブする前に忘れずALIENを飲むと脳が冴え渡る感覚を感じ、最高のコンディションでオールへと挑んだ。


「おっすー、ちゃんと準備は出来てるか?」


「もちろん、ALIENも飲んだし抜かりはない」


「流石だねぇ、よし!じゃあ行きますか」


そこから先は先程と同じように狩りに狩りを重ねて経験値とドロップアイテムを死ぬほど集め続けた。俺のジョブである修羅の効果でモンスターが寄ってくるので狩りが捗ったのが幸いし、麒麟は開始から5時間程でLV50に到達した。


この狂行とも思えるレベリングの前に俺は麒麟に『魔王の護符』を貸しておいた。恐らくそれも影響してこれだけ早くLVが上がっているのだろう。


「よっしゃ!LV50になったぜー!」


「よし!俺もLV60だ!じゃあ王都で三次職にジョブチェンジするわ」


「OK~ついでにまた装備の新調するかー」


UEOでは一般的なMMORPGと同様に武器や防具を装備する際には必ず必要ステータスを満たす必要がある。そのため俺達はLVが上がるたびにステータスポイントを振り、その時点での最も強い装備を購入して狩りに挑んでいた。


エイミーが貴重だと言っていた転移アイテムはどうやらどのモンスターからでも極々稀にドロップするアイテムだったらしくレベリングの最中に腐るほど獲得した。


「転移!王都ゼルキア!」


俺の言葉に反応するように転移アイテムであるスクロールは消え、代わりに俺達を王都へと転移させた。


~~~~~~~~~~


俺達、もとい、俺は見つかると騒ぎになりかねないので、素早く路地裏に隠れる。


「ふぅー、やっぱりGENZIと一緒に街に来ると毎回この瞬間がドキドキするわ」


「俺だって内心ビビりまくりだよ、それよりいつもの店行こうぜ」


「おう!」


路地裏を縫うように歩くこと数分、王都の路地裏の奥底、まるで迷路のように入り組んだ道を歩いていくと一つのプレイヤーメイドの鍛冶屋に辿り着く。その名を『鉄血武具工房』。


開きっぱなしの扉から中に入ると土精族(ドワーフ)の屈強な上半身を露わにしているプレイヤーが奥から出てくる。


「ん?またお前たちか…今度は何の用だ?」


「うっす、ガンツさん。今回は俺は防具の生産かな」


「俺は武器と防具の強化お願いしまーす」


「分かった分かった、そこで待っとけ」


あっちに行けと手で追い払われ、仕方がないので少し離れた所からガンツさんが防具を作るところを見ている。


見ているこちらにまで伝わってくるガンツさんの集中力と、炉の熱気は何度見ても圧巻としか言いようがない。


「よし、完成だ。坊主!GENZI!出来たぞ!」


野太く迫力のある声が俺達を呼ぶ。


「なあガンツさん、なんでGENZIはGENZIなのに俺は坊主なんだよ」


「お前は坊主で充分だってことだ、ほらよ」


「「ありがとうございます!」」


やはり素晴らしい出来だ。ガンツさんの造った武器・防具は全てが最高品質の物なのだ。


UEOの生産職が造るアイテムは例外なく全てに品質が存在する。品質は、ガタガタの~、職人見習いの~、職人の~、名工の~、至高の~、五段階評価で表され、アイテムの品質は純粋にプレイヤーの技術がものをいうためガンツさんの凄さがよく分かる。


そんなガンツさんとの出会いは偶然だった。俺がプレイヤーにバレると何かと面倒なので、麒麟と共に路地裏に入り鍛冶屋を探して彷徨っているとこの店に辿り着いた。


「ふん。用が済んだならとっとと行け」


店を出ると思わず麒麟と顔を見合わせ笑ってしまった。


「ガンツさんも大分丸くなったよな~」


「ああ、最初何て、俺は自分の目で認めた奴にしか装備は作らん!とか言って追い返されたからな」


「でもGENZIのその刀を見せたらすごい驚いてたよな」


「コイツらを持ってなかったらガンツさんとの縁もなかったかもしれないな」


そう言って腰に下げている『不知火』と『狂い桜』を撫でる。


「さて、次はGENZIのジョブチェンジかな?」


「はあ…行ってくるよ…」


ため息交じりに答える俺を麒麟は笑い飛ばした。


「そんな気を重くすんなよ、前に面倒なことになったっぽいけど今は俺もついてる」


「ありがと、それじゃあ行ってくるわ」


背後で何故か応援をしている麒麟に振り返らずに手を振り、俺は神殿へと向かった。


~~~~~~~~~~


(プレイヤーにバレませんように…)


その一心を強く思いながら、俺は家屋の屋根を走っていた。


恐らくこれが最もバレにくい…と考えたからだ。少しでも上に視線を向けると俺の姿は見えてしまい、屋根を走っているので奇異の目で見られることになるが一瞬であれば見られても問題はない。


屋根伝いに神殿を目指して走りようやく目的地に到着した。


急いで門を潜り、インスタンスマップの中に入る。


「ふう…これでひとまず安心だな」


安堵の一息をつき、階段をゆっくりと登って神殿の中に入った。


「ようこそ、冒険者様。おや?貴方は先程も来ていましたね。本日は如何なされましたかな?」


前と同じ神官が俺に声を掛ける。というか俺というプレイヤーのことを認識しているとは恐るべきNPCだな。


「ジョブチェンジを頼む」


「かしこまりました。それではこちらに」


前回と同じく奥へと進み、祈りの姿勢を作る。


「それでは神に問いかけてください」


神官の次の言葉を待たずに俺は心の中で問いかけた。


(神よ、私に新たなる導きを)


すると、また選択肢が表示された。今回の選択肢もまたしても()()だった。


一つ目は侍。これはSTRとDEXにステータスをつぎ込み一撃で敵を仕留めるスタイルをとるジョブの様だった。ロマンは感じるが二刀流だと意味がないようなので却下。


二つ目は武士。侍との違いを述べるとすればこちらは万遍なくステータスが上昇し、主にHPやVITが上がりタンクとなれることだろうか。無論今更固くしても手遅れなので、このジョブも却下。


三つめはモンスターハンター。純粋にモンスターを狩ることに特化した性能になっており、恐らく麒麟とモンスターを狩り続けていたため出てきたのだろう。まあモンスター特定なので却下。


そして四つ目は修羅の上位職とも思えるものだった。


羅刹、それがそのジョブの名前だった。ステータスは今のままさらに強化したようなものになっており、スキルはさらに癖が強くなった分強力となっている。

そして羅刹には今までなかった魔法が存在した。それが決め手となり、俺は羅刹を選ぶことにした。


前々から一度、魔法を使ってみたいと思っていたのだ。それがこのような形で叶うとは思ってもなかった。


そういえば、羅刹になったことでステータスやスキルが大幅に強化された分、さらにデメリットが大きくなっていた。


デメリットの説明文を丸々読むと、呪いの力でHP、VIT、MNDに大幅なマイナス補正、被ダメージ二倍、と書いてある。どのみち元々攻撃を受けたら終わりに近かったのでこのデメリットは許容範囲内だろう。


むしろメリットの方が大きい。鬼の力でSTR、DEX、AGIに大幅な補正、与ダメージ二倍、攻撃が命中した際、稀に鬼の力で追撃を加える、とのことだ。


ちなみに現在の俺のステータスはというと、


Player:GENZI

Gender:男

Job:羅刹

Clan:無所属

HP:5

MP:50

STR:500

DEX:450

VIT:5

AGI:300

INT:30

MND:5

LUC:80


といった具合だ。どうやら羅刹の効果でHP、VIT、MNDは半分になったようだが別に問題はないだろう。実際はこのステータスよりも高い値になる。

それは装備の分を含めるためである。


UEOでは武器防具を装備すると、ステータスに装備の分の数値が上乗せされるので他のMMORPGよりも解りやすい、と麒麟が言っていた。


現在の俺の装備は、


Weapon:Left:獄刀『不知火』Right:血刀『狂い桜』

Helmet:結晶蝶の仮面

Armor:蛮竜の鎧

Gauntlets:蛮竜の籠手

Leggings:蛮竜の腿当て

Greaves:蛮竜の脛当て

Accessories:装備なし:装備なし:装備なし:装備なし:装備なし


こんな具合である。最初の布装備とは打って変わり今では軽鎧だ。フルプレートにも出来るようだったのだがそうすると如何せんAGIにマイナス補正がかかって戦い難くなるため、現在の装備だ。


蛮竜シリーズにはSTRに補正があり、各部位で+10程は上昇している。蛮竜とはいえ、Tipsいわく、竜というのは下級の龍のことらしく、蛮竜は所謂レッサードラゴンに含まれるらしい。


そしてこの結晶蝶の仮面は、見た目がカッコいいから選んだわけではなく、ちゃんとした理由がある。装備するだけでAGIに補正+20に加え、驚くべきことに任意で自身の名前の表示を隠すことが出来るのだ。


結晶蝶は麒麟とレベリングをしている際に偶々見つけ、運よく勝利したためその時の素材で装備を作ったらこのような性能だったというただのラッキーである。


ガンツさんも言っていたが、武器や防具は素材で性能が変わると言っても過言ではないそうだ。後から判明したことに結晶蝶は夜のごく短い時間以外は透明化しているため非常にレアなモンスターらしい。


麒麟も装備を強化し、ステータスが上昇したようだ。因みに麒麟は二次職として銃士を選び今は銃を使っている。ただ、銃とは言っても近代的な自動小銃とは異なりフルオートで連射することはできない。

見た目も性能も完全にマスケット銃なのだが麒麟が使うとこれが化け物に代わる。


狩人として弓を使っているときも命中率が良く、助けられる場面は多かったが、今は前線に出てモンスターの攻撃を躱しながらマスケット銃で攻撃するという謎の戦闘スタイルを確立している。


前線へ出てくれる分確かに俺への負担も軽くなるのだが、危なっかしいから止めてくれと言ったところ、


「GENZIにだけは言われたくないセリフだね…」


と言い返されたのでそれ以上の追求はしなかった。


色々あったが、その後も俺達は狩りを続け、夜更けまで止まることはなかった。ただ一つ誤算があったとすれば、MMORPGは音ゲーの何倍も疲れるということだ。


~~~~~~~~~~


「ああー…しんどい…麒麟と前に音ゲー三徹耐久したときはこんなに辛くなかったんだが…」


俺に近づいてくる狼型のモンスターを縦に真っ二つに斬る。


「そうだね…俺も久しぶりだから結構辛いや…FPSだったらこんなことなかったんだけどなぁ…」


麒麟も草陰に隠れていたモンスターをマスケット銃で撃ちぬいた。


確認した現在時刻は4:28。もうすぐで午前四時半になろうかという時間であった。


「なあ、今日はもう十分やったから少し寝ないか?」


「それは賛成、ちょっと舐めてたなぁ…それじゃあまた後でやろうね」


「ああ、おやすみ?」


「うん、じゃあね~」


力なく手を振ると麒麟はログアウトしていった。


さて、俺もログアウトして少し安らかな眠りを得るとしようか。メニューからログアウトのボタンをタップし、いつもの空間に来る。


「お帰りなさいませ、GENZI様。大丈夫ですか?酷い顔をされていますが…」


「ああ、大丈夫だ…俺はログアウトして寝るから。おやすみー…」


「そうですか…それではまたのプレイをお待ちしております」


~~~~~~~~~~


ログアウトするとともに俺はウトウトと、眠気に襲われ、その眠気を受け入れた。


~~~~~~~~~~


Utopia Endless Onlineについて語るスレPart1


1 名も無き冒険者 2047/04/27 20:48

このスレはUEOでの出来事を語るためのスレである。

何を話そうと私は一向に構わん。


2 名も無き冒険者 2047/04/27 20:49

じゃあ早速だけど有名プレイヤーについて語り合うとかどうよ?


3 名も無き冒険者 2047/04/27 20:50

有名プレイヤー何かいるの?


4 名も無き冒険者 2047/04/27 20:52

うーん『魔王』とか?


5 名も無き冒険者 2047/04/27 20:52

あの人は確かに有名だな。確かどっかの有名クランのリーダーだった気がす。


6 名も無きTHE Q 2047/04/27 20:53

クラン『暴風の渦』のリーダーですね。


7 名も無き冒険者 2047/04/27 20:53

>>6

本物のTHE Q氏?


8 名も無き冒険者 2047/04/27 20:54

>>7

恐らくそうだと思いますよ。


9 名も無き冒険者 2047/04/27 20:55

THE Qって誰っすか?


10 名も無き冒険者 2047/04/27 20:56

THE Qと言えば結構な有名プレイヤーだぞ。

確かクランランキング二位の『暴風の渦』と競ってるクランランキング三位の『午後の社畜騎士団』の主力メンバーだお。

クラン戦では後方からの指揮で勝利に導いたとか何とか。


11 名も無き冒険者 2047/04/27 20:57

解説にきあざっす。


12 名も無き冒険者 2047/04/27 20:58

何かヤバいルーキーを見つけたんだがWW


13 名も無き冒険者 2047/04/27 20:58

>>12どんな奴?


14 名も無き冒険者 2047/04/27 20:59

二人パーティーでどっちも装備的に初心者っぽい。

でも動きが完全に初心者のそれじゃなくて、戦い慣れしてるって感じ?

あ、あと一人は両手に刀を持ってブンブンしてるんだけど、何か持ってる刀を俺見たことないんだよな…


15 名も無き冒険者 2047/04/27 21:00

>>14

続きはよ


~~~~~~~~~~

357 名も無き冒険者 2047/04/27 23:57

>>15

悪い遅くなった。

代わりにすげーもん見せてやるよ。

下の動画再生してみ?


http://Utopia Endless Online~~~~~~~~~~~~~~


358 名も無き冒険者 2047/04/27 23:58

は?何だこれ?

スレ遡ってみてきたけど、コレまさかそのルーキーだとか言わないよな?


358 名も無き冒険者 2047/04/27 23:58

>>358

そのまさかだよ。

あのあとずっと跡をつけてて、いくつか動画撮ったんだよ。

これはその中の一つ。


359 名も無き冒険者 2047/04/27 23:58

この刀振ってる方さ、名前見えちゃってるのよね。

でさ、その名前見たらGENZIって書いてあるのよね。

GENZIって最近耳にした名前なのよね。

まさかとは思うけどUEO初のユニーク攻略者である、あのGENZI先輩じゃないよね?


360 名も無き冒険者 2047/04/27 23:59

>>359

その通りだよ。

GENZI先輩が持ってる刀の写真を知り合いの鍛冶師のプレイヤーに見せたら間違いなくこれはユニーク産だってさ。


361 名も無き冒険者 2047/04/27 24:00

皆GENZI先輩の方にだけ目がいってるけどさもう一人のプレイヤーも凄くない?

俺も銃使ってるけどこんなの絶対真似できないわWW


362 名も無き冒険者 2047/04/27 24:01

ちょっとGENZI先輩について語るスレみたくなってきちゃったから別に新しくスレ立てるわ。

>>357

今すぐその動画消した方が良いぞ?プレイヤーの名前が載ってる盗撮動画なんて運営に見つかったら最悪垢BAN喰らうから。


363 名も無き冒険者 2047/04/27 24:01

>>362

了解、俺も垢BANは嫌だからすぐに消すわ。

それじゃあGENZI先輩とそのお仲間さんについて語り合う人は別スレに移動しますか。


~~~~~~~~~~~~~~


こうして当人たちの知らぬ間に噂は驚くべき速度で拡散された。異常なまでの速さでレベルを上げる二人の初心者(ニュービー)として瞬く間にUEOで有名になるのだがそれを当人達は知る由もない。


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