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Utopia Endless Online~音ゲーマニアがいくVRMMORPG  作者: 赤井レッド
踊れ!砂塵と唆毒の狂騒曲
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毒蠍ヨ侵シ蝕ミ唆セ 拾伍

PV回数五十万回を突破しました!

これも偏に読んでくださる皆様のおかげです……

今後も更新を励んでいきますのでよろしくお願いします

(*- -)(*_ _)ペコリ


「GENZI君? ぼーっとしてましたけど、大丈夫ですか?」


「え、ああ。ごめん」


俺とクロエは今、バルバロスの中央広場で麒麟と、クロエが呼んだというフレンドを待っている。

昼間は燦燦と降り注いでいた陽が今は西の地平線へと消えようとしており、紺青色の空には白い星々が散りばめられ街中にも明かりがつき始めている。

事前に皆には【ウェネーウム】が夜にしか戦えないということをメールにて伝えていたので、UEO内の時間が夜になるタイミングを見計らって今の時間というわけだ。


俺は自身の唇をそっと撫でた。

うっかりとした拍子に脳裏に焼き付いた昨日の事が鮮明に思い起こされる。

あの後はいつの間にかログアウトしていて、気が付いたら朝になっていた。

あれが夢であってくれたなら楽だったのになあ……

はぁ、と溜息を吐いた俺の顔を心配そうに覗き込むクロエの大きな瞳を見て、心がチクチクと痛み、罪悪感に蝕まれた。


「おいっす~、来たぜ~」


「お、麒麟」


人混みの中を掻き分けるようにして、ベンチに腰かけていた俺とクロエの元に歩み寄ってきたのは麒麟だった。その後から続くように、もう一人見覚えのあるプレイヤーが姿を現した。


「やっほ~。来たよ~クロ……エ……?」


俺と同じくらいの背丈の人族のプレイヤーで、白いローブを身に纏い、紅の髪を後ろへと流している。俺のアバターとは違い、恐ろしいほどに顔の整った男性プレイヤー。その特徴的な名前と、先日行われたイベント本選での戦いぶりは記憶に新しい。


目を剥いた俺と麒麟の声が重なる。


「「ぽてとさらーだ!?」」


「えぇ……?」



「――というわけで、これからこの四人でユニーククエストを攻略しに行くわけです。あの……GENZI君……? どうかしましたか?」


「……別に、」


どうしてかは分からないが、ポテが来てからGENZI君の口数が少なくなった。

それに心なしかポテのことを睨むように凝視しているし……

今も少し態度がいつもに比べて尖っているような印象を受けた。


「ねぇねぇ、どうしてあのGENZIさん? 俺の事を睨んでくるのかな?」


「さぁ……私にもさっぱり分からないですけど……」


ポテは音を手で遮るようにして、小声で私に話しかけてきた。

だが、すぐに得心がいったかのように手を打つと、ポテは何故か私の肩に手を回した。


「……? ポテ?」


「ん~? いや、別に意味は無いけどさ~」


そう言うとポテはちらりとGENZI君の方を一瞥し、ふっと勝ち誇ったかのような笑みを浮かべた。ポテが何を考えているのかは全く分からなかったが、そのまま説明を続けることにした。


「それで――」



一体何なんだ、あの男は。

先程からこちらに見せつけるようにしてクロエにベタベタと触ったりして……

何故かそれを見ていると心がざわつく。

すぐにでもあいつのことを摘まみだしてやりたい、などと考える俺はおかしいのだろうか。

おかげでクロエの話していた作戦が頭に入ってこなかった。


大通りの人混みの流れに従ってバルバロスの外へ向かい、歩いている中、背後から麒麟が話しかけてきた。


「大分苛立ってますねぇGE・N・ZI・君?」


「……別に苛立ってない………」


「いやいや、そんなにぽてとさらーだ氏のことを睨みつけながら言われても説得力が欠片もありませんよぉ?」


睨んでいた? 俺が?

そんなつもりは一切なかったんだけど……


「そういうのってぇ、何ていうか知ってる? あははははっ! ぐげっ!」


何故か物凄くイラっとしたので頭を『不知火』の鞘で叩くと、背後で呻き声をあげる麒麟には一瞥もせずに歩き去った。



街の外へ着くと、俺は音を頼りに近くの【リトル・スパイダー】に声を掛け、【エンシェント・スパイダー】を連れてくるように頼んだ。すぐに砂の中へと潜っていった【リトル・スパイダー】の報告が早かったのか、【エンシェント・スパイダー】はその姿を一分と待たずに現した。


「……待たせたな……今日は四人か……これまでに無かった顔もある……」


「助っ人を頼んだんだ。昨日様子見に一人で跳び込んだが【ウェネーウム】は俺とクロエの二人だけで勝てる相手とは思えなかったからな」


「……そうか……某はご主人を弔ってやれるなら何人だろうと構わない……」


「全員背中に乗ってくれ、イラーフ飛泉までこの【エンシェント・スパイダー】が連れて行ってくれる。その間に俺が昨日様子見で手に入れた情報を教えておく」


一足先に足を折りたたみ、背に上りやすくしてくれている【エンシェント・スパイダー】の背に乗ると、後に続くように他の三人が背に飛び乗ってきた。それを確認すると【エンシェント・スパイダー】は立ち上がり、一歩一歩地面を揺らしながら歩き始めた。


「さて、情報を教える前に、軽く自己紹介をしておくか。ぽてとさらーだとも顔を合わせるのは初めてではないけど一応な。プレイヤーネームはGENZI、武器は刀だ」


「じゃあ次俺いきまーす。麒麟でーす、武器は銃使ってますぅ、よろしく」


「クロエです、片手剣と盾、それと魔法が使えます。よろしくお願いします」


「じゃあ最後は俺だな、ぽてとさらーだです。攻撃手段は主に魔法、支援系の魔法も使える『賢者』なんでどんどん使ってくださいね~」


あ、と思い出したかのようにぽてとさらーだは一言付け足した。


「俺……あ、いや、()()()()()()()()()()


「「へ……? ……えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!?」」


陽が完全に地平線の彼方へと沈み、月が昇り始めた空に俺と麒麟の驚愕に濡れた絶叫が木霊した。



「あはは~ごめんね、反応が面白かったからついからかっちゃった」


「つまり、ぽてさらはクロエの現実での友達だと?」


「はい……すいません、紹介するのが遅れてしまって。()()は所謂ネナベというやつです」


「答えたくなかったら別にいいんだけど、ぽてさらってもしかして俺達と同じ学校だったり……」


「はい、そうですよ」


「やっぱりかー……」


頭を抱えた俺を不思議そうに見つめる、状況を理解していない俺以外の他三人に向けて、俺は言い放った。


「俺達全員同じ高校だわ……」


「「「ええぇぇぇぇぇ!?」」」


クロエとの出会いも奇跡的なものではあったが、まさかうちの学校の生徒とまたUEOを通して面識を持つことになるとは思ってもいなかった。

ただ、UEOは国内外問わずに大ヒットタイトルであり、日本でも売り上げ本数が確か発売四か月目の現在で六百万本を突破しているほどだ。それだけ売れていれば身近にプレイしている知り合いがいてもおかしくはないのだが……


まぁ、と俺は切り出した。


「とりあえずその話は置いておいて、今は昨日の様子見で俺が見た攻撃パターンとかを教えるぞ――」



俺が情報を伝えきると、再び作戦を練り直し、全員が納得するまで話し合いを続けている内に目的のイラーフ飛泉に辿り着いた。


「『蛇神』はもう来てるのか?」


【エンシェント・スパイダー】は大きな頭を縦に振る。


「……ああ……某と蛇のは砂嵐を防ぐために集中するから手助けは出来ない……あとは頼んだぞ……」


俺は頷くと、昨日と同様に滝の流れ落ちていく滝壺の水面に浮かぶようにして存在する円形の石畳へ、その中央に鎮座する【ウェネーウム】へと視線を落とした。


一歩後ろにはクロエ達が武器を構えて立っている。

その顔からは程よい緊張感が伝わってくる。俺も両手に柄を握り、鞘から抜き放つと【ウェネーウム】の姿を見据えた。


作戦も練った。

対策も立てた。

仲間も集めた。


万全の体制、まさにそう表すのに相応しいはずなのに。

どうしても胸騒ぎが止まない。心臓の鼓動がうるさいくらいに体に響く。

いつの間にかこちらを向いていた【ウェネーウム】は、妖美な笑みを浮かべこちらを見つめている。


「……ッ」


思わず俺が息を飲むと同時に、【ウェネーウム】は戦闘態勢へと移行し、先端に毒を滴らせた針をこちらへ向ける。

青く光る月明かりに照らされ、その毒針がギラリと怪しく輝いて見える。


後ろへと視線を向けると、準備完了と言った風に全員が頷き返すのを確認すると、最後に息を大きく吐き、呼吸を整えた。


「……ふぅ……行くぞッ!!」


先陣を切る形で俺が滝壺の中へと跳び込み、後を追って、クロエ達が追随する。


ここからが本当の闘いだ……


「さあッ!ビートを刻もうか!!」


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