表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Utopia Endless Online~音ゲーマニアがいくVRMMORPG  作者: 赤井レッド
踊れ!砂塵と唆毒の狂騒曲
37/138

音ゲーマニアがイベント本選に出場するようですよ


まだ日も昇らぬ朝方、物音一つしない静寂に包まれた空間で目を覚ました。ベッドに寝転がったままウェアラブル端末の電源を入れると、目の前に複数のAR(拡張現実)ディスプレイが展開され、中心に大きく表示された時刻表示を確認する。

現在時刻は午前五時二分。天気は快晴で平均気温も比較的高く、過ごしやすい一日となりそうだ。だがそれは俺には全くといっていいほど関係のない事だった。


今日と明日はUEOで公式イベントの本選が行われるからだ。不本意ながら本選出場が決まった俺は今日と明日はほぼ丸一日UEOにログインしていることになるだろう。


掛け布団をどかし、起き上がろうとすると、ぐぅぅと腹が鳴った。飯をよこせと要求していることがすぐに分かった。

まだ心地よい夢の世界の中にいる家族たちを起こさないようにと物音一つ立てないよう慎重に階段を降りるとリビングへ向かった。冷蔵庫を開け、行儀が悪いと分かりつつもニリットルペットボトルのミネラルウォーターを口をつけずに胃袋の中へと流し込むと、朝特有の口内の気怠さが洗い流されたような気分になった。


ミネラルウォーターを冷蔵庫の中にしまうのと同時に牛乳を取り出すと適量のシリアルを入れておいた容器の中に注ぐ。これでお手軽朝食の完成だ。

流し込むようにそれらを食べると、食器を洗い、母さん宛てに朝食はもう食べたのでいりませんと書置きを残して自身の部屋に戻った。


さて、朝食も食べ終えたのはいいが、これから暇になってしまった。公式イベントの本選が開始されるのは午前十時よりなので五時間近く時間が空いている。悩んだ末に俺は久しぶりにBSDをプレイすることに決めた。


VRヘッドセットを装着すると、リズム溢れる異世界へと没入していった。



ログインすると、早朝ということもありロビー内には本当にプレイヤーが居ないという状況だった。プレイヤーの人口の多い夜とは違いこの時間からプレイしている音ゲ―プレイヤーは少ないだろう。

そう考えていたのだが俺の数少ないフレンドの内の一人がどうやらリアルタイムで遊んでいるようだった。俺がフレンド欄に目を通している最中、相手も俺がログインしていることに気が付いたのか、メールが送られてきた。


ブギー:ハローGENZI。久しぶりに一緒にビートを刻まない?

GENZI:OK、大丈夫だよ。

ブギー:それじゃあそこで待ってて、今からサーバージャンプしてそっち向かうから。


短いメールのやり取りはそれで終わり、次の瞬間には目の前に長身の男が現れていた。金色の髪に彫りの深い顔立ち、それからも分かるかもしれない―ただ作り込んだキャラメイクかもしれない―がブギーは日本人ではなく、アメリカ出身アメリカ在住の純アメリカ人だ。

英語の苦手な俺だが、BSDの翻訳機能のおかげでこうして会話が出来ている。ちなみに彼とはBSD以前の別の音ゲーで知り合い、以来こうして交友関係の続いているフレンドだ。


「ハローGENZI。遅れたけどAPコンプリートおめでとう」


「ありがとう」


そう言うと俺達は抱き合った。ブギーの国の方ではわりとよくあることらしく、長い付き合いなので最初は抵抗が少しあったものの今では慣れてしまった。

数秒間そのままだったが、ブギーが背中からそっと手を離すと口を開いた。


「それはそうと最近全然ログインしてなかったけどAPコンプして飽きたの?」


「いや、そうじゃないんだ。妹が勧めてくれたUtopiaEndlessOnlineっていうゲームにハマっちゃってさ」


「あ~!知ってる知ってる。友達がプレイしてたよ」


その言葉を聞いて俺は少し驚いた。


「UEOってアメリカの方でも人気あるの?」


「アメリカっていうか、世界的に大ヒットしてるみたいだよ?その五感の再現度とかグラフィックとかどれもが最高峰だーって。確か日本で売上本数が五百万本、世界で見れば三千万本くらい売れてた気がする」


「え!?マジか。UEOすげーな…」


「昔はアメリカとか中国のゲーム会社がトップって感じだったけどVR技術の発展と共にゲームといえば日本っていう感じになってきて今では日本の一強だからね」


「確かにな……てかブギーは俺とデュオしに来たんじゃなかったっけ?」


俺の言葉を聞きハッと我に返ったかのようにすると、俺の腕を掴み引きずられて行かれた。ここで難易度の高い様々な楽曲を楽しみながらプレイして対戦相手のシミュレーションでもするか。


そう心の中で決めると、心ゆくまで音ゲーを楽しんだ。



「遅い……」


現在時刻は午前九時五十四分。イベント本選に出場する選手はただ一人を除いて全員が受付を完了しており、残すはその一人を待つだけとなっていた。イベントの受付は五十五分までなので丁度今残り一分を切ったところだった。


俺も先程からメールで急いでくるように伝えているのだが返信はおろか既読すらつかない。運営の方も問い合わせているようだが一切反応が無く、やむなしということで本選の開会式が始まろうとした時、砂埃をあげながら猛スピードでこちらへ向けて走ってくる人影があった。


「すいません!遅れました!」


運営の人も本選の出場者が全員揃ったことで安心したのかほっと一息つきながら名簿に最後のチェックを済ませた。それを確認すると、別の女性スタッフがマイクを持ち、コロシアムの中へと姿を現し、開会式を始めた。


「大変長らくお待たせいたしました!これより日本サーバー、ワールドフェニックスにおける公式イベント本選を開始いたします!」


「「「「ウォォォォ!!」」」」


アナウンスの声と共に観客席から怒号の如く完成が鳴り響く。熱気に包まれた会場から目を離し、控え室の中で俺はGENZIのことを問い詰めていた。


「GENZIくぅ~ん?君、何やってたのかなぁ!?」


「いやぁ…朝思いのほか早起きしちゃったからBSDやってたらちょっと時間を忘れてて……」


「………」


「てへっ♪」


気が付くと無言で俺の鉄拳がGENZIの脳天を捉えていた。頭を押さえて痛がるGENZIの姿を横目に自業自得だと考えながら開会式のアナウンスを聞いていると、どうやらもう開会式は終わりのようだ。


「第一試合は十時十五分からの開始ですので、それまでの間に本選に出場する皆様は準備を整えてお待ちください!」


それを聞くと未だに頭を抱えているGENZIをスルーして近くのベンチ腰かけるとステータスの確認を始めた。


Player:麒麟

Gender:男

Tribe:人族(ヒューマン)

Job:介錯士

Clan:無所属

LV:70

HP:100

MP:200

STR:200

DEX:300

VIT:70

AGI:300

INT:80

MND:50

LUC:50



Weapon:Left:“二極対銃”『ライフ』 Right:“二極対銃”『デス』

Sub Weapon:『零式・改』+10 MAX『ロージュエリオットver1.2』+10 MAX

Helmet:灰鳥のトリコーン+10 MAX

Armor:死神のコート+2

Gauntlets:死神の手袋+2

Leggings:死神のズボン+2

Greaves:死神のブーツ+2

Accessories:装備なし:装備なし:装備なし:装備なし:装備なし


Skill

Active

Attack:『ダブルファイア』『クイックリロード』『チャージング』『オーバーチャージ』『バレットダンス』『ユッドバレット』『クフバレット』『ザ・キャノン』『クレイジーバレット』『魂の解放』

Defense:『アクロステップ』『二重回避』『霧隠れ』

Magic:『バレットチェンジ』(フレイムバレットⅡ・アイスバレットⅡ・ウインドバレットⅡ・セイクリッドバレットⅡ・ダークネスバレットⅡ)『コンプレスバレット』『エクスペンションバレット』『インラージメントバレット』『黒炎』

Buff・Debuff:『ダブルアクセル』『クイックリー』『技神のまじない』『クリティカルフォーカス『パワーリジェネ』


Passive:『銃の心得』『見切り』『鷹の目』『弱点特攻』『命の泉』


Degree:『墓守』『征狐者』『必中』『黒剱』『狂殺』


ナインテール戦でのLV1までのデメリットはかなり痛かったが、GENZIに貸してもらった経験値獲得量増加の効果を持つアクセサリーと自力で集めた経験値獲得量を上昇させる装備に消費アイテム。そして効率の良い狩場を延々と狩り続けたことによってっこまでLVを戻すことに成功した。

さらに二体の名持ち(ネームド)を倒したことによって、MVP報酬とやらでスキルの書を二つ獲得し、使ってみた所強力なスキルを二つも手に入れることが出来た。


ステータス画面を見る目を僅かに上にずらし、視線をGENZIへと向けると、あちらはあちらでステータス画面を見ながら何か確認しているようだった。



Player:GENZI

Gender:男

Tribe:龍人(ドラゴニュート)

Job:羅刹

Clan:無所属

LV:89

HP:5

MP:50

STR:600

DEX:550

VIT:5

AGI:405

INT:30

MND:5

LUC:100


Weapon:Left:“獄刀”『不知火』 Right:“血刀”『狂い桜』

Sub Weapon:“撃迅装具”『鬼穿・改』

Helmet:結晶蝶の仮面+10 MAX

Armor:黒虎の軽鎧+2

Gauntlets:黒虎の籠手+2

Leggings:黒虎の腰当て+2

Greaves:黒虎の脛当て+2

Accessories:魔王の護符:瞬装の腕輪:装備なし:装備なし:装備なし


Skill

Active

Attack:『一断』『二月』『三慧』『四光』『修羅の解斬』『撃竜巻』『独楽連斬』『ソードダンス・序曲』『羅刹の救撃』『神判の裁き』『疾風』

Defense:『瞬身』『二艘跳び』『舞踏』

Magic:『印』

Buff・Debuff:『ビーストロア』『風神の加護』『龍闘気』『マキシマムストレングス』


Passive:『修羅の呪い』『羅刹の契り』『龍の血脈』『思考加速』『逆境の闘志』

Degree:『剣翁の好敵手』『龍人の好敵手』『雑魚狩り』『強敵狩り』『導き手』『征狐者』『黒剱』『狂殺』


まあ大分強くなったとは思うがそれでもまだ足りない気がしてならない。ぴりぴりとした緊張を肌で感じるたびに柄にもなく心配になってくる。


「それでは!第一試合を開始したいと思います!」


ついに本選の火蓋が斬って落とされた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ